続・功夫電影専科 -30ページ目

続・功夫電影専科

香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


「ディレイルド 暴走超特急」
「ヴァン・ダム IN ディレイルド 暴走超特急」
原題:DERAILED/TERROR TRAIN
製作:2002年

●東欧のスロバキアにある軍事施設から、女泥棒のローラ・エレナ・ハリングが細菌兵器を盗み出した。秘密工作員のジャン=クロード・ヴァン・ダムは彼女を護送すべく、家族との休暇を打ち切るはめになる。
どうにか軍の追跡を振り切った2人は、特急列車に乗り込んで目的地のミュンヘンへと向かった。だが細菌兵器を狙うテロリストが現れ、乗客やヴァンダムを追いかけてきた家族が人質になってしまう。
 彼は事態の収拾を図るが、トラブルにより細菌兵器が列車内に拡散。乗客に感染が広がる中、次々と降りかかるアクシデントにたった1人で対処していく。だが、そうこうしているうちに軍によって列車の爆破が決定され、刻一刻とその時が近づきつつあった。
果たしてヴァンダムは家族と乗客を救い、テロリストを一掃できるのだろうか!?

 90年代に最盛を極めたヴァンダムですが、00年代に入るとその勢いも衰えつつありました。本作はそんな苦闘の時期を象徴するような、あらゆる面でイケてない作品です。
ストーリー的には列車アクションにウィルス・パニックを絡め、一粒で二度おいしい路線を狙ったものと思われます。しかし全体的に演出が地味で、キャラクターの描写も薄味。この手の作品に必要なケレン味が圧倒的に足りていません。
 余計なシーンも多く、中盤にヴァンダムがバイクで列車から下車→再び乗車するシーンなどは完全に不要です。そもそも追ってきた敵は大体倒してるので降りる必要はないし、むしろ発症してないとはいえヴァンダムが細菌をまき散らしているような気が…(汗
おまけにラスボスとの最終決戦はあっさり終わるわ、クライマックスとなる列車停止も全く盛り上がらないわと散々。ヴァンダムが息子(演ずるはヴァンダムの実子であるクリストファー・ヴァン・ヴァレンバーグ)と再会するシーンもかなり淡泊でした。

 一方で、アクションシーンは全体的に並みのボリュームを保っており、派手なカーチェイスや列車爆破などの見せ場もあります。ところが格闘戦となると思い切りが足らず、肝心のラスボス戦も先述の有様です。
自慢の回し蹴りも今回は控えめで、逆に演出(画面の二分割など)のせいで迫力が削がれていました。同じ列車アクションである『暴走特急』が、セガールという素材を上手く生かしていたことを考えると、本作はまさに正反対の出来と言えるでしょう。
 のちにヴァンダムは『その男ヴァン・ダム』に出演し、吹っ切れて再びド派手なアクション映画へ出るようになるのですが、そこへ至るまでの時期に撮った作品はあまり見ていません。どれも肉弾アクションは控えめのようですが、今後はこれらの作品にも目を通していきたいと思います。
…ところで、本作のラスボスを担当した声優が若本規夫だったのは、もしや『暴走特急』へのオマージュ!?(違


大教頭與騷娘子
英題:Bruce and the Iron Finger/Bruce Against Iron Hand
製作:1979年

▼かつて『クローン人間ブルース・リー/怒りのスリー・ドラゴン』という無茶苦茶な作品がありました。これは李小龍のバッタもん俳優を集結させた怪作で、これ以外にも“ブルース”の名を持つ男たちが集った作品が存在します。
例えばブルース・ライこと何宗道(ホー・チョンドー)が監督&主演した『龍的影子』には、共同監督として呂小龍(ブルース・リ)が参加。そして本作では、何宗道があの梁小龍(ブルース・リャン)と顔を合わせているのです。
この2人は『Gメン75』の香港ロケシリーズに出演しており、他にも本作には『Gメン』出演者が何人か顔を出しています。これで江島と楊斯(ヤン・スー)も出ていれば最高だったんだけどなぁ…(笑

