続・功夫電影専科 -17ページ目

続・功夫電影専科

香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


「80デイズ」
原題:Around the World in 80 Days
中文題:環遊世界八十天/八十日環遊世界
製作:2004年

成龍(ジャッキー・チェン)のハリウッド進出は、彼に新たな名声をもたらしました。しかし、香港とまったく異なる製作環境はジャッキーを困惑させ、さらにコメディ作品への出演が相次いだことで、作風のマンネリ化も深刻になっていきます。
そんな状況への反発として撮られたのが『アクシデンタル・スパイ』です。この作品はハリウッドで要求される凡庸なコメディとは一線を画す内容で、過激なスタントシーンからはジャッキーの対抗意識が見て取れました。
 しかしハリウッドの「いつものやつをやってくれ」という姿勢は変わらず、そればかりか香港との合作である『メダリオン』は大失敗。この状況を重く見たジャッキーは、ハリウッドから距離を置きはじめます。
この『80デイズ』は、彼が一連のゴタゴタでハリウッドから離れる直前に撮った、まさに過渡期の真っ只中にあったころの作品なのです。

■時は華やかなりし開拓と発明の時代。ロンドンの銀行を襲撃したジャッキーは、故郷の村から盗まれた翡翠の仏像を奪還し、警察から逃れようと発明家のスティーヴ・クーガンが住む家に転がり込んだ。
そこで助手となったジャッキーだが、当のスティーヴは奇天烈な発明ばかりしている変わり者。王立科学アカデミーの会長であるジム・ブロードベントとは仲が悪く、口論の末に「80日間で世界一周してみせる」というムチャな賭けをしてしまう。
 実はこの賭けは、警察に追われるジャッキーが一刻も早く故郷に帰るため、ひそかに仕組んだものだった。奮起したスティーヴと彼はイギリスを出発するが、仏像を村から盗んだ黒幕であるジムはすべてを見抜いていた。
この男は仏像を利用した軍事取引を画策しており、取引相手である莫文蔚(カレン・モク)を刺客として差し向ける。一方、フランスに立ち寄ったクーガンたちは画家志望のセシル・ドゥ・フランスと出会い、紆余曲折の末に旅の仲間として迎え入れた。
さまざまな国を渡り歩く一行であったが、いくつもの困難が彼らの前に立ちふさがっていく。刻一刻と期限が迫る中、はたしてクーガンたちは無事に世界一周を成し遂げられるのだろうか?

▲今回もジャッキーがプロデュースに加わっているため、アクションについては上々のボリュームを維持。中国パートでは洪金寶(サモ・ハン・キンポー)や呉彦祖(ダニエル・ウー)も参加しています。
また、リメイク元に倣って大物俳優や芸能人がカメオ出演しており、そうした点も見どころのひとつと言えるのですが…残念ながらそこまで痛快な作品ではありませんでした。
 まず本作最大の問題点は、主人公の人物設定です。本作のジャッキーは故郷のために戦っていますが、人生を左右するような大博打をスティーヴに背負わせ、彼やセシルをプライベートな戦いに巻き込んでいきます。
これで秘密を抱えて苦悩するキャラならまだ理解できますが、ちゃっかりセシルにだけ教えて旅をエンジョイするのですから、感情移入のしようがありません。そのせいか、後半の仲直りするシークエンスはとても雑に見えました。
 そのほかのキャラクターについては、多少の誇張はあれどマトモな感じにまとまっています。しかし頂けないのはラストの締め方で、エンドクレジットにNG集もエピローグも表示されないのです。
NG集がないのは製作が大御所のディズニーなので仕方ない面もありますが、劇中では思わせぶりな台詞がいくつも存在します(画家として成功してやると息巻くセシル、協力してくれた船長に対して「新しい船を買ってやる」という約束などなど)。
 そのため、最後は登場人物たちのエピローグ的なカットが挿入されるのでは…と期待していたのですが、まさか何もないとはガッカリです。作品としては可もなく不可もない作りでしたが、この2点と凄まじい日本語吹替えだけは釈然としなかったですね。
それにしても、今にして思えばシュワちゃんの役どころ(女に目が無くて何人も妻を娶っている権力者)が、なんだかちょっと洒落になってないような気が…(笑

