
Bloodfist
製作:1989年
▼というわけで今月は国内未公開・未ソフト化の格闘映画特集なのですが、一番手はいきなりドン・ザ・ドラゴン・ウィルソンです(爆)。ドンの主演作といえば本物の格闘技チャンピオンをたくさん起用している反面、アクションは非常にユルいことで知られています。
しかし本作は彼の初主演作であり、その後の作品とは一味違った内容となっていました。用意されている格闘チャンピオンが、それぞれ印象が被らないようなキャラクターになっていること。そして格闘シーンの出来がその後の作品と比べて良い(!)ことなど、初主演作だけあって気合の入った作品に仕上がっているのです。
このへんはドンを売り出そうとするロジャー・コーマンの思惑が見えますが、監督がゴキブリ映画『ザ・ネスト』のテレンス・H・ウィンクレスなのは何故?(笑
■物語は元キックボクサーのドンが兄の死を知るところから始まる。遺体が発見されたマニラに飛んだドンは、遺骨となった兄と悲しみの再会を果たすが、肝心の犯人はまだ逮捕されていないという。手がかりは現場に残された真赤な胴着のみ…ドンは単独で犯人探しを始め、ある格闘大会でその胴着が使われていることを突き止めた。
しかし部外者が立ち入るのは難しく、彼個人ではどうにもならないようだ。そこで武術の達人ジョー・マリ・アヴェラナの協力を受け、出場するための特訓を決行。かくして兄を殺した犯人を突き止めるため、リング上を舞台に死闘が始まるのだが、事の黒幕は意外な所に潜んでいた…!
▲本作を見て気付いたのは、話が『ストリートファイター2050』に酷似しているという点です。
主人公が異郷の地で兄の死を知ってトーナメントに出る・主人公の友人となったファイターが最強の敵の噛ませ犬となって死ぬ・ヒロインがストリッパー(踊り子)・そして最後のどんでん返しに至るまで、基本となる設定から粗筋までがほぼそのままになっています。どちらの作品にもアヴェラナが出ているところを見ると、もしかしたら『ストリートファイター2050』は本作のリメイクだったのかもしれません。
話の発端が兄がらみの話になっているあたりは『キックボクサー』『キング・オブ・キックボクサー』を意識しているようで微笑ましく、作品そのものも意外と悪くありません。そして先述した通り、格闘アクションにおいても及第点以上のバトルが繰り広げられ、ドン作品らしいモタつきはほとんど感じられませんでした。
中でもトーナメントでの勝負は白眉で、3人の強豪とドンが熱い戦いを展開しています。まず最初の相手はキックの帝王と呼ばれたキックボクシング世界王者ロブ・カーマン!彼はヴァンダム映画に出演した経歴を持ち、本作ではドンとリアルなキック合戦を見せてくれます。そして2回戦があっさり終り、3回戦の相手としてあのビリー・ブランクスが登場するのですが、動きがキレキレすぎてドンが思いっきり食われています(苦笑
そして最後の相手は友人を殺した極悪ファイターのクリス・アグラー(南アジアのキックボクシングチャンピオン)…なんですが、このときドンは薬を仕込まれて意識が朦朧としているため、あまりいい勝負になっていません。最終的にドンが猛烈なキック連発で勝つのですが、ここまで好勝負が続いていただけに、そしてクリスが太い体格のわりに動けていただけに、ガチンコで闘うファイトにならなかったのは勿体ない気がしました。
全体的にこれといって目立った点は無いものの、初主演作としては手堅くまとまっている佳作。さらにドンは本作と同じ役柄で続編にも出ることになるのですが、この詳細は次回にて!

