『ジミー・ウォング/シーマンNo.7・波止場のドラゴン』 | 続・功夫電影専科

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「ジミー・ウォング/シーマンNo.7・波止場のドラゴン」
「シーマンズNo.7・波止場のドラゴン」
原題:海員七號
英題:Seaman No. 7/Wang Yu's 7 Magnificent Fights
製作:1973年

▼なんだかんだで今年も残り少なくなってきましたが、当ブログで年末といえば王羽(ジミー・ウォング)!というわけで、今回は前々から気になっていたジミー先生の主演作を紹介してみましょう。
私がこの作品を知ったのは、今から10年以上も前…とある映画レビューサイトを拝見したことが切っ掛けでした。このサイトは既に閉鎖していますが、大量のB級映画をつぶさに紹介していて、ジミー先生の作品も豊富にあったことを覚えています。
 しかし、その大半が輸入しなければ見ることの出来ないマイナータイトルで、当時学生だった私は「見たいなぁ」と思いつつ同じ記事を何度も読んでいました。
その結果、影響を受けて王羽のことをジミー先生と呼ぶようになったりしましたが(苦笑)、特に目を惹かれたのが『海員七號』こと『波止場のドラゴン』だったのです。

■物語は、船員だったジミー先生が日本人の船員とケンカになり、その勢いで仲裁に入った人を殺害?してしまう場面からスタート。やむなく密航することになった彼は、停泊していた船に乗り込んで台湾から脱出した。
実はこの船には先の日本人たちが乗っており、見つかったジミー先生は「命が惜しけりゃ俺たちの仲間に手紙を渡せ」と迫られ、神戸で幹部の韓英傑(ハン・インチェ)と接触する。
 彼らは田俊(ジェームズ・ティエン)率いる悪の組織のメンバーで、勧誘を受けたジミー先生は果敢にもこれを跳ねのけ、京都にいる甥の李昆(リー・クン)の元に向かった。
そして、李昆が滞在する家の主人・田豐(ティエン・ファン)に気に入られたジミー先生は、この家に居候する事となる。彼は田豐の娘・衣依(マリア・イー)、知り合った潤まり子らと親睦を深めるが、田俊たちの魔手は確実に忍び寄ってきていた。
やがて田俊はジミー先生の居場所を探り当て、李昆たちが犠牲となってしまう。怒りに燃える彼は、衣依の婚約者・金山といっしょに組織の本拠地へ向かう!うなる田俊の鎖鎌と、冴えるジミー先生のサイ…勝つのはどっちだ!?

▲飄々とした粋な主人公、日本でのロケーション、命懸けのスタント、そしてストレートな勧善懲悪の物語…。先のサイトではそのように紹介されており、私はいつか本作を見たいと切に思っていました。
それから幾星霜、樂貿影視からの電撃リリースと日本版DVDの発売により、とうとう念願の視聴を果たしたのです! まさに万感迫る想いとはこの事でしょうか(涙
とはいえ、実際の作品はいささかテンションの低い物であり、期待しすぎていた反動も大きかったのか、それほどの快作には感じませんでした。
 そもそも本作は『冷面虎 復讐のドラゴン』と2本撮りで製作されています。『冷面虎』は李小龍(ブルース・リー)の新作として予定されていた作品で、彼に主演を断られたためにジミー先生が登板した、という複雑な事情を抱えています。
一方は曲がりなりにも李小龍の主演作として企画された物、もう一方はそのついでに撮影された物…監督の羅維(ロー・ウェイ)がどちらに本腰を入れていたかは、実に明々白々といえるでしょう。

 監督の脱力っぷりはかなり露骨で、ストーリーライン(地元でヤンチャした主役が世話になった人を殺されて戦う)やキャスティングが『ドラゴン危機一発』からの流用、明らかにやる気のない演出からも如実に伝わってきます。
特に問題なのが登場人物たちの倫理観で、殺人を犯してしまったジミー先生に対して、周囲の人々は動揺するどころか「よくやった!」と褒めたり、華麗にスルーを決めこんだりするのです。いくらなんでもコレはなぁ…。
 特に目標もなくフラフラとしているジミー先生、ストーリーに全く絡まない鈴木正文(!)なども大概ですが、アクションシーンは悪くありません(武術指導は韓英傑が兼任)。
前半は大味な立ち回りが多く、売りとなっている水中でのアクションも面白みに欠けます。ブーストがかかってくるのは後半からで、走行するトラックの荷台での戦いや爆笑必至のVS相撲取り、最期のVS田俊はなかなかの迫力でした。
全体的にボチボチ止まりではあるものの、私にとっては深い思い入れのある本作。ここまで来たら『冷面虎』の方も見ておきたいですが、李小龍に逃げられた羅維がどれほど気合を保っているのか、ちょっと心配です(爆