 さて、度重なるハリウッドがらみの失敗に落胆したジャッキーは、香港に腰を据えて新たな演技スタイルを模索し始めます。一連のハリウッド作品において、彼が求められたのは多種多様なアクション“だけ”でした。
ゆえに単なるアクションスターではなく、役者としての地盤を固めなければならないとジャッキーは悟ったのでしょう。本作が公開された同年に、彼はその第一歩となる『香港国際警察/NEW POLICE STORY』に出演。これまでにない熱演を見せます。
 武侠片にチャレンジした『神話』、人情物の『プロジェクトBB』と意欲作を連発したジャッキーは、2007年の『ラッシュ・アワー3』でハリウッドに復帰します。内容は「いつものやつをやってくれ」でしたが、真田広之と熱い演技合戦を見せていました。
そしてその翌年、彼はハリウッド出演作における最大のドリームマッチを実現するに至ります。幾星霜の時を超え、ついに肩を並べることのできた最強武打星の名とは……続きは次回にて!


「シャンハイ・ナイト」
原題:Shanghai Knights
中文題:贖金之王2皇廷激戰/皇家威龍
製作:2003年

成龍(ジャッキー・チェン)の名を全米に知らしめた『ラッシュ・アワー』シリーズは、ハリウッドのスタッフによって製作されたコメディ・アクションの快作でした。
その後、ジャッキーは自らのプロデュースで異なる人種のコンビが活躍する、違ったアプローチの映画を考案します。それが白人俳優のオーウェン・ウィルソンを相棒に迎えた『シャンハイ・ヌーン』だったのです。
 彼が大きく関わったことにより、この作品は古き良き西部劇にオマージュを捧げつつも、『ラッシュ~』よりカンフー色の強いアクションを構築。ややインパクトには欠けますが、こちらも上々の成績を記録しました。
注目すべきはラストの2連戦で、今やすっかりジャッキー映画の常連となった于榮光(ユー・ロングァン)、スタントマンとして数々の格闘映画に関わったロジャー・ユアンと夢の対決が実現しています。
相棒となるオーウェンの飄々としたキャラ、最後のちょっとしたサプライズも実に痛快で、当然のように続編が作られる事となりました。それが『シャンハイ・ナイト』であり、今回もナイスな対戦相手とサプライズが待っていたのです…(詳しくは後述)。

■中国・紫禁城の宝物殿から、皇帝の権威の象徴とされる秘宝・龍玉が盗まれた。その際に番人であったジャッキーの父・陳錦湘(キム・チャン)が殺され、アメリカで保安官となっていたジャッキーは思わぬ訃報に落涙するのだった。
この事件は、英国王室の皇位継承者であるエイダン・ギレンの企みであり、ジャッキーは仇討ちに向かった妹の范文芳(ファン・ウォン)を追って、落ちぶれていたオーウェンと共にイギリスへ向かった。
 道中、スコットランドヤードのトム・フィッシャーや、浮浪児のアーロン・ジョンソンと出会いつつ、事件の真相に近付いていくジャッキーたち。やがて、この事件には中国皇帝の座を狙う甄子丹(ドニー・イェン)も一枚噛んでいたことが判明する。
自らが皇位継承者のトップに躍り出ようとするエイダンは、龍玉を渡す代わりに甄子丹へ他の継承者たちと王女の暗殺を指示。范文芳をスケープゴートに仕立て上げ、全てを闇に葬ろうと目論んだのだ。
だが、アーロンの協力で危機を脱したジャッキーたちは、一丸となって暗殺計画の阻止に乗り出した。今、華やかな記念式典でにぎわうテムズ川を舞台に、最後の戦いの幕が上がる!

