
「Zero WOMAN II 警視庁0課の女」
製作:1995年
●今回の特集において、香港で製作されたポルノ映画を一括して三級片と呼称していますが、そもそも三級片とは成人指定された映画全体を指す用語であり、その中には猟奇的な犯罪映画なども含まれます。
90年代の三級片ブームは、そうしたエロス&バイオレンスが咲き乱れた狂乱のムーブメントで、『八仙飯店之人肉饅頭』『先天性獣欲魔』などの問題作が続々と登場。他の国には決して真似のできない、行き過ぎたボルテージの作品が頻出しました。
一方、日本でも同時期に起きたVシネマの流行によって、同じエロス&バイオレンスを売りにした作品が数多く生まれています。さすがに香港映画の過剰なテンションには敵わないものの、内容の奔放さでは負けていません。
今回は特集の都合上、エロスのみに着目しますが、90年代は女優たちが体当たりの演技を見せるエロティック・アクションが流行。『XX(ダブルエックス)』や『82分署』、そして本作を内包する『Zero WOMAN』シリーズがレンタル店の棚を占領しました。
本作は『Zero WOMAN』の第2弾となる作品で、主演は前作の飯島直子から小沢なつきに交代。ストーリーは十億円分の株券を巡り、悪徳刑事の菊池孝典や暴力団が抗争を繰り広げるというものですが、ハードボイルド風の演出には時代を感じてしまいます。
また、主人公は特命を帯びた敏腕刑事という設定なんですが、やたらとドジを踏むので説得力を欠いています。初っ端から満身創痍のヤクザに不意打ちを食らうわ、何度も後ろを取られるわ、張り込みで居眠りして銃をポロっと落とすわ…ってオイ!
最後の苦い結末も、そこへ至る経緯がかなり強引かつグダグダしており、物語の完成度には難があります。しかし、本作には日本に上陸して間もないころのケイン・コスギが参加していて、アクションシーンの底上げに貢献していました。
本作のケインは脇役(菊池の愛人・岩間さおりの弟)であり、小沢とはラストバトルでようやく絡む程度の役柄なんですが、アクション担当として大々的に活躍。出てくると必ず立ち回りかスタントのどちらかを披露し、派手な回し蹴りを見せてくれます。
注目はラストのタイマン勝負で、暴力団の親分・団時朗を守る腹心が立ちはだかり、激しい格闘戦が勃発するのです。この腹心を演じているのは豊嶋稔という人物で、あの清水宏次朗とも互角に渡り合った本格派。本作でも鋭い足刀でケインに迫っていました。
この対決はなかなかの好勝負ですが、決着後に現れた菊池がケインと岩間を射殺し、先述した残念なラストへと至ります。菊池は『修羅の黙示録』でも格闘戦を見せていたので、アクションを見せるかと期待したんだけどなぁ…(涙
と、そんなわけで今月は香港映画の三級片と、セクシー系のVシネマにスポットを当ててみました。どちらのジャンルも通常のアクション映画とは一線を画す存在であり、レンタルショップからVHSが撤去された現在、あまり出会える機会がありません。
そこで今回の特集にあたり、なるだけ詳細を書き留めておこうと思ったのですが、著名なアクションスターたちの知られざる激闘、ポルノだからこそ成し得た過激な演出など、多くのサプライズを体験できました。
三級片は私にとって未開の領域であり、金剛(カム・コン)が出演しているとされる『淫邪王/デーモン・ウォリアーズ』など、気になる作品はまだまだ存在します。今後はこうしたジャンルの作品も、分け隔てなく紹介していければ…と考えています。
なお、今回の特集は映像を快く提供して下さった某氏のご厚意により、無事に完走することができました。誠に僭越ながら、この場を借りてお礼を申し上げたいと思います。このたびは本当にありがとうございました。
それでは功夫電影秘宝館、今日の所はこれにて……(特集、終わり)