「THE SPIRIT 怒りの正拳」
原題:無敵小子霍元甲
英題:Insuperable Kid
製作:2005年
●舞台は清朝末期の中国。腐敗した国家を倒すため、太平天国の生き残りによって革命の軍資金が運ばれようとしていた。政府はこれを押収しようと企むが、突如現れた謎の刺客が先んじて行動を起こし、輸送していた[金票]局(ボディガードを兼ねた宅配集団)を皆殺しにしてしまう。襲撃の中で唯一生き残った少年・霍元甲は、[金票]局のリーダーだった父の仇討ち&奪われた軍資金を取り戻すべく、たった1人で出奔するのだった。
悪らつな日本人の集団と敵対しながらも、霍元甲は太平天国の残党たちと合流。父殺しの犯人が日本人であることを知った一行は、まず最初に襲撃を指揮した裏切り者を政府の役人に排除させ、続いて軍資金の奪還に着手しようと試みた。しかし相手は二重三重の策を用意しており、巧妙な罠によって仲間たちが囚われの身に……日本人たちは政府の役人と結託し、事態は悪化の一途を辿っていく。果たして霍元甲は、全ての困難に打ち勝つことが出来るのか!?
タイトルを見れば一目瞭然ですが、本作は李連杰(リー・リンチェイ)最後の古装片である『SPIRIT』に便乗した作品で、霍元甲の少年時代にスポットを当てた内容となっています。とはいえ、ストーリーそのものはオーソドックスな仇討ちモノの流れで、功夫シーンが出てくる割合もそれほど多くないです。
監督は作中で姑息な役人を演じた午馬(ウー・マ)と、裏切り者に扮した徐小健の2人が担当しています。午馬は香港映画の巨匠・張徹の補佐をしていた事で有名ですが、実は徐小健もショウブラザーズ離脱後の張徹に俳優として育てられたという、れっきとした張徹組の1人。『カンフーハッスル』の董志華とは同期で、晩年の張徹作品を盛り上げた最後のスターなのです(本作ではチラッとアクションも披露)。功夫映画ファンなら「張徹門下の両名が監督!」ということで期待が膨らみますが、先述したようにボチボチの出来止まりとなっていました。
功夫アクションは可も不可も無い雰囲気で、悪くはないけど何かが足りない…という印象を受けました。そのアクションに挑むキャスト陣なのですが、これが便乗作品とは思えないほど充実しています。まず味方サイドの太平天国残党には『大酔侠』の鄭佩佩、霍元甲の仲間である大刀王五は『ワンチャイ/天地黎明』の黄子揚、日本人のボスは元祖少林寺スターこと劉家輝、その配下には惠天賜、午馬の手下として林威まで!う~ん、凄い面子だ(笑
当然、この面々が絡んでくるラストバトルはそれなりに面白いのですが、主演である徐小龍が父の仇にトドメを刺さなかったり(何故かヒロインの彭丹が殺ります)、『詩人の大冒険』を髣髴とさせる鄭佩佩VS劉家輝の結末が描かれなかったりと、随所で描写不足が見られます。アクションの振り付け次第では傑作になれたかもしれず、この点に関しては惜しいと言わざるを得ませんでした。

「ブラックマスク2」
原題:侠II/黒侠II
英題:Black Mask II/Black Mask 2: City of Masks
製作:2002年
▼随分とご無沙汰していた気がしますが、今日は久しぶりに純粋な香港映画の紹介です。本作は『香港国際警察』『スターランナー』でブレイクすることとなる安志杰(アンディ・オン)のデビュー作で、徐克(ツィ・ハーク)が6年振りに監督した『ブラックマスク』の続編になります。ただ、続編といっても共通しているのは主人公の風貌だけで、物語的な繋がりは一切無し。設定も背景も完全に別物という一風変わった作品となっていました。
ちなみに『ブラックマスク』には幾つか派生作品があり、樊少皇(ルイス・ファン)主演の『ブラックマスク/武神黒侠』、釋小龍(シク・シウロン)主演の『黒侠VS賭聖』などが存在しています。前者には鄭佩佩や高飛、後者には行宇や馮克安などが出演しているとのことですが、個人的には意味深なタイトルの『黒侠VS賭聖』が非常に気になります(笑
■遺伝子を改造され、悪の組織から逃げ出したブラックマスクこと安志杰。彼は自分の体を元通りにするため、世界各国の遺伝子学者と接触しようとした…のだが、先回りした組織によって学者たちは次々と抹殺されてしまう。最後に安志杰は美人科学者のテレサ・マリア・ヘレラを頼るのだが、彼女の住む街で大きな異変が起きようとしていた。
この街には世界的なレスリング団体が存在し、選手を特殊な薬で変身させることを売りにしていた。だが、試合中に制御の利かなくなった選手が暴走する事件が発生し、団体の中に不穏な空気が立ち込め始める。安志杰の存在に気付いたレスリング団体は彼を利用しようと画策し、ただでさえ不安定な遺伝子を更に操作してしまった。