▲前作は西部劇のテイストを色濃く残していましたが、本作ではロンドンを舞台にした活劇仕立ての内容となっています。一部にミュージカルや喜劇映画のオマージュもあり、それが後半のサプライズ的な展開へと至るのです。
ただ、今回のサプライズは色々と盛り込み過ぎていた感があり、製作側のドヤ顔が透けて見えてしまいました。アーロンの本名も最後の最後に判明した方が、もっと観客を驚かすことが出来たはずです。
 また、今回のストーリーは西部劇の要素がごっそりと省かれています。そのため、前作のラストで判明したオーウェンの正体が死に設定となり、活躍の場も激減していました(彼がガンマンらしいスキルを見せるのは終盤の乗馬シーンぐらい)。
もっとも、今回のオーウェンは完全にギャグ担当となっており、クリス・タッカーと違ってアクションに介入する事すら許されていません。おかげで楽しいシーンも多いので、こればかりは仕方ないと割り切るしかないでしょう。
 しかし『ラッシュ~』の主役2人があくまでバディだったのに対し、本作の主役2人はコンビという垣根を飛び越えた友達同士であり、喧嘩をしてもすぐ仲直りできる関係には微笑ましさを感じます。
ところで、この2つの作品における主役関係の変化ですが、なんとなく『蛇拳』『酔拳』の変遷を彷彿とするのは私だけでしょうか?(『蛇拳』では師匠と弟子が友達同士、『酔拳』は師匠と弟子の関係を徹底、という具合に逆となってますが)

 さて、功夫アクションについては今回も趣向を凝らしていて、先述したサプライズ関連の前振りとなるサイレント映画調の立ち回り等、見所は随所にあります。
しかし最大の見せ場は、なんといってもワイヤー功夫片で慣らした甄子丹とのドリームマッチに尽きるでしょう。彼はジャッキーとの初共演に緊張していたのか、演技面やアクションに硬さが見受けられました。
 それでも、終盤におけるジャッキーアクションとマッハカンフーの激突は、ハリウッドのジャッキー作品としては中々の出来。残念ながら彼との絡みは一度だけで、尺もそれほど長くないのが惜しまれます。
その後に待ち受けるVSエイダンも、甄子丹の迫力に押されがちですが悪くはありません(吹替えスタントも多々ありますが)。のちにジョン・シナとも戦うエイダンの動きはそこそこ流暢で、それなりに強敵感も出ていたと思いますね。
 そんなわけで、作品自体は相変わらず平々凡々ではあるものの、その賑やかな作風からは「ジャッキーもハリウッドに順応しつつあるのでは?」という希望をほのかに感じさせてくれます。
ハリウッドもそんなジャッキーを認めるようになり、彼に大物俳優が多数登場するオールスター作品の主演を任せようとしますが……詳細は次回にて!


「ラッシュ・アワー」
原題:Rush Hour
中文題:火[才并]時速
製作:1998年

▼90年代末期、一本の香港映画がアメリカで上映されました。極東から持ち込まれたその作品は、激しい格闘シーンと命知らずのスタントで観客を魅了し、全米興行収入記録で香港映画初となる初登場1位を記録します。
その作品の名は『レッド・ブロンクス』。主演を務めた孤高のドラゴンは、この成功を足掛かりに映画の都・ハリウッドへと乗り込むのですが、行く手には様々な困難が待ち構えていました……。
 と、いうわけで皆さん明けましておめでとうございます。今年は以前告知した通り、ブログ開設10年目にちなんで10の特集をお送りする予定です。その第1弾となる今月は、成龍(ジャッキー・チェン)がハリウッドで出演した作品群に着目してみましょう。
これらの作品は香港で撮った主演作と比べると、アクションやテンポに著しい差が見られます。そのため評価が低くなりがちで、実際に私も「ヌルいなぁ」とボヤきながら見ていた事もありました(汗
しかしジャッキーが世界的なスターになれたのは、間違いなくこの時期の作品があったからこそ、とも言えるのです。果たしてハリウッドで製作されたジャッキー映画は凡作か否か? 今回の特集では、そのへんも含めて色々と考察したいと思います。

