パリ、テキサス | Let's talk about...

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あくまでも個人的な映画論です。ネタバレにご注意ください。



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こちらはイギリス版、DVDのパッケージ写真


1984年 ヴィム・ヴェンダース監督 ドイツ・フランス合作



ショッキング・ピンクのモヘアのミニワンピースを着た、ため息が出るほど美しいナスターシャ・キンスキー、彼女がバーでゆっくりと振り返るシーンは、映画史に残るフォトジェニックな一瞬だと思う。


2時間15分、まったく退屈しなかった。それどころかこの映画のゆったりとしたテンポがが今の自分にぴったりだったと思う。

ハリー・ディーン・スタントン演じるトラヴィスがテキサスを放浪中に行き倒れになり、彼の弟がロスアンジェルスから迎えに来ることから、この物悲しいが、どこか心が温まるストーリーが幕を開ける。

ロード・ムービーの金字塔という宣伝文句が掲げられているか、私はこれをロード・ムービーだとは思わない。ロード・ムービーはイージー・ライダーとかテルマ&ルイーズとか、あまり目的もなく旅しているとか逃走中などの間のエピソードを描く映画だと私は勝手に思っているので、明確な目的地に向かって旅をするこの作品はロード・ムービーとは言わないのだと思っている。

スタントンとキンスキーの子供役を演じる子役、ハンター・カーソン(彼はこの映画でもハンターという役名)はなんと、カレン・ブラックの実子だったのだ。ブラックは、この作品の脚本家のLM・キット・カーソンの妻で、そういった経由でこのハンター少年が起用されたのだろうと思う。

そういわれてみると、涼しげな目元がすごく、カレン・ブラックに似ているかもしれない。カレン・ブラックは70年代版の華麗なるギャツビーでデイジーの夫、トム・ブキャナンの愛人、マートルを熱演した70年代の美人女優だ。ほかにも、エアポート(大空港)シリーズの2作目、エアポート’75で、ヒロインを演じた。私はこの作品がとても好きなので、カレン・ブラックがとても印象に残っていた。彼女は最近亡くなられてしまったようで、冥福を祈りたい。

こちらは華麗なるギャツビーのカレン・ブラック


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ハンター少年は、映画の中では7歳(1月で8歳になるという設定)。
うちの娘と同い年なので、余計にこの映画に共感できるものがあったように思う。ハンター少年の一挙手一投足が娘と重なって仕方がなかった。突然現れた本当の父親(トラヴィス)へのとまどいもあるのだろうが、トラヴィスが学校へ迎えに行くから歩いて帰って来ようと提案すると、いやだ!だって誰も歩いて帰る子なんていないし、とわがままというシーンは、うちの娘もこういうわがままを同じ態度で言ったりするので、あ~!!あるある!!と膝を叩いてしまった。

だが、子供は冒険が好きだ。育ての親がどんなに心配しても、本当のお母さんを探しに行くぞ、となったら、育ての親に言付けもせず、旅立ってしまうのだ。うちの娘も、後先考えずに自分の楽しみが優先的なところがあるので、どこの子供も同じだな・・と思ってしまった。しかし、多かれすくなかれそうでなければ、親離れはできないのだ。冒険心と好奇心がない子のほうが稀だろう。

だがしかし、トラヴィスと母親のジェーン(キンスキー)が無常にも失踪して以来4年間も、ハンター少年を我が子のようにかわいがって育ててきた叔父夫妻の気持ちもわかるのだ。特に、フランス人の叔母はハンター少年を我が子にも勝るかわいがりようで、ハンター少年がトラヴィスと旅に出てしまってからの悲しみようはひどかった。
だが冷静に考えてみれば、実の母の元に戻ったハンター少年とこの叔父夫婦の絆は消えることがないだろうと、確信している。私の勝手な予想だが、もし母と新しい生活を始めても、きっと定期的に彼らは会い続けるだろう、そこにトラヴィスがいるかは別として・・・。


最後に、なぜトラヴィスが去るのは楽観主義の私はよくわからない・・が、また同じことの繰り返しにならないためにも・・ということなのか。トラヴィスはジェーンを愛しすぎていて一緒に暮らすことなどもうできないのだろう。



キンスキーの奇跡的な美しさ、とハンター少年の存在感。切なく狂おしい愛に生き続ける男を熱演したスタントン。
この映画はこれからもずっと映画史に残る名作として存在し続けるだろう。




キンスキーの美しさ・・トラヴィスではなくとも、こんなに美しい人と恋に落ちたら、束縛してしまう気持ちもわかるかもしれない・・・。

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ハンター少年

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トラヴィスとハンター少年
フランス人の叔母が、いつもお弁当に入れてくれるというフランスのキリとか言うチーズを食べている。

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