
笑太極
英題:Xiao Tai Ji/Laughing Tai Chi
製作:2004年
▼当ブログでは今年も様々な作品をご紹介してきました。一昨年と去年は最後の更新にジミー先生の主演作をセレクトしましたが、今回は前々回の『新報仇』に引き続いて、またもや某傑作功夫片のリメイク版(らしき作品)を取り上げたいと思います。
タイトルを見てお気付きの方も多いと思いますが、本作は甄子丹(ドニー・イェン)の初主演作である『ドラゴン酔太極拳』(原題:笑太極)と同じタイトルを持つ作品です。
相変わらず本家とは無関係のキャスト&スタッフで占められているものの、製作は『必殺のダブルドラゴン』を手掛けた李超、出演は錢嘉樂(チン・ガーロッ)と周比利(ビリー・チョウ)で、他にも往年の功夫職人たちが名を連ねています。
…ところが、本作は『神鳳苗翠花』のようなTV映画だったらしく、撮影はビデオ撮りで行われているようです。さらに言うと監督の林文偉は役者が本業で、その仕事は脇役がほとんど。『プロジェクトA2』では新任のジャッキーに最初に殴りかかる警官、『インフラマン』では洗脳された隊員に扮していました。
脇役仕事オンリーの監督が撮ったフィルム撮影ではない作品…う~ん、なんだか猛烈に嫌な予感がしてきたような…(汗
■(※ストーリーは若干推測が入っています)
錢嘉樂は功夫が大好きな金持ちのボンボン。そんな彼が瀕死の男から謎の宝剣を預かり、事件に巻き込まれるところから物語は幕を開ける。実はこの宝剣、明朝が隠した財宝の手がかりとなる重大なものであった。
盗賊?の周比利は捜索を開始し、錢嘉樂のもとに宝剣があるのではないかと疑念を抱く。一方で錢嘉樂は、たまたま出会った功夫使いの老人・陳少鵬(!)に教えを乞い、叔父である白彪(バイ・ピョウ)の取り成しで弟子入りに成功した。
実は陳少鵬と白彪は清朝に不満を持つ革命派のメンバーであり、彼らも宝剣を探しているという。肝心の宝剣は錢嘉樂の許婚?が持ち去っており、しばらくしてあっさりと彼の手元に帰ってきた。
ここに陳少鵬の娘を加えて三角関係になりそうな雰囲気…だったのだが、周比利が錢嘉樂と因縁のあるチンピラどもと結託し、強引に宝剣の返還を迫ってきた。陳少鵬は錢嘉樂に太極拳と笑拳を伝授し、修行の総仕上げに取り掛かっていく。
だが、周比利の奇襲によって陳少鵬が犠牲となってしまい、錢嘉樂は合流した白彪から2つの拳法を合体させた笑太極を習うことに。宝剣に財宝の地図が隠されていたと明らかになる中、ついに最後の戦いが始まった!
▲さて、結論から申し上げますと、本作はリメイク版でもなんでもありません(爆)。使用する拳法も、ストーリーの骨子も、キャラクターの配置もまったくの別物。共通しているのは題名とそのフォント、コメディ功夫片というジャンルのみです。
作品自体のクオリティも芳しくなく、とても2004年に作られた物とは思えない出来でした。不要になったキャラを片っ端から殺す展開、登場する修行道具やロケ地のショボさなどは、昔の低予算功夫片を(悪い意味で)彷彿とさせます。
もしかすると、本作はそういった古臭さをあえて狙ったのかもしれません(『超酔拳』みたいに)。そうすると気になるのは功夫アクションの出来ですが、こちらはビデオ撮りのせいか迫力が感じられず、あまりパッとしない殺陣に仕上がっていました。
タイトルにある笑太極という拳法も、適当に笑い顔を浮かべながら戦うというお粗末な代物であり、『ドラゴン酔太極拳』の流れるような動作とは比べるべくも無いでしょう。
唯一の見せ場は往年の功夫スターである白彪と、ベテラン武術指導家の陳少鵬というビッグネーム2人の存在です。彼らは劇中で錢嘉樂や周比利と拳を交えており、レア対決マニアには垂涎の顔合わせが実現していました。これでアクションが良ければなぁ…。
リメイク版じゃないのは仕方ないとしても、この出来はさすがに微妙すぎました。どうしても白彪と陳少鵬の姿を確認したい方、ヘナヘナな笑拳を見たい方、無断使用されている『もののけ姫』のBGMを確認したい方のみオススメです。
えっと……それではみなさん、良いお年を!(逃げた)

「ホワイト・ファントム/霊幻戦士」
原題:WHITE PHANTOM
製作:1987年
●とある街を根城にするサクラ一家の若き当主・龍方(ジミー・リー)は、父親の命令で5メガトン級の爆薬(ケース1個分)を奪い、それを売りさばこうと企んでいた。
CIAのボー・スヴェンソンは爆薬の所在を突き止めるため、踊り子のペイジ・レオンを利用して取引現場を急襲する。だがニンジャだった龍方によって爆薬は持ち去られ、さらにはペイジまでもが殺されてしまう。
そんな中、彼女を愛していた白きニンジャ…ジェイ・ロバーツ・Jrが仇討ちに立ち上がった。陽気な青年の顔を捨てて黒装束に袖を通すジェイ。ペイジへの愛を捨てて修羅の道を行く龍方。2人のニンジャが今、雌雄を決する!