■中国返還の前夜、香港警察のジャッキーは“ジュンタオ”と呼ばれる黒幕が率いる組織を急襲。盗まれた文化財を見事に奪還し、アメリカの中国大使館で領事に就任するツィー・マや、その娘であるジュリア・スーとささやかな談笑を交わした。
所変わって二カ月後のアメリカ。そのジュリアが誘拐される事件が起こり、FBIが捜査に乗り出した。しかし、「私の知人にも協力してもらいたい」というツィーの意見により、香港からジャッキーが招集されることになる。
 FBIは部外者の介入を快く思わず、ロス市警から適当なお目付け役を駆り出し、事件に関わらないように監視させようと目論んだ。その白羽の矢を立てられたのが、一匹狼のトラブルメーカーであるクリス・タッカー刑事だった。
厄介払いも同然のかたちで任務を押し付けられたクリスは、正反対の性格であるジャッキーとことごとく対立。やがて2人は事件の捜査に乗り出し、その過程で徐々に距離を縮めていく。
 敵が“ジュンタオ”の組織だと判明する中、2人はあと一歩のところで犯人一味を取り逃がしてしまう。結果的に身代金の引き渡しは失敗し、責任を問われたクリスは捜査から外され、ジャッキーもまた帰国の途へ着くことに…。
しかしクリスは諦めていなかった。同僚である爆破処理班のエリザベス・ペーニャの協力を仰いだ彼は、ジャッキーを引き止めて再び捜査に舞い戻る。果たしてジュリアの安否は? そして“ジュンタオ”の正体とは? 今、最後の戦いの幕が上がった!

▲この当時、ジャッキーはスタント方面に特化したアクションを追求しており、ガチンコバトルを繰り広げた80年代の頃とは違った魅力に満ちていました。
そんな中で製作された本作ですが、ストーリーは典型的なバディものの域を出ておらず、アクションの質はジャッキー映画の平均的なレベルに留まっているのです。
 良くも悪くも安全牌といった感じの出来で、これでは香港時代を知るファンから不満の声が上がるのも仕方ありません。とはいえ、改めて見てみるとストーリーにこれといって不備はなく、伏線回収や起承転結もしっかりしています。
アクションはジャッキー、口八丁はクリスという役割分担も絶妙で、クリスの立ち回りは相方の邪魔にならない程度に調節。反対にジャッキーはクリスが積極的に関われないシリアスなドラマを担っています。
この2人のバランスは続編で崩れることになりますが、本作はバディものとして手堅く纏まっていました。確かに典型的ではあるものの、内容は安定していたと言えるでしょう(悪役に関してはツッコミどころ満載ですが・苦笑)。

 また、アクションについても香港式の殺陣が炸裂し、おなじみの小道具を使った立ち回りも楽しめます。撮影現場ではハリウッドのキツい制約に苦しめられたそうですが、それでも可能な範囲で出来うることをやったジャッキーの執念が伺えます。
しかしスタントに関しては壁面を登ったり、看板にぶら下がったりするシンプルなものが多く、『ナイスガイ』のように豪邸一件を潰すような無茶は流石にしていません。
終盤ではドカンといきそうなC4爆薬を爆発させず、最後のスタントが高所で落ちそうになるだけ(ラストの落下はワイヤー使用)なので、ド派手な香港のジャッキー映画に慣れた身としては物足りなさを感じてしまいました。
 さらに追い打ちをかけるのが、最後にタイマン勝負が無いという点です。当時のジャッキーがスタントに傾倒していたのは先述したとおりで、同時期の『レッド・ブロンクス』『ナイスガイ』ではラストバトルすらありません。
そうしたジャッキーの意向が反映されたのかは解りませんが、本作には最後の一騎打ちと呼べるような戦いは無く、それらしいのは中盤のVSケン・レオンのみとなっています。
 作品の質は悪くないですが、小振りなスタントとガチンコ勝負の不足、そして意外性のないストーリーは好みが分かれるところ。おそらく拳シリーズを劇場で見た直撃世代の人にとっては、とても評価が難しい作品なのではないでしょうか。
ただ、ハリウッドスターとしてのジャッキーの礎を築いた作品なのは事実だし、今こそ再評価すべき時なのでは…と私は考えています。さて次回は“ガチンコ不足”の問題を解消し、ハリウッドにおけるもう1つの看板シリーズとなった作品に迫ります!


