あの日に帰りたい
サイパン時間の夜の7時半。
ひと仕事終えた自分たちは、燃え尽きたかのように砂浜に座り込んだ。
ここには、日本で世の中が騒いでいるいろんな問題なんて何も無い。
こんなに素晴らしいサンセットを清々しい気分で拝めているのは、ただ都会の喧騒から離れたからだけじゃない、今回、かなり手ごたえを感じたから。
手ごたえとは、ケルビンを引っ張り出す出さないという自分レベルの話だけでなく、強い信念さえあれば絶対に大会を大成功させ、海外の病気の子供たちやケルビンの養母さんを救うことができるんだという思いのこと。
こうして振り返ると、広い意味でそう思えたのは自分だけじゃないんじゃないかな?
やっぱり人間て、本質的には、理屈だけじゃなく、熱い思いや感性で心って動くのではないだろうか?
自分の取る行動は、いつも、世の中から見ると泥臭くてアナログだ。
だけど、そうであるからこそ、人間の本質的な部分で生きているケルビンには、それがすごく伝わるのではないだろうか。
対戦のオファーなんて、おそらくファックスかメールでしか来たことがないであろう。
直接、対戦を希望する本人が、突然自分の目の前に現れて。。。なんてこと今まで間違ってもなかっただろう。
ファイトマネーをサイパンの児童養護施設に寄付する活動をケルビンがデビュー当時からずっと続けてきて、なおかつワクチンファイトにも最大限持っている力を貸すからと立ち上がってくれたケルビンを自分が粋に感じたように、ケルビンも自分の行動や発言のひとつひとつを粋に感じてくれたのかもしれないな。。。
ケルビンは、別れ際に、9月のワクチンファイトに現在所有している2本のチャンピオンベルトを持っていくから、と言っていた。
日本を、そして日本のファンを、すごくリスペクトしているんだ。
憎めないヤツなんだよなあ。。。。。。かなり憎らしいけど。。
巨大化していたケルビンの135キロというスーパーヘビー級の身体、実際組み合ってみるとスゴイ重圧だった。寝技では、自分の身体がミシミシ言った。
そして、打撃では、自分の顔面くらいある大きな拳でメガトン級の爆弾を連発で打ち込まれ、前のめりに倒れるほどの壮絶なKO。
虹というのは雨が降った後に、太陽が出てきて照らすことでできると言われている。
前哨戦でのそういった自分のブザマな結果は、言ってみればドシャブリの雨が降ってる状態。
しかし、またこれから自分が頑張って、試合当日、太陽のようにリングを輝かせることができれば、雨に太陽で、虹がかかるんじゃないかな?
大会当日は、みんなで一緒に、大きな虹をかけましょう!
今度は“本物の”虹を。
それにしても素晴らしい夕焼けだ。
日本で、今月半ば頃のある日の夕方、幻想的な夕焼けというか昔を思い出すような夕方の空の色になった不思議な日があって、高山善廣さんも子供の頃に帰ったようだと表現(http://ameblo.jp/takayama-do/entry-11305236329.html
)されておられたが、夕日っていろんな思いを抱かせたり、思い起こさせたりする、不思議な力があるのかもしれないな。
いろいろな決意をしたサイパンの夕日だった。
早くまた、あの日に帰りたい。。
ケルビンとリングで相対峙し、身体と身体、心と心を精一杯ぶつけ合った、
あの日に。
ああ。。男は、走り続ける。。
人生という名のレールを。。。
( サイパン出撃シリーズ 終 )