今年で当ブログがスタートして6年目ですが、まだまだノータッチのジャンルがいくつも存在します。そのうちの1つが東南アジア産ニンジャ映画です。
80年代にアメリカでニンジャ映画がブームとなった際、数々の便乗作品が誕生しました。香港では羅鋭(アレクサンダー・ルー)がこの流れに同調し、フィルマークもニコイチ映画で参戦。同様の動きはフィリピンを中心とした東南アジアでも起こっていきます。
そうして作られたのが『ニンジャ・ウォリアーズ』などの東南アジア産ニンジャ映画で、香港産の作品とともに日本へ上陸。ブームが去った後も一部のファンから指示を受けましたが、VHSの時代が終わるとともに店頭から完全に消滅し、今では中古品もあまり見かけなくなりました。
私の近所にも数年前まで何本か置いてあったのですが、「いつか見ようかな」と思っているうちに消えてしまい、見なかったことを随分と後悔したものです(苦笑
結局、私は東南アジア産ニンジャ映画に触れる機会を逸したものの、投売りされていた本作だけは入手することができました。そういう意味では思い出深い作品…と言えなくも無いですが、映画としては大した代物ではありません。
本作は台湾でロケーションが行われた作品で、『ゴッドギャンブラー』などで知られる龍方が出ています。しかし尺の大半はチャチな愛憎劇と抗争に割かれ、ニンジャの活躍は控えめとなっているのです。
この他にも、ペイジを利用しまくったボーが痛い目を見ない、龍方の父親が死んでいない(続編狙いの演出?)など、釈然としない部分が多々ありました。その反面、ニンジャのアクションはわりと様になっていて、意外と見られるものに仕上がっています。
終盤のジェイVS龍方ではソードバトルから始まり、おもむろに刀を捨てて素手格闘に発展。ボーも果敢に格闘戦へ挑んだりと、このへんはサービスが行き届いていた感じです(ちなみにファイト・ディレクターは龍方が兼任)。
本作はあまり良い作品ではないですが、まだまだ私の東南アジア産ニンジャ映画の探求は始まったばかり。来年はシルバースター・フィルムの作品など、同ジャンルの開拓を進めていこうと思っています。

新報仇/上海灘之新報仇/報仇
英題:Revanchist
製作:1994年
▼功夫映画史に残る傑作である『ヴェンジェンス/報仇』。名匠・張徹(チャン・ツェー)が手掛けた監督作の中でも特に有名な作品ですが、そのリメイク版が90年代の台湾で密かに作られていました。
監督を務めるのはカメラマン出身の莊胤建で、武術指導にはあの羅鋭(アレクサンダー・ルー)が参加しています。製作には大陸系の中国合作電影製片公司が関わっているため、エキストラやセットの規模はなかなかのものです。
残念ながらオリジナルに関わったキャストやスタッフはいませんが、羅鋭作品の常連俳優や王侠・蔡弘などのベテランが参加。姜大衛にあたる役を『少林キッズ』で三徳和尚に扮した劉錫明が、狄龍役を『アイアン・モンキーグレート』のラスボスだった張建利が演じています。
■時は1920年代…上海租界に向かう汽車の中に、強い絆で結ばれた2人の少年がいた。ひょんなことから黒社会の一派・紅雲山荘の一員となった彼らは、やがて劉錫明と張建利に成長する。
ある日、トラブルで西洋人を射殺した張建利を庇うため、劉錫明が身代わりとなって獄に入った。張建利は保釈金を工面するため、組織の刺客となって危険な任務に従事していく。久しぶりに再会した幼馴染の呉珊珊は、そんな彼の様子を心配するのだが…。
黙々と任務をこなす張建利は、次に敵対組織である威虎山荘への潜入に挑んだ。まんまと彼はボスの王侠に取り入るが、腹心である張豐毅(チャン・フォンイー)の目までは誤魔化せず、奇襲を受けて殺されてしまう。奇しくも、それは目標額に達した保釈金を部下に預けた直後の出来事であった。
晴れて自由の身となった劉錫明は、変わり果てた友の姿に涙を流した。紅雲山荘はしめやかに葬儀を執り行うが、そこに王侠たちが押しかけてきたため一触即発の状況に。すわ全面戦争かというその時、実は王侠の娘であった呉珊珊の静止により事態は収拾する。
しかし成り行きで彼女は劉錫明の元から離れ、威虎山荘へと去って行った。だが威虎山荘では、密かに野心を抱いていた張豐毅が組織の指揮権を奪い、さらには呉珊珊を妻に娶ろうと企んでいた。
結婚式の当日、王侠は推参した劉錫明に後のことを託すと、自刃して壮絶な最期を遂げた。それでも不適に笑う張豐毅に対し、心に”報仇”の二文字を刻み込んだ劉錫明が立ちはだかる!
