
「ダブルX」
「DOUBLE X」
製作:2013年
●学生時代から喧嘩に明け暮れ、暴力団兼成会のトップにのし上がった2人の侠客がいた。彼らは島田組の幹部によって罠に嵌められ、最終的に逆襲を果たすが相打ちとなる。残された侠客の息子たちは手を取り合い、協力して生きていく事を誓った。
時は流れて8年後…息子たちは藤田佳秀と渡名喜忠信に成長し、ともに育った留川真帆とトリオを結成。普段は弱気な虐められっ子を演じているが、ひとたび依頼を受ければ無敵の実力を発揮する“ダブルX”として活躍していた。
一方、巷では“ブラック・ベレー”と名乗る集団が不良集団のトップを誘拐し、時には無関係な一般人までもが犠牲となっていた。彼らの目的は臓器密売と人身売買で、捕まった面子の中には不敵なレディース・みろの姿もあるのだが…。
そんなある日、ダブルXの窓口である留川のもとに謎の少女・りおが現れる。彼女が持ち込んだ依頼はブラック・ベレー絡みの案件で、警察沙汰にもなりかねない危険なヤマだった。
それでも事態の収拾に動くダブルXの2人だったが、今度は留川とりおが捕まってしまう。敵が因縁の宿敵・島田組の関係者と判明する中、敵地に潜入したダブルXはラストバトルに挑む!
『クローズZERO』から始まった不良映画のムーブメントも、6年という歳月の中で徐々に沈静化していきました。しかし一過性の流行として消えず、次第に1つのジャンルとして定着していく事となります。
二代目ギャバンが主演した『バトル・ソクラテス』、宮坂武志が監督した同名シリーズとは無関係な『タイマン』系列、擬斗番長こと高瀬将嗣による『昭和最強高校伝 國士参上!!』などなど…近年だけでもこれだけの作品が作られています。
一方、ブームの初期から不良映画を撮り続けてきた佳本周也監督も、後発作品に負けじとヤンキーアクションを量産。変化球から正統派、硬派なものから今回のような軟派な作品に至るまで、様々なタイトルを手掛けました。
本作は一見ダメそうな奴が実は…という、不良ものでは定番のネタを扱った作品です。演出については最近の若者向けドラマの演出を取り入れたらしく、漫画チックな登場人物が大袈裟なリアクションを取り、明るく砕けた作風になるよう工夫されています。
しかし、この試みはあまり成功しているとは言えず、オーバーアクトのせいで一部の台詞が聞き取りづらくなっていました。また、主人公たちが何故ダブルXとして活動しているのか説明されないため、個人的にはちょっとノリきれなかったですね。
アクション面においても、ダブルXがどれほどの実力者なのか解り辛い構成となっています。最初の依頼では戦闘シーンが丸ごと省略され、その次のBETTANA!!たちと戦うシーンもごく僅か。2人のまともな殺陣は30分を過ぎないと見ることが出来ません。
今回は留川やりおはアクションを見せず、ラストで戦うのは藤田&渡名喜とみろの3人だけ。ゆえにボリューム不足を感じますが、敵としてクレイジーな崇岡白やカラコンを入れた3人組が立ちはだかり、それなりの肉弾戦を披露していました。
ダブルXの設定をもっと明確にして、アクションシーンを充実させていれば傑作になり得たかもしれない一本。ちなみにラストは続編を匂わせるものとなっていますが、残念ながら今のところ続編は作られていないようです。
さて、これまで佳本監督は不良というテーマに向き合い、ただひたすらにヤンキーアクションを撮り続けました。そのバイタリティは凄まじく、単にブームに便乗しただけではない気概を感じさせます。
そんな佳本監督の特集も次回でいよいよクライマックス。ラストは不良映画に伝説のドラゴンをドッキングした、奇想天外なアクション増しの作品を紹介したいと思います!