■香港で謎の覆面通り魔による連続殺人事件が発生する。被害者はみな首筋に鉄指拳を叩き込まれており、武館の師範(?)に続いてクラブに雇われていた怪力男・染野行雄も殺された。
刑事の何宗道は、現場に残されていたペンダントを手掛かりに捜査を開始。死の直前に染野と一夜を過ごした李海姫に話を聞くが、これといって有力な情報は聞けなかった。
 そうこうしているうちに、仲間の刑事から「谷峰(クー・フェン)が師範代をしている道場が怪しいのでは?」との情報が舞い込み、何宗道は門下生になりすまして潜入を試みる。
しかし目ぼしいネタは得られず、師範の娘に密会しようとしていた恋人?を助けたため、道場を追い出されてしまう。だが最後にペンダントを見せられた谷峰は、去りゆく何宗道の背中に怪しく目を光らせていて……。
 その後、次に何宗道が接触したのは鉄指拳道場の先生・梁小龍だった。両者は誤解から衝突するが、最終的に和解して捜査に協力してくれることに。しかし敵は卑怯な罠を仕掛けようと、密かに動き出していたのである。
もうバレバレなので先に言ってしまうが(爆)、覆面通り魔の正体は谷峰であった。彼は裏で人身売買を行っており、道場生の方野や宋金來とともに暗躍。例の連続殺人で殺した相手は、ほとんどが男癖の悪い愛人・李海姫の浮気相手だったのだ。
 何宗道が嗅ぎまわっているのに気付いた谷峰は、彼と何も知らない師範の娘を刺客に殺させようと画策。懲りずに浮気を続ける李海姫とその相手を始末し、仲間や商売道具ともども高飛びを謀った。
しかし刺客の李海生(リー・ハイサン)は何宗道に倒され、師範の娘は警察に保護された。死に際の李海姫が吐いたことで谷峰の容疑は確定的となり、何宗道と梁小龍は最後の戦いに向かう!

▲やたらと露骨なお色気シーンが多く、犯人が解りやすいのでサスペンスとしては微妙ですが、作品そのものは明るいタッチの快作に仕上がっています。
本作のカラーを晴れやかにしたのは、人間味のある主人公たちのキャラクターにあるといえるでしょう。お調子者の梁小龍はもちろん、真面目だけど捜査でミスってしまう何宗道の姿も微笑ましく感じました。
 この2人の共演は制作サイドもアピールしたかったようで、両者の対決も協利作品ばりにじっくりと描写されています。武術指導は梁小龍と梁小熊の兄弟コンビなので、クオリティに関しては何ら問題ありません。
何宗道の動きはいつも以上に鋭く、梁小龍も負けじと繊細な動作が要求される鉄指拳で対抗!そんな2人の前に立ちはだかるのが谷峰で、本作では虎拳に加えて鐵布杉らしき防御技まで身に付けていました。
 クライマックスでは2対1の戦いとなり、鐵布杉の弱点を突こうとする功夫片の黄金パターンへ移行しますが、これを現代劇でやると新鮮に見えるから不思議です(オチも倒して終わりではないのがミソ)。
梁小龍の出番は『大福星』のジャッキーに近いものの、出来に関しては上々。監督の杜魯波は梁小龍とのコンビ作が多いので、いつかはコンプリートしてみたいですね。


「ヒットマン」
原題:殺手之王
英題:Hitman/King of Killers/Contract Killer
製作:1998年

●謎に包まれた殺し屋・炎の天使が、香港に財閥を築き上げた塚本グループの総帥(佐原健二)を殺害した。総帥は旧日本軍上がりの悪党で、自分が殺された時のために“復讐基金”なるシステムを用意していた。
このシステムによって炎の天使に1億米ドルの賞金が掛けられ、世界中から続々とヒットマンが集結しはじめる。大陸から来た元兵士の李連杰(リー・リンチェイ)も、高額の賞金につられた者の1人であった。
 だが温厚な彼は人殺しの経験など無く、事情通のチンピラ・曾志偉(エリック・ツァン)に殺しのイロハを教わりながらターゲットを追うことになる。実は曾志偉には梁詠[王其](ジジ・リョン)という娘がいるのだが、どうも親子関係は良くないらしい。
そんな中、総帥の孫である佐藤佳次も1億米ドルの争奪戦に加わり、基金の審判員を抱き込んで密かに行動していた。彼らの暗躍に気付いた李連杰たちは、先んじて事件の重要人物と思われる老人に接触するも、ドンパチの最中に老人は死んでしまう。
佐藤に睨まれて立場が悪くなってきた曾志偉は、ここに至って李連杰に真実を明かした。佐原と老人に浅からぬ因縁があった事、そこへ割って入ったために自分が炎の天使だと疑われている事、そして是が非でも大金をモノにしたいという事を…。
しかし佐藤の追及はなおも続き、李連杰たちは塚本グループの本社ビルへと乗り込んでいく。炎の天使の正体が判明する中、ついに最後の戦いの幕は切って落とされた。果たして最後に生き残り、1億米ドルを手にするのは誰なのか!?

