
「プロジェクトD」
「燃えよデブゴン9」
原題:醒目仔蠱惑招/肥龍功夫精/功夫精
英題;The Incredible Kung Fu Master
製作:1980年(79年・81年説あり)
▼やはり洪金寶(サモ・ハン・キンポー)は凄い、と改めて感じた作品である。本作が作られた当時、香港映画界ではコメディ功夫片が大流行しており、大手プロも弱小プロもその手の作品を製作しようと躍起になっていた。こうして生まれた作品は、ほとんどがジャッキーの『拳』シリーズっぽいものばかりで、どれもこれも似たり寄ったりの内容に終始している。
しかし、その点でサモハンは違った。彼の手掛けたコメディ作品は、「仇討ちとヘンテコ修行と乞食の師匠」というコメディ功夫片のお約束をわざと外し、独自の笑いに挑戦しているのだ。徹頭徹尾ギャグ満載の『燃えよデブゴン2』、凸凹コンビが騙しあう『燃えよデブゴン3』、お宝争奪戦を描いた『お助け拳』、驚きの展開を見せる『斗え!デブゴン』、1人2役に挑んだ『豚だカップル拳』…作品の質はともかく、どれもこれも型に捕らわれない楽しい作品ばかりだ(『猿拳』『燃えよデブゴン7』はコメディ功夫片の典型だけど、物語はちゃんとヒネってある)。
そして本作はサモハンが台湾のプロダクションに招かれて撮ったもので、今回も彼の独自性が発揮された作品となっている。本筋はヘンテコ修行を描いた作品だけど、ストーリーライン自体はなかなか凝っていて興味深い。しかも本作はサモハン主催の武術指導グループ・洪家班の初仕事だったりするので、サモハン映画としても重要な作品といえるかもしれないが…さて?
■陳龍と黄蝦の2人は大の仲良し兄弟。それでもって2人とも功夫道場の師匠なのだが、乱暴狼藉を働いた李海生(リー・ハイサン)を懲らしめた際、彼の余計な一言によって2人は仲違いしてしまう(ただし2人の子供である孟海と黄杏秀は恋仲)。そんな師匠コンビの元に、名士の高飛(コー・フェイ)から「息子の大細眼&鐘發をそれぞれの道場に入門させたい」との申し出があり、2人の師匠は対抗心を燃やす一方だ。
その頃、米屋で下働きをしていた董[王韋](トン・ワイ)は、配達先の道場で大細眼&鐘發とそれぞれ接触。彼らを偶然にも殴ったせいで、董[王韋]は一方的に逆恨みされてしまう。オマケに仕事もクビにされた董[王韋]は、友人だった孟海&黄杏秀の勧めで2つの道場に厄介になる…が、程なくして道場の二股が発覚したため、結局は破門される事となった(そりゃそうだ)。
行き場をなくした董[王韋]は、とりあえず町中で知り合った功夫の達人・サモハンのところへ転がり込んだ。サモハンによる修行はとても厳しかったが、功夫が習いたかった彼はこの困難に耐え抜き、立派な功夫使いへと変貌を遂げていく。大細眼&鐘發にもキッチリとリベンジするが、事態は董[王韋]の知らない所で動いていた。実は大細眼&鐘發は兄弟でもなんでも無く、高飛が2つの道場から技を盗むために派遣した刺客だったのだ。では高飛の目的とは…?
刺客の惠天賜を迎え撃つ一幕を挟み、遂に高飛の思惑が発覚する。高飛はあの李海生の弟で、兄の復讐を果たそうと2人の師匠の技を盗み、対策を立てた上で叩き潰そうと画策していたのだ。高飛は師匠コンビに挑みかかるが、倒すどころか逆に2人を和解させた挙句(笑)、董[王韋]に呆気なく倒された。だが、そこに李海生が私兵部隊を率いて姿を現した。董[王韋]はサモハンと一緒に、この強大な敵に立ち向かう!
▲師匠の話と董[王韋]の話があまり絡んでいない気がするが、クドすぎないコメディ描写と高度な功夫アクションが炸裂した傑作である。本作は主な登場人物が二対の存在として描かれていて、サモハンと董[王韋]の師弟関係・大細眼と鐘發のおバカっぷり・孟海と黄杏秀のほのかな恋模様・陳龍と黄蝦の関係修復・高飛と李海生の極悪兄弟の末路など、ほとんどのキャラが2人1組として扱われている。
ユニークな試みだが、これが成功したかといえばそうとは言えず、故に先述の「エピソードとエピソードの剥離」が生じてしまっている。これはちょっと惜しい気もするけど、その辺は功夫アクションで上手くカバーされているのでひと安心。本作のアクションは洪家班最初の大仕事というだけあって、縦と横の動きを取り入れることで一味違った殺陣を作り上げている。
その描写が最も顕著なのがクライマックスの集団戦で、私兵部隊から逃れようと駆け抜ける董[王韋]と、それを追って立体的な陣形を組む私兵部隊との闘いは、カメラ据え置きでビシバシ闘うだけでは表現できない、躍動感溢れるバトルとなっている。
もちろん最後の董[王韋]&サモハンVS李海生も非常に濃厚だし、功夫映画ファンは抑えておいて損のない作品。このへんのデブゴン映画は入手困難な作品もあるので、ジャッキーのDVDBOXみたいに全部まとめてDVD化して欲しいなぁ……あ、出来れば元彪の主演作セットと、恒生電影の何宗道主演作セットと石天龍の(以下、贅沢すぎる要望が続くので割愛)