最終的に安志杰はテレサと合流し、レスリング団体は悪の組織に主導権を奪われ、安志杰と悪の組織による最終決戦が幕を開けるのだが…。
▲先述の通り、本作では監督・徐克と武術指導・袁和平(ユエン・ウーピン)の『ワンチャイ』コンビが再結成されていますが、完成した作品はかなりヘンテコな代物となっていました。SF要素が非常に中途半端・主人公は終始苦しんでばかり・ワイヤーを多用しすぎて意味不明になってしまったアクション等々、おかしな点を挙げるとキリがありません(結局本作が何を言いたかったかも不透明だし…)。
特にアクションでは地に足を付けて闘う場面が少なく、それに加えてCGと着ぐるみを多用したため、ファイトシーンから生の迫力が完全に欠落しています。ちなみにラスボスは『人質奪還』のスコット・アドキンスが扮していますが、他の出演者同様に彼もまたワイヤーの餌食になっていました。最後の安志杰VSスコット戦も、今思うと豪華な対戦カードだったにも関わらず、飛んだり跳ねたりするだけの戦いで終わってしまったのは実に残念です。
しかし、安志杰はのちにジャッキーと闘ったおかげで生き残り、スコットもアメリカでアイザック・フロレンティーンと出会ったことで格闘スターへの道を切り開きました。本作は確かに不幸な作品でしたが、失敗に怯むことなく前進し続けた2人のアクションスターにとって、大きな意味のある作品であったと思いたいです。
ところで、HKMDBでは劉華や陳小春が出演している事になっていますが、これは広東語版で吹き替えた際のキャスト(つまり声の出演)なのだそうです。

「オーバーヒート・プリズン」
原題:Forced To Fight/Bloodfist III: Forced To Fight
製作:1991年
●前回に引き続いて、今回も先月紹介出来なかった監獄アクション映画の紹介です。次回からは通常通りの更新に戻りますが、5月の特集も現在計画進行中だったりします。詳しい内容は月末の更新履歴で触れるので、今度は中断しないよう頑張りたいと思っています。
さて、ちょっとイマイチな作品レビューが続いてしまいましたが、本日登場するのはドン・ザ・ドラゴン・ウィルソン主演作の中でも力作…かもしれない1本です(作品としては彼の看板シリーズである『Bloodfist』の第3弾という位置付けですが、実際はクランクアップ後にナンバリングされた後付的なタイトルだったとか)。
ストーリーは実に単純明快で、無実の罪で逮捕されたドンが囚人グループのリーダーたちと対立し、同室の模範囚リチャード・ラウンドトゥリーやメガネ君と親しくなるものの、最終的には悪徳署長との闘いに挑む!というお話です。もちろん、ドンの親友となったメガネ君は悪党に殺され、クライマックスでは囚人たちの反乱が起きたりと監獄アクションのお約束はバッチリと押さえられています。
しかし本作はそれだけではなく、各キャラクターの個性や動向をきちんと描写しており、それなりに盛り上がる作りとなっているのです。ややご都合主義的な所もありますが、中盤でリチャードがドンを敵視していたグループを説得し、そのまま和解してしまうという展開などは意外性がありました。
ただ、ラスボスとして立ちはだかるリック・ディーン(白人グループの長)とグレゴリー・マッキーニ(黒人グループのリーダー)がそれほど強くなく、ラストバトルがあまり燃えないものとなっています。ラスボスがザコ同然というのは非常に残念ですが、そのかわりドン作品恒例の格闘技チャンピオンが光っていました。
中盤、トレーニングに励んでいるドンに白人グループが襲いかかるのですが、ここで"ザ・マン"ことスタン・ロンギニディスが現れます。スタンはオーストラリア出身のキックボクサーで、何度も世界王座に君臨した実力派。過去には来日してK-1のリングに上がり、佐竹雅昭やアンティ・フグらとも対戦経験があります。ドンとは『キング・オブ・キックボクサー2』でも共演し、本作ではハイスピードな蹴りの応酬を見せていました(心なしかドンの動きも生き生きとしていた気がします)。
全体的な感想としては、ドラマとアクションは淡白な作風ではあるものの、程よくアクセントが利いていた佳作…といったところでしょうか。ところで本作にはもう1人、こちらもキックボクサーの強豪で『検事Mr.ハー』にも出演したピーター・カニンガムも出演しているのですが、何故かこちらは完全にザコ扱い。老囚人グループの庭を襲い、ドンの前に躍り出たところをワンパンチで倒されるという悲惨な役柄でした(涙

「奪還 DAKKAN アルカトラズ」
原題:HALF PAST DEAD
製作:2002年
●前の更新から随分と時間が空いてしまいましたが、皆さんお元気だったでしょうか?1ヶ月近く休んでいた当ブログも今回から通常営業に戻りますので、また宜しくお願い致します!