 李連杰がハリウッドへ上陸する直前に撮られた作品ですが、正直言ってそれほど面白い作品ではありません。全体的に作り込みが甘く、登場人物の設定にも影響が及んでいます。
特に主人公である李連杰の人物像には若干の矛盾があり、やや感情移入がしづらいキャラとなっていました。本作の彼は優しい性格の持ち主でありながら、戦いとなると卓越した武術の腕前を発揮します。しかし元兵士だと劇中で語ってはいますが、人を殺したことがない李連杰が異様に実戦慣れしているのは不自然に思えてなりません。
しかも彼の隣にはアクの強い曾志偉が控えており、あやふやな設定を持つ李連杰の影は薄くなる一方。その曾志偉にしても、李連杰に目を付けてプロデュースした理由は最後まで語られないのです。
 ストーリーも炎の天使を巡る戦いをメインにするのか、それとも曾志偉のドラマを主題にしたいのか解らず、どちらのパートも盛り上がりに欠けていました(曾志偉と梁詠[王其]のエピソードは悪くないんですが…)。
ただしアクションシーンだけは平均以上のものを残しており、レーザーポインターを仕込んだ指輪を使うポール・ラプスキーとの対決、エレベーターシャフト内での戦いは工夫が凝らされています。
ラストバトルも三者三様のバトルが展開され、曾志偉の七転八倒(笑)も含めてなかなか楽しめました。とはいえ作品としてのレベルはイマイチ止まり。世界中から来た殺し屋も2人くらいしか出てこないので、あまり期待しすぎない方がいいでしょう。


「風雲!格闘王」
原題:安娜與武林
英題:Anna in Kungfu-land/Anna & Wulin
製作:2003年

▼まず最初に結論から言ってしまいますが、本作は非常に“ユルい”作品です。ストーリーやアクションはそこそこレベルだし、尺の大半は軽~いラブコメで占められています。
しかしこの“ユルさ”が本作の持ち味であり、最初から最後まで一貫して和やかなムードが保たれていました。あまり巷の評判は良くないようですが、私はこの作品を好意的に見ています(理由は後述)。

鄭伊健(イーキン・チェン)は広告代理店に勤めるプレイボーイ。社長の娘である何韻詩(デニス・ホー)と付き合っていたが、あるとき栄養ドリンクの宣伝を兼ねた格闘大会の企画が持ち上がる。
出場者を募るべく、まず鄭伊健が訪ねたのは武術の総本山・少林寺。しかし大師の劉家榮(リュー・チャーヨン)は、30年前の武術大会で弟子が駆け落ちするという事件が起きたため、対外試合には消極的であった。
 駆け落ちした弟子との関係改善ができるなら出場もやぶさかではない、と言う劉家榮の主張を了承した鄭伊健は日本へ。そこで件の弟子・倉田保昭と接触し、彼の娘・楊千[女華](ミリアム・ヨン)が出場する運びとなる。
鄭伊健に一目惚れした楊千[女華]は、大会の副賞として女優デビューできるかもしれないと聞き、有頂天で香港にやって来た。が、当の鄭伊健には何韻詩という彼女がいるため、当然のごとく恋愛模様はしっちゃかめっちゃかに…。
 そうこうしているうちに格闘大会が始まり、ひと癖もふた癖もあるファイターたちが凌ぎを削りあっていく。楊千[女華]は順調に勝ち進むが、ふとした拍子から鄭伊健の二股が発覚してしまう。
ショックで戦意喪失した彼女は準決勝で棄権するも、劉家榮の代理として決勝の大舞台に立つこととなる。果たして大会を制するのは誰なのか? そして2人の恋の行方は? 今、決勝戦のゴングは鳴った!

▲『大丈夫日記』を髣髴とさせるムチャなラブコメを軸に、大小さまざまなネタを盛り込んだ香港映画らしい本作。それでいて本作がナイスなのは、ベテランの役者をリスペクトしている点です。
倉田さんや劉家榮はもちろん、意外と出番のある羅莽(ロー・マン)にもアクションと演技の見せ場が用意され、老いてもなお快活な彼らの姿を見ることができます(羅奔はちょっと可哀想なオチでしたが・苦笑)。
 また、先述した“ユルい”雰囲気を徹底するため、絶対的な悪を置かなかったのも好印象でした。敵役としてチャールズ・イングラム(海兵隊出身のスタントマン)が存在しますが、彼自身は試合で反則技を使ったりはしません。
彼が悪役らしい行動をしたのは、最初に生意気な口を叩いた時と劉家榮を闇討ちした時くらいで、CM撮影に手間取る姿には愛嬌さえ感じます。以上の点から、私はこの作品の持つほのぼのとした空気を好ましく思っているのです。
 とはいえ、アクション的にはちょっと物足りなかったのも事実。中途半端にCGで装飾したりせずに、もっと本格的な格闘戦を見て見たかった気持ちはあります。しかし作品の“ユルさ”に合わせるなら、この位のボリュームで良かったのかもしれません。
本作特有の“ユルい”ノリには賛否が分かれるものの、期待しすぎなければ普通に楽しめるはず。ここのところ羅守耀(デニス・ロー)の監督作を立て続けに見ていた私にとっては、とても良い癒しになりました。
 ちなみに日本ロケに倉田プロモーションが関わっているせいか、倉田さんと戦う道場破りに倉田プロ出身の俳優2名が扮しています。誰が出ているかは見てのお楽しみですが、『バトルハッスル』を見れば答えが解るかも…(笑
あと監督の葉偉民(イップ・ワイマン)、劇中にウルトラマンの人形やそれっぽい特撮ドラマを出したところを見るに、ひょっとして日本の特撮マニア?


