昼顔のドヌーブ | Let's talk about...

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あくまでも個人的な映画論です。ネタバレにご注意ください。



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1966年、ルイス・ブニュエル監督

昼顔のドヌーブはいい。


無表情でときに能面を思わせるクールで美しい顔。 スタイルも一見、抜群なようでいて、上半身裸の背中から腰にかけて意外と丸い感じなのも退廃的だと思う。(ドヌーブは胸も、あまり大きくはないというのは、トリュフォーの、暗くなるまでこの恋を、で知った。トリュフォー自身はドヌーブをこの映画で、悪女にに仕立てたのは間違っていた、と後年語っているが、私は、若い頃のドヌーブは、どこまでも冷たい女であって欲しいと思うので、この役は適役だったと思う。)


この映画でのドヌーブはあまり演技をしている感がない、ただ美しい無垢な花が咲いているかのような感じ。どんなに翻弄されても、いたぶられても無表情のまま。時に感情的になるシーンがあっても、真の悲しみや怒りは彼女の表情からはまるで伝わってこない。そこには、ひたすら冷たく美しい姿をした虚無があるだけ・・・。




彼女が着こなす、イブ・サンローランの衣装も素敵だ。 まさに60年代パリのブルジョワ・マダムスタイル。(映画ファッション話は、別ブログのThe Vintage Purple でよくしています。)ドヌーブは若い新妻の設定だが、これらの衣装は新妻ではなくとも、割と中年のマダムでも着こなせる服装だと思う。(中盤にでてくる、黒のエナメルのコートや、最後の白い襟付きの黒いミニワンピースを除く。)冒頭の赤いジャケットとワンピースのセットも素敵だ。(すぐにボロボロに剥がされてしまうけど。)




冒頭とラストの馬車の音、シャン、シャン、シャンという鈴の音のような音、この音は、昼顔を見てからというもの、私にとっては、とてもエロティックな音になっている。
何せこの映画を初めてみたのは、まだ性の何たるかも、まるでよくわかっていなかった15,6のときだったので、例のドヌーブが陵辱される冒頭のシーンを見ても、衝撃すぎてよくわからなかったが、(あれを、15,6歳でわかっても怖い)彼女は悪いことをしたのかな?それへのお仕置き?などと、思うようにした、ように思う。
そして、トラウマになってしまった、この馬車の音・・・。最近になって再見して気づいたのだが、この映画にはバックグラウンドの音楽がない。この時代の映画につきものの、甘く流麗なテーマ曲というものがなく、例の冒頭とラストのシャン、シャン、シャン、シャンという音のみなのだ。


近年でも、ドヌーブは停滞期というものがなく、隙のない俳優活動をしているが、ちょっと親しみやすくなりすぎた、ような気がしてして寂しい。
体型もオバサン体型になってきて、見た目も親しみやすい感じがしてきたからかもしれないが、ドヌーブには、永遠にこの昼顔のような冷たい女であってほしかった気もする。(まぁ、今のドヌーブも嫌いではないのだけど)




どこまでも冷たく無表情な、昼顔のドヌーブをお楽しみください。


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