ところで、先月の『ブルージーン・コップ』を最後に監獄アクション特集は中断することにしましたが、このまま終わるのも忍びない…。というわけで、掲載するはずだった記事を2本ほど紹介してみたいと思います(もう1本は次回にて!)。
今回はヴァンダムの対抗馬、スティーブン・セガールの登場です。しかし彼は今まで単身で数々の巨大組織を陥落させてきたため、普通に刑務所で闘っていると10分で壊滅させかねません。そこで本作では監獄モノの王道パターンを一切使わず、刑務所に謎の敵が現れるという新機軸を用意しています。これなら映画1本くらいの時間は稼げますし、囚人VS第三者という図式も斬新に見えます。
また、本作には香港から『刀/ブレード』『天地大乱』の熊欣欣(チョン・シンシン)が参加し、香港映画的なアクションスタイルを加味しています。その他にも『暴走特急』で気のいい相棒だったモリス・チェスナットが大ボス役で出演していたりと、ファンには嬉しいサプライズが幾つか見られます。あとはセガールが香港アクションと合致し、どれだけ暴れてくれるかが問題なのですが…。
相棒のジャ・ルールと共に自動車泥棒をしていたセガールは、FBIとの銃撃戦によって重傷を負ってしまう。それから八ヵ月後、一命を取り留めた彼は新装開店したアルカトラズ刑務所へと収監され、ルールとそこで再会を果たした。そのころ、同刑務所では五億ドルの金塊を盗んだブルース・ウェイツの死刑が始まろうとしていたが、そこに武装した集団が現れる。彼らはウェイツが隠した金塊をモノにしようと企んでいて、同席していた裁判官たちを人質に篭城を決め込んだ。何とか難を逃れたセガールは、すぐさま反撃へと転じる!
…と、ストーリーについてはたったこれだけで、良くも悪くもセガール映画といった感じの内容です。主軸となるセガール&ルールの友情物語は悪くないのですが、それ以外のキャラクターに関しては描写が少なく、終始おざなりな描き方になっていました。期待していた囚人VS武装集団のバトルもあまり無く、終盤になってようやく銃撃戦が始まる程度だったのもマイナス要因となっています。
ただし、格闘アクションはそれほど数はありませんが、熊欣欣のおかげか通常のセガール映画よりひとつ上のレベルに達していました。セガールは前半にザコ2人を得意の腕さばきで制し、鎖にぶら下がりながらモリスと蹴り合ったりと奮闘!相棒のルールも各所で意外といい動きを見せています。特に面白かったのはルールVS敵の女幹部で、窮屈な地下通路で香港映画チックな攻防戦を繰り広げていました。
惜しむらくは終盤の展開で、素手のファイトが一切無いまま銃撃戦やヘリコプター大爆破で終わるという薄味すぎるラストになったこと。やはり最強無敵なセガールを監獄に繋ぎ止めるのは至難の業、縛られぬからこそセガールは強いということなのでしょう…。ところで、モリスは『暴走特急』で脇役ながら敵のヘリを奪うという活躍を見せていましたが、本作ではそんな彼がヘリで死ぬという正反対の画が見られます(笑