「アラジンと魔神のランプ」
原題:ALADDIN AND THE DEATH LAMP
製作:2012年

●かつて香港を拠点に活動していた白人功夫スターの中に、ダーレン・シャラヴィという男がいました。野性的な風貌と卓越した武術の腕を持つ彼は、今や世界中で名を轟かせています。
香港で下積みを重ねた際に『太極神拳』で呉京(ウー・ジン)と戦い、アメリカに渡ってからはゲイリー・ダニエルズ主演の『Blood Moon』や、セガールの『沈黙の復讐』でラスボスを担当しました。
 近年は『葉門 イップ・マン』『マキシマム・ブロウ』といった話題作に出演するなど、ますます知名度を高めてきているダーレン。ところが華々しい活躍とは裏腹に、代表的な主演作が1つも存在しないのです。
格闘映画で正義の味方に扮した作品といえば、助演だった『ネイビー・ストーム』ぐらい。濃いルックスや悪役の印象が強すぎる点などが、主演作を遠ざけている一因なのかもしれません。

 本作はそんな彼にとって数少ない、そして日本に上陸した2つの主演作のうちの1本です。ちなみにもう1本はドイツで撮った『ビヨンド・ザ・リミット』で、こちらは滅茶苦茶グロいホラー映画なのだとか…。
ホラーが苦手な私は当然のように本作を選んだわけですが、困ったことにこちらも違う意味で「見なきゃ良かった」と思わせる迷作でした(爆
 まず本作は、見てのとおり「アラジンと魔法のランプ」を元にしていますが、ストーリーはまったくの別物。一番の違いはランプの魔人で、本作では人間を喰らう怪物として猛威を振るいます(だから原題が「THE DEATH LAMP」)。
物語はダーレンが魔人を解き放ってしまい、様々な仲間とともに魔人を封印するための冒険に挑むというもの…なんですが、これがまた壮絶につまらないのです。
 まず目に付くのがセリフと実際の描写の落差でしょう。「世界一険しい山」が普通に登頂できたり、「絶対に見つからないように」と捨てたランプが簡単に見つかったりと、まるでツッコミ待ちのギャグみたいな光景が続きます。
後半の舞台となる「呪われた島」にいたっては、魔人の仲間を呼び寄せる魔界への扉があるくらいで、特に呪われてるようには見えない始末。アドベンチャーでは定番の罠や猛獣も、ここでは全く出てきません(猛獣は序盤と中盤だけ登場)。

 冒険の様子は淡々と歩き続けるだけで面白みがなく、クライマックスでは相棒のダメ男が裏切ったのを皮切りに、ストーリーのグダグダさが一気に加速してしまいます。
雑な描写のせいで突然狂ったようにしか見えないヒロイン、ご都合主義で死んだと思ったら生き返る魔術師、そして唐突に改心するダメ男…。これらの超展開とやっつけ気味のラストには、私も呆気にとられるばかりでした。
 作品自体がこんな調子なので、アクションも当然のごとく低クオリティ。スタッフにダーレンの動きを生かすという発想は無く、ひたすら古典的でぎこちないソードバトルが続きます。
後半には兄弟同然の関係だったダメ男とダーレンの対決があり、それなりに盛り上がりそうな展開に微かな期待を抱きました。が、すぐに魔人の横槍が入って中断してしまうのです。せっかく主役がダーレンなのに…こんなの無いよ!(涙
トレジャーハンターが主人公なのに、作品自体が”宝の持ち腐れ”という笑えない洒落をかましたド珍品。同じ香港下積み組のスコット・アドキンスらが主演作を連発する中、ダーレンにも頑張って欲しいのですが…やっぱり難しいのかなぁ?