天使狂龍
英題:Angel's Project
製作:1993年

●香港で黒社会の抗争事件が発生し、香港警察の刑事たちは武器の密輸現場に張り込んでいた。そこに女ヒットマン・林美鳳マーク・ホートンが現れ、壮絶な捕り物の末に林美鳳が逮捕される(ちなみにマークは海に落ちてフェードアウト)。
この女はマレーシアの犯罪組織に属しており、身柄引き渡しのために胡慧中(シベール・フー)と李賽鳳(ムーン・リー)が同行する事となった。しかし引き渡しの直後に林美鳳は逃走し、組織を裏切って行方をくらましてしまう。
 胡慧中たちは逃走騒ぎの際に、組織の一員である黎強權(ベニー・ライ)を逮捕するが、どうも彼はマレーシア警察の刑事部長・龍方(ロン・ファン)と繋がりあるらしい。そこで2人の女刑事は、強引に黎強權を捕まえて事情を聞き出そうとした。
これに反発した彼は逃走を目論み、カーチェイスで負傷した李賽鳳が一時離脱することに。なんとか黎強權を捕まえた胡慧中は、林美鳳を追って密林に分け入っていく。
 この黎強權という男、組織の情報が記録されたディスクを持って逃げた林美鳳の仲間であり、彼女は山間部の集落に立ち寄って汽車で逃げる予定だという。
2人は珍道中の末に駅へと到着するが、一足先に現れた組織の手によって林美鳳は死亡。黎強權も組織から消されそうになり、その危機を救った胡慧中は思いもよらぬ真実を告げられる事となる。
 実は黎強權の正体は組織に潜入していた捜査官…に見せかけた二重スパイ。組織と結託している不穏分子=龍方を炙り出すため、ディスクを入手しようとする特殊部隊の隊員だったのだ。
胡慧中は敵に監視されていた李賽鳳を助け出し、黎強權も龍方にディスクを渡したうえで自らの死を偽装。まんまと相手の目を欺いた3人は、特殊部隊を引き連れて麻薬工場へと攻め込んでいく。今、マレーシアの密林で最後の戦いが始まった!

 本作は『天使行動』のヒット以降、数えきれないほど製作されたレディースアクションの1つです。主演は女ドラゴンとして絶頂期にあった胡慧中と李賽鳳の両名で、珍しく『九龍の眼』の黎強權が善玉(しかも主役級)という点にも目を引かれます。
このレディースアクションというジャンルですが、ハードなアクションが楽しめる一方で問題点も幾つかありました。主演女優のチャーミングな魅力を蔑ろにし、安易に無茶なスタントを強いる等々……『群狼大戦』はそうした悪しき例の代表といえるでしょう。
 しかし本作では、そうした難点の解消に取り組んでいるのです。主演の2人は越境捜査上等の快活な女性で、笑えるシーンを随所に配置。往年の功夫スターである金童(クリフ・ロク)をゲスト出演させ、女闘美以外の見せ場を拡充しようとしました。
クライマックスでは端役である特殊部隊の隊員にも活躍の場を与え、無味乾燥な作品にならないように趣向を凝らした本作。ところが、こうした意欲とは裏腹に作品自体は成功しておらず、実にショボい内容となっているのです。

 まず主演の2人を明るいキャラにさせたはいいものの、これによりキャラクターが被るという問題が発生。笑えるシーンでは胡慧中が失禁するという下品な描写があり、視聴者をドン退きさせてしまいます。
金童もVSマーク・ホートン戦は良かったのに、何故か警察を裏切って速攻で惨殺という結果に。クライマックスでは特殊部隊が出しゃばるせいで、胡慧中たちの活躍が減るという悪循環も起きていました。
 と、このように全ての創意工夫が裏目に出てしまっている本作ですが、アクション面はそれなりの質を保っています。しきりに対戦相手をチェンジするファイトシーンや、定番の爆破スタントも見応えバッチリ。こちらは及第点の出来です。
ただし先述したマイナス要素が大きく、おなじみのカーチェイスもやや地味め。ラストでは胡慧中&李賽鳳VS敵ボスの張炳燦、黎強權VS龍方の2大バトルが展開されるも、途中で中断して腰砕けの結末を迎えていました。
それなりにヒネった様子が窺えますが、そのほとんどが中途半端になってしまった悲劇の作品。ところで本作の黎強權、オープニングでは黎威、武術指導では黎權という変名になっているのは何故なんでしょうか?


「カンフー・シスター/麗竜拳」
原題:師妹出馬/奪命女羅刹
英題:The Woman Avenger/Fatal Claws, Deadly Kicks
製作:1980年

夏光莉陸一龍は仲睦まじい夫婦であったが、覆面姿の強盗団に襲撃を受けてしまう。夫を殺され、自らも暴行された夏光莉はどうにか一命を取り留めるも、その胸の内には無念さと怒りが渦巻いていた。
助けてくれた尼僧は「復讐など止めなさい」と諌めるが、彼女の悲痛な訴えを聞いて龍拳を伝授することに。それから3年後、厳しい修行に耐え抜いた夏光莉は尼僧と別れ、たった1人で強盗団への仇討ちに乗り出すのだった。
 男性に変装し、悪漢に襲われていた史亭根を弟子に迎え入れた彼女は、間借りした道場の主・王圻生に疑いの目を向ける。案の定、彼とその息子である茅敬順は強盗団の一員であり、夏光莉は危険が及ばないようにと史亭根を逃がした。
茅敬順を、初老の何興南を、槍使いの王圻生を次々と仕留めていく夏光莉。しかし敵も黙ってはおらず、続いて戦った鍼の名手・張紀平は彼女を容赦なく追い詰めていく。
 もはやこれまでかと思われたその時、謎の女拳士・劉珊が助けに入った。彼女は強盗団の首領・彭剛(ペン・カン)によって父である余松照を殺され、自らも片脚を砕かれたという壮絶な過去の持ち主だった。
夏光莉は劉珊から秘伝の足技を教わり、再び襲いかかってきた張紀平へのリベンジに成功する。だが、最後に立ちはだかった彭剛は恐ろしく強く、自慢の龍拳もこの男にはまったく歯が立たない。
壮絶な死闘の果てに、彼女が見たものとは…!?

 またしても前回に続いて更新の間隔が一ヶ月以上も空いてしまい、本当に申し訳ありません。コメントの返信もお待たせしてしまっているので、今後はなんとか以前のペースに戻すよう心掛けたいと思います。
さて、今回は前回に引き続いて再び李作楠(リー・ツォーナン)の監督作をピックアップしてみましょう。本作は『南北腿王』と同様に主演を夏光莉が、ラスボスを彭剛が担当。今回も見事な功夫アクションで作品を彩っていました。
 ただし作品としては、賑やかなコメディだった『南北腿王』とは趣向を変えており、血生臭い辻斬りの旅がこれでもかと展開。そのテイストはどちらかというと茅瑛(アンジェラ・マオ)の『破戒』に近い物を感じます。
コメディ功夫片が全盛を極めていた当時としては異質なタイプの作品であり、ストーリーも史亭根の扱いが非常に雑だったりと、練り込み不足な印象を受けてしまいました。

 一方、ことアクションに関しては素晴らしい出来となっており、高度な立ち回りがこれでもかと続出! どうやら今回の李作楠監督はストーリーに拘らず、夏光莉のポテンシャルを生かす事に集中していたようです。
本作のアクションはジャッキー映画の影響が強く、コミカルな動作で攻撃を避けていく主人公の姿にはデジャブを感じてしまいます。武術指導が『笑拳』に出演した経験のある彭剛なので、このテイストは恐らく狙ったものなのでしょう。
 しかし単なるジャッキーの模倣で終わっていないのが本作のいいところ。しなやかな動きを得意とする夏光莉の長所を上手く引き出しており、その柔軟性に富んだアクションの数々は、ジャッキーでさえ舌を巻きそうな内容に仕上がっていました。
強盗団との戦いはどれも質が高く、ラストバトルでは龍拳が通じない相手に足技で立ち向かうも、相手がさらに奥の手を出してくるというスリリングな展開が繰り広げられています(最後の凄まじいキック連打は必見!)。
奥深いストーリーや趣向を凝らしたギミックこそ無いものの、迫力のアクションシーンで攻めてくる正統派の逸品。…う~ん、やっぱり功夫片時代の李作楠作品はイイなぁ(笑顔