
「キョンシー・キッズ 精霊道士」
原題:疆屍怕怕/精靈寶寶
英題:The Close Encounter of Vampire
製作:1986年
●ここ最近、色々なブームに関係した作品を紹介しているが、今回も流行に乗って作られた作品を取り上げてみよう。本作はキョンシー映画で盛り上がっていた1980年代後半に、袁和平(ユエン・ウーピン)率いる袁家班が撮った作品である。
当時、袁和平らはオカルト功夫片を次々と製作していたが、あえてキョンシーという人気キャラクターを起用せず、独自のマスコットで勝負に出ていた。しかし、「ブームに便乗しただけの作品など作りたくない!」という彼らの気合こそ感じられるものの、袁家班のオリジナル・キャラクターたちは異様な物ばかりであった。特に『妖怪道士2』に登場するバナナ・モンスターというキャラは、スイカ状の体にアンテナが付いていて、男の胸を触るとヨダレを垂らして悦に浸る…という意味不明すぎるクリーチャーだった。どうやったらこんな滅茶苦茶なキャラを考えられるのか、袁家班に直接聞いてみたいほどである(爆
そんな中、袁家班は『ドラゴン酔太極拳』で甄子丹(ドニー・イェン)と出会い、新たな道を模索していくのだが、その直後に製作した袁家班最後のオカルト功夫片こそが、この『精霊道士』なのだ。甄子丹と出会ったことで精神的な余裕ができた袁和平は、「たまには肩の力を抜いて普通のキョンシー映画でも撮ろうかな?」と思ったようで、本作ではこれまでのオカルト作品にあった功夫アクションがほとんど無