▲ご覧のように本作は上海を舞台にした抗争劇であり、ストーリーはまったくの別物となっています。オリジナルと共通しているのは主人公が交代する点だけで、ぶっちゃけリメイクなのかどうかすら怪しいと言わざるを得ません(笑
とはいえ、作品自体の作りは決して悪いものではなく、先述したようにスケール感もバッチリ。演技面では父親として苦悩する王侠の姿が印象的で、功夫片の時代には見せなかった「泣きの演技」まで披露!これには思わず私もグッときてしまいました。
ただ、後半は王侠サイドに比重を置きすぎたせいで、劉錫明の影が薄くなるという本末転倒な結果を招いています。本来なら彼は姜大衛のように報仇を目指し、自ら戦いの中に身を投じるべき役柄のはず…本作はその点を外してしまったのです。
アクションもワイヤーで飛び回るニンジャ映画的な動作のため、作品のカラーと剥離しています。動作そのものは迫力があるし、終盤の劉錫明VS張豐毅もバチバチ殴りあってイイ感じなんですが…。
肝心なところが徹底されていないため、なんともいえない居心地の悪さを感じてしまう本作。『報仇』のリメイクという大きすぎる冠を取り払えば、それなりに評価できる作品ではあると思います。
ちなみに本作には羅鋭も脇役で出演していますが、華麗なキックを一発披露した次の瞬間に呆気なく撃ち殺されていました(爆

「バーニングファイター」
原題:Blood Ring
製作:1991年
●しがない賭けボクサーのデル・アポロ・クックは、元恋人のアンドレア・ラマッチから相談を受けた。彼氏のスティーブ・タータリア(『ワンチャイ/天地黎明』)が帰ってこないというのだ。心配することはないと励ますクックだが、その考えはすぐに改められることとなる。
次の日、アンドレアはスティーブの消息を知るため、彼の仕事先へと向かった。ところが彼女は怪しい男たちから銃撃を受け、ほうほうのていでクックに助けを求めてきた。彼はたった1人で仕事先のビルに潜入し、そこでスティーブが非合法の賭け試合に強制参加させられていた事を知ってしまう。
事件の黒幕であるドン・ナカヤ・ニールセンは、新たな賭け試合の選手としてクックを利用しようと企んだ。あっという間に彼とアンドレアは拘束され、望んでもいない戦いを強いられることに…。
だが、2人は敵の隙をついて逃走に成功。山奥へ逃げ込んだクックは再起を誓い、スティーブの仇を討つために猛トレーニングを開始する。一方でドンも罠を張り巡らせ、2人を始末すべく待ち構えていた。クックとドン…果たして生き残るのはどっちだ!?
前回に引き続き、今回も底抜けキックボクサー映画をひとつ。本作は『バトル・ウルフ』などで知られる香港資本の会社、ダヴィアン・インターナショナルが製作した『キックボクサー』の亜流作品です。
内容はよくある闇の格闘大会ものですが、本作はなぜか肝心の格闘大会に極力関わろうとしないという、かなり前衛的なアプローチを試みています。
中盤、クックはリングに上がって最初の試合をこなしますが、すぐにアンドレアを連れて脱出。再び舞い戻ってチャンピオンと戦いますが、彼を倒すとすぐにリングを降り、銃撃戦に身を投じてしまうのです。
このままではキックボクサー映画らしくない…と製作サイドが判断したのか、ラストでは銃撃戦がひとしきり終わったところで、ドンが「リングに上がって戦え!」と強引に宣告し、最後の戦いが始まります(唐突すぎるわっ!)。
脅されて出場している以上、格闘大会に関わりたくないという気持ちは解ります。ですが、格闘映画なのに格闘大会をスルーし続けるというのは、さすがに本末転倒な気がしてなりません。
アクション面もかなり単調ですが、大人しくなりすぎた『アメリカン・キックボクサー』よりはバラエティに富んでいます。格闘大会での試合のほか、銃撃戦や路上でのファイト、そして最後は有刺鉄線デスマッチまで展開されます。
しかし殺陣がイマイチなせいか、劇中の格闘アクションは全体的にモッサリとしており、ドンにいたっては木偶の坊状態。唯一、スティーブだけは香港仕込みの軽やかなファイトを見せていました。
とはいえ、先述の有刺鉄線デスマッチだけはそれなりに迫力があり、血まみれになりながらも必死に戦うクックとドンの姿には、鬼気迫るものを感じます。でもこの2人の対決なら『エターナル・フィスト』のほうが良かったかな?
