わたしはロランス(かなりネタばれなのでご注意ください) | Let's talk about...

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あくまでも個人的な映画論です。ネタバレにご注意ください。



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2012年、グザヴィエ・ドラン監督


まずこのグザヴィエ・ドラン監督が若干24歳、というのが驚きだ。
この作品は、監督の若さをまったく感じさせない芯の強い作品だからだ。彼のほかの作品も見てみたいと思う。


個人的にこのようなテーマ(性同一性障害、同性愛、女装など)を描いた映画や小説などが好きなのだが、この作品では、女装をして女性になりたいのだが恋愛対象になるのは女性、という複雑な性癖を持つロランスが主人公である。

80年代後半、カナダのモントリオール。ロランスは作家志望の国語教師で、恋人のフレッドと何不自由のない生活を送っている。
ロランスの女性になりたい、というカミング・アウトをきっかけにした彼らのリレーションシップの紆余曲折を10年のタイム・スケールで壮大に描いている。えてしていつも冬が舞台になっているのが物悲しくていい。彼らが旅に出かけるケベック州の小島”アイル・オブ・ブラック”(イル・オ・ノワール)も極寒の土地だ。

ロレンスを演じるのは、フランスの美男俳優、メルヴィル・プポー。もともと端正な顔立ちで、美少年のイメージが強かったが、この作品では一皮むけた大人の俳優としての魅力を放っている。
ロランスの情熱的な恋人を演じるのは、カナダ人女優、スザンヌ・クレマン。
彼女がいい。彼女の見た目や顔つきからして、気が強そうな女性を演じているのだな、と思ったが、気が強いだけではなく、献身的にロランスを支えようとしつつもくじけてしまう彼女の姿がとてもいじらしかった。

この映画では、ロランスが女性になりたいので女装をする、というテーマだけは語れない男女間、(いや、男女問わず同性愛同士でも)の隙間みたいなものがよく描かれていた気がする。
どんなに愛し合っている二人でも、お互いに理解できない溝は存在しているのだ、ということがよく描かれているな、と思う。
ロランスとフレッドは、互いに対して正直にいきることを決意する。当初はロランスの女性になりたい願望を受け入れて、カツラまで買い与えるフレッドだったが、やはりロランスを支えることが耐え切れず、別離を選ぶ。
その後、二人は別々のパートナーを見つけ、フレッドは大豪邸に住むマダムになり母親にもなる。

が、お互いを忘れられない二人は、ロランスのフレッドへのストーカー行為と見まがうようなことを経て、再会する。自分の性癖を理解してくれる、やさしい恋人が見つかったのにもかかわらず、ロランスは、フレッドの豪邸を見つけ、同じ町に移り住み、彼の処女作となった詩集でも、彼女のことを匂わせるような詩を書いている。そして、彼女にその詩集を送りつけ・・。

ロランスは同棲中の恋人を忘れ、フレッドは大事な我が子の存在すらも飛び越えて、二人は駆け落ちし、二人にとってずっと憧れの地だったブラック島へ向かうのだが、ここでも、些細なことをきっかけに大きな口論になってしまうのだ。

どんなに愛し合っていても、愛すること、だけでは埋めることの出来ない何か、が出来てしまった二人。
それを妥協するによって、関係を続けていくことは可能だと思う、だが、彼らは妥協などしない。せっかく再会したのに、ロランスは一人でブラック島をあとにする、まだ眠っているフレッドを置いて・・。

数年後、彼らは再びバーで再会する。
そこでもすぐ口論になってしまうのだ。そして、化粧室に立つふりをして、裏口からこっそり抜け出してしまう、フレッド。外は秋の気配が漂い落ち葉が舞っている。彼女の髪も風に舞う。彼女の顔は今までになく晴れ晴れとしているように見える、まるで、本当にこれでいいのよ、私たち。もう迷うことはないわ、とでも言っているかのようだった。

この映画を見たあと、夜なかなか眠れなかった。
互いに正直に生きる彼らの姿に感動した、というのもあるが、彼らの口論の仕方などがリアリティがありすぎて、なかなか身につまされる部分もあったり・・・。



これを監督したのが24歳の青年・・・。やはりショックである。






映像も美しい。
美しいシーンが沢山あります。





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