こんにちは!しあわせなみだです。
7月17日に開催した主催イベント『「抵抗しなかった君が悪い」と
言えますか』 が、ウェブマガジン「wezzy(ウェジー)」に掲載
されました!各登壇者のコメントも、詳細までご紹介いただき
ました。ぜひご覧下さい!
↓記事はこちらです
http://wezz-y.com/archives/49430
それでは今週の「Tear's Letter」をお届けします!
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┃【Tear's Letter No.338 Topics】
┃★1.性差別表現とフェミニスト~関めぐみのSmile Tear~
┃★2.編集後記
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★1.性差別表現とフェミニスト~関めぐみのSmile Tear~
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こんにちは。関めぐみです。
今回は「性差別表現とフェミニスト」について考えてみたいと
思います。
最近、よくCMや動画の性差別表現が問題になっています。
直近では、サントリービールCM、宮城県観光PR動画、少し前では、鹿児島県志布志市「うな子」動画、ルミネCM、AGFのBlendy
「卒牛式」CMなど、どれも私にとっては見るとしんどくなるもの
ばかりです。
しかし、この「しんどい」と思う気持ちをインターネット上で表現
することは、「炎上」に巻き込まれる可能性が高く、リスクのある
行為となっています。特に、これら性差別的な表現を批判する人は「フェミニスト(女性解放論者/男女同権論者)」とカテゴライズ
され、「女叩き」の対象となります。
なぜ「しんどい」と表現することで叩かれるのでしょうか。
それは、フェミニストが「キルジョイ(killjoy)」であるからだと
考えられます。キルジョイとは、「kill(殺す)」と「joy(喜び)」を
合わせた言葉で、「喜びを殺す」、つまり、他の人が楽しんでいる場を、しらけさせたり、空気を読まない人のことをいいます。
黒人フェミニスト学者であるサラ・アーメッド氏は、「フェミニスト
キルジョイズ」という論文のなかで、「フェミニストは、性差別の
瞬間を指摘することで他の人たちの喜びを殺してしまうの
だろうか?」と問うています。
しかし、アーメッド氏は、「どのように感じるのかと、どのように
感じるべきかとの差を常に失くせるわけではない」とし、この差
こそが可能性を秘めているといいます。
つまり、「楽しんでいる他の人」とは、「どのように感じるべきか」
を決定し、空間を支配する権力を持つ、もしくはそれに同調
できるマジョリティであり、「どのように感じるか」という
マイノリティの気持ちを抑圧していると捉えなおしたうえで、
その支配─被支配関係を問い直すチャンスとなるということです。
「楽しむべき」なのに「楽しめていない」とき、「楽しめていない」
感情を消し去ることは、その「楽しめていない」状況や空間を維持
させることになります。
楽しいはずの時間や場面を潰し、周りの人をがっかりさせることは
「適切ではない」ので、自分の気持ちは間違いで、表現するべきで
ないし、笑顔でいよう…
小さなこと、何でもないこと、自分さえ気にしなければいいこと…
として受け流すこともできます。そうしている人も現実に多いと
思います。
しかし、アーメッド氏は、「強情/わがまま(willfulness)」で
あることを肯定的に捉えています。なぜなら、人種差別主義、
性差別主義、異性愛主義等の問題性を指摘する人は、
差別的な現実を受け流すことができない
「強情/わがまま」な人であると位置づけているからです。
フェミニストたちは、
「
個人的なことは政治的なこと(The personal is political)」
というスローガンのもと、個人として感じた怒りや悲しみ、しんどさは、その人だけの問題ではなく、社会やそれを維持している制度の問題であることを指摘してきました。
笑い話で終わらせるのではなく、悲しい話や同情だけで終わらせるのではなく、その傷ついた人の気持ちを尊重してくれること。
ちゃんと声に出していいと励ましてくれること。
「それはおかしい」
と一緒に怒ってくれ、さらに行動してくれること。
個人の受け取り方の問題ではなく、組織の問題、社会の問題としてくれること。
私にとっては、それがフェミニストたちだと思っています。
フェミニストであることに性別、人種、年齢などは関係ありません。
また、アーメッド氏は「フェミニストは喜びが少ないから他の人の
喜びを殺すのか?」という誤解に対して、
「フェミニストになることは
楽しめないことがいかに多いかに気付く
ことを意味する
かもしれない」
と返している。
「楽しんでいるフリ」をすることをやめること。
受け流すのでは
なく、1つ1つの問題に向き合い、問い直すこと。
空気を読んで、声をあげなかったとき、誰が利益を得て、誰が傷つき、不利益を被るのかを考えること。
そのうえで行動することによって、
社会によって作られた固定観念、偏見、差別を変えることができるのではないでしょうか。
先日、ミシェル・オバマ氏がファーストレディーであった時の、
自身の人種差別経験について、
「中傷に傷ついていない振りはしなかった。
それは中傷を見て見ぬ振りをすることになるから」
と語る場面がありました。
これは、生身の人間が傷ついていることを示す、重要な抵抗の手段です。
私もフェミニストキルジョイのひとりとして、性暴力につながるような性差別表現に対して、できることから行動に移していきたい
と思っています。
<参考>
・Sara Ahmed, Feminist Killjoys (And Other Willful Subjects),
Polyphonic Feminisms: Acting in Concert, Issue 8.3: Summer
2010(http://sfonline.barnard.edu/polyphonic/print_ahmed.htm)
・Rebecca Shapiro, HuffPost US, 2017年07月27日,
「『中傷に傷つかないふりはしなかった。なぜなら...』
ミシェル・オバマ、ファーストレディー時代を語る」
(https://goo.gl/LGx9Nb)
★2.編集後記
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抗がん剤治療などで脱毛状態になってしまった方に、切った髪を
ウィッグにしてプレゼントする「ヘアドネーション」という仕組み
があります。髪の毛があることがマジョリティの価値観となって
いる日本では、脱毛の精神的苦痛は非常に大きく、ウィッグは
治療後の回復の支えにもなっています。
しあわせなみだでも、性暴力等に遭い施設で暮らす方を、
ヘアサロンのカットモデルとして紹介したり、施設に
スタイリストを派遣する事業を行っています。カットをきっかけに、
他者とのコミュニケーションが円滑になったり、外出が増える方も
います。
美容は「趣味」「若作り」「男のため」等と、冷ややかな目で
見られることもあります。しかし実際には、「自分との対峙」
「自己イメージの向上」「自らの手によるメンテナンス」等、
見た目でだけでなく、中身も輝かせることができる、優れた手法です。
美容の持つ力が、もっと多くの人に知られてほしいな、と思います。
☆最後までお読みいただきありがとうございました。
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