格闘シーン以外に銃撃戦などの要素を欲張ったがために、作品自体のバランスが不安定になってしまった失敗作の典型。バランス配分によっては『バトル・ウルフ』みたいな良作になったかもしれませんが…う~ん。
ところで、中盤にクックがセガールを始めとした格闘俳優の名前を言いながら戦う楽屋オチ的なシーンがあるんですが、一流スターに混じって自分の名前(デル・アポロ・クック)まで叫んでいたのには苦笑してしまいました(笑

「アメリカン・キックボクサー」
原題:AMERICAN KICKBOXER/AMERICAN KICKBOXER 1
製作:1990年
●キックボクシングのミドル級王者であるジョン・バレットは、祝賀パーティで傲慢なキックボクサーのバード・モリスと口論になった際、止めに入った客を突き飛ばして死なせてしまう。
事故であることを主張するジョンだが、裁判所はバードの主張を認めて有罪判決を下した。それから10ヵ月後、釈放されたジョンはジムのオーナーの口利きで審判として復帰するが、彼に代わって王座に君臨したバードはなおも挑発を繰り返していく。
その後、ジョンは友人でキックボクサーのキース・ヴィダリのトレーニングを受け持つが、色々あって喧嘩別れに。キースは彼が不在のままバードに挑むも、あえなく返り討ちにあってしまった。
更にはパーティの席でバードとケンカになり、手も足も出なかったジョンは突如として出奔。一方、彼とバードのメイクマッチを画策する新聞記者のテッド・ルプラットは、あの手この手を使ってお膳立てを行い、2人をリングへと引きずり出した。
キースや恋人のテリー・ノートンの励ましを受け、心身ともに立ち直ったジョン。…今、彼はすべての遺恨を精算するべく、憎き仇敵との決戦に挑む!
本作は先日『スパルタンX』を見ていて、ふと「そういえばキースの出演作でまだ見てない作品があったなぁ」と思い、中古ビデオの山から掘り出して視聴した作品です。
実を言うと購入したのは随分と前なんですが、パッケージや粗筋を見て面白く無さそうだと判断し、そのまま放置していました。そこで今回、ようやく目を通してみましたが…やっぱり面白くありませんでした(爆
ストーリーは『ロッキー3』を意識したものですが、テンションは元の作品より大幅に下がっています。原因は湿っぽい主人公、フラストレーションの溜まる悪役サイドの2つにあると言えるでしょう。
主人公のジョンは己の感情が抑え切れず、嫉妬深いという面倒臭い性格の人物。テリーとキースが親密なのが気に食わず、トレーニングで当り散らす様はかなり小物っぽく見えます。
対するバードは生意気かつダーティなキャラであり、どこぞの3兄弟を髣髴とさせるヒールっぷりを発揮します。その言動は見ていて非常にイラつきますが、おかげでラストバトルを盛り上げるのに一役買っていました。
しかし、もう1人の悪役であるテッドはただひたすら鬱陶しく、見ていて嫌悪感しか感じません。野次を飛ばし、敵味方構わずに相手をコケにし、記者という立場を利用してジョンを煽るなど、バード以上に悪質な存在として猛威を振るいます。
テッドの暴走は終盤まで続き、最後の最後に報いを受けるのですが、なんとパンチ1発食らっただけで終了。私はてっきりバードに殴り殺されるのだろうと予想していたので、この結末には納得できなかったです。
格闘シーンのクオリティも無難な出来で、飛びぬけて凄いと言えるシーンはこれといって無し。登場人物のファイトスタイルはバードを除いて差別化されておらず、延々と平凡な試合が続きます。
注目のキースは序盤からジョンと、中盤でバードと戦いますが、どの勝負も決め手に欠けていて薄味に仕上がっています。ファイト・コーディネーターはジョンとキース自身が担当しているのに、このような結果となってしまうとは…。
ストーリー、アクションともにひたすら単調な便乗作。続編の『リアル・キックボクサー』で方向転換したのも頷ける出来でした。もっとも、その『リアル~』も煮え切らない出来だったりするんですけどね(苦笑