
天使狂龍
英題:Angel's Project
製作:1993年
●香港で黒社会の抗争事件が発生し、香港警察の刑事たちは武器の密輸現場に張り込んでいた。そこに女ヒットマン・林美鳳とマーク・ホートンが現れ、壮絶な捕り物の末に林美鳳が逮捕される(ちなみにマークは海に落ちてフェードアウト)。
この女はマレーシアの犯罪組織に属しており、身柄引き渡しのために胡慧中(シベール・フー)と李賽鳳(ムーン・リー)が同行する事となった。しかし引き渡しの直後に林美鳳は逃走し、組織を裏切って行方をくらましてしまう。
胡慧中たちは逃走騒ぎの際に、組織の一員である黎強權(ベニー・ライ)を逮捕するが、どうも彼はマレーシア警察の刑事部長・龍方(ロン・ファン)と繋がりあるらしい。そこで2人の女刑事は、強引に黎強權を捕まえて事情を聞き出そうとした。
これに反発した彼は逃走を目論み、カーチェイスで負傷した李賽鳳が一時離脱することに。なんとか黎強權を捕まえた胡慧中は、林美鳳を追って密林に分け入っていく。
この黎強權という男、組織の情報が記録されたディスクを持って逃げた林美鳳の仲間であり、彼女は山間部の集落に立ち寄って汽車で逃げる予定だという。
2人は珍道中の末に駅へと到着するが、一足先に現れた組織の手によって林美鳳は死亡。黎強權も組織から消されそうになり、その危機を救った胡慧中は思いもよらぬ真実を告げられる事となる。
実は黎強權の正体は組織に潜入していた捜査官…に見せかけた二重スパイ。組織と結託している不穏分子=龍方を炙り出すため、ディスクを入手しようとする特殊部隊の隊員だったのだ。
胡慧中は敵に監視されていた李賽鳳を助け出し、黎強權も龍方にディスクを渡したうえで自らの死を偽装。まんまと相手の目を欺いた3人は、特殊部隊を引き連れて麻薬工場へと攻め込んでいく。今、マレーシアの密林で最後の戦いが始まった!
本作は『天使行動』のヒット以降、数えきれないほど製作されたレディースアクションの1つです。主演は女ドラゴンとして絶頂期にあった胡慧中と李賽鳳の両名で、珍しく『九龍の眼』の黎強權が善玉(しかも主役級)という点にも目を引かれます。
このレディースアクションというジャンルですが、ハードなアクションが楽しめる一方で問題点も幾つかありました。主演女優のチャーミングな魅力を蔑ろにし、安易に無茶なスタントを強いる等々……『群狼大戦』はそうした悪しき例の代表といえるでしょう。
しかし本作では、そうした難点の解消に取り組んでいるのです。主演の2人は越境捜査上等の快活な女性で、笑えるシーンを随所に配置。往年の功夫スターである金童(クリフ・ロク)をゲスト出演させ、女闘美以外の見せ場を拡充しようとしました。
クライマックスでは端役である特殊部隊の隊員にも活躍の場を与え、無味乾燥な作品にならないように趣向を凝らした本作。ところが、こうした意欲とは裏腹に作品自体は成功しておらず、実にショボい内容となっているのです。
まず主演の2人を明るいキャラにさせたはいいものの、これによりキャラクターが被るという問題が発生。笑えるシーンでは胡慧中が失禁するという下品な描写があり、視聴者をドン退きさせてしまいます。
金童もVSマーク・ホートン戦は良かったのに、何故か警察を裏切って速攻で惨殺という結果に。クライマックスでは特殊部隊が出しゃばるせいで、胡慧中たちの活躍が減るという悪循環も起きていました。
と、このように全ての創意工夫が裏目に出てしまっている本作ですが、アクション面はそれなりの質を保っています。しきりに対戦相手をチェンジするファイトシーンや、定番の爆破スタントも見応えバッチリ。こちらは及第点の出来です。
ただし先述したマイナス要素が大きく、おなじみのカーチェイスもやや地味め。ラストでは胡慧中&李賽鳳VS敵ボスの張炳燦、黎強權VS龍方の2大バトルが展開されるも、途中で中断して腰砕けの結末を迎えていました。
それなりにヒネった様子が窺えますが、そのほとんどが中途半端になってしまった悲劇の作品。ところで本作の黎強權、オープニングでは黎威、武術指導では黎權という変名になっているのは何故なんでしょうか?