『キック・ファイター』 | 続・功夫電影専科

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香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


「キック・ファイター」
原題:FULL CONTACT
製作:1992年

▼マーシャルアーツ映画にとって、90年代はまさに最盛期といえる時代でした。この時期で有名なのはジャン=クロード・ヴァン・ダムスティーブン・セガールドルフ・ラングレンの3人でしょう。彼らのエピゴーネンも数多く生まれ、とりわけポスト・ヴァンダムを狙う俳優は無数に存在します。
今回紹介するジェリー・トリンブルは、そういった者たちの1人でした。キックボクシングの使い手である彼は、自慢の足技を武器に次々と主演作を連発。一時は落ち込んでいましたが、スティーブ・オースティン主演最新作『マキシマム・ブロウ(The Package)』で、久々に格闘映画への出演を果たしています。
本作は、ジェリーがロジャー・コーマンのお抱え監督?であるリック・ジェイコブソン(『ザ・ヴァンプハンター』『オーバーヒート・プリズン』もこの人の仕事)とコラボした作品で、闇ファイトに挑もうとする青年の戦いを描いています。

■ジェリーは離れて暮らしている兄を探して、ロサンゼルスのダウンタウンを訪れていた。だが、あるチンピラから兄が闇ファイトの選手として活躍していたこと、そして何者かに殺されたことを知らされる。
兄の死に悲しむジェリーは、犯人が闇ファイトの関係者であると確信する。そして彼は闇ファイトに参加して真犯人を探すべく、コーチのマーカス・オーリアスと手を組み、厳しいトレーニングに身を投じていく。十分な実力を身に付け、いよいよ血みどろの戦いに挑戦するジェリー。だが、事件の黒幕は意外な場所に潜んでいた…。

▲まずアクションについてですが、こちらはボチボチの出来でした。本作には例によって本物の格闘家が多数参加しており、いきなり序盤からゲイリー・ブランク(キックの世界王者。現在は自身の道場で養秀会空手を指導)とハワード・ジャクソン(『懲罰』で山下タダシと対戦)が火花を散らします。
中盤では、ジェリーがキックボクシング世界ウェルター級王者のアルビン・ブローダーと死闘を繰り広げ…るんですが、やはり本物を起用したからといって凄いアクションが撮れるわけではありません。ラストバトルの展開についても、賛否が分かれるでしょうね。

 しかしそんなアクション部分より、もっと問題なのがストーリーです。先述のあらすじの続きですが、闇ファイトに出場したジェリーは試合中に兄殺しの目撃者と思われる男を発見し、マーカスに後を追うよう頼みますが、その男は自宅で惨殺されているところを発見されます。
その後、一緒に出場した友人が準決勝で最大の強敵の噛ませ犬にされて再起不能に。決勝に臨んだジェリーは、そこで真犯人の正体を知るのですが……。そう、ここまで書けばご存知の方はピンときたでしょう。本作はドン・ウィルソン主演作『Bloodfist』のストーリーと瓜二つなのです!
 この他にも、主人公と恋仲になるのが友人の妹でストリッパー、目撃者を発見した際に主人公が闘っていた相手が黒人格闘家、友人を倒した強敵が太めの巨漢ファイター、そして真犯人の正体と戦いの結末など、単なる偶然では片付けられないほどの類似点が見当たります。
なぜこんなことになったのか真相は不明ですが、少なくとも全体の出来と予算は『Bloodfist』が、アクションとユーモアなら本作に分があったと思います。なお、本作には下積み時代のマイケル・ジェイ・ホワイトが出演していますが、ただの脇役(アクション無し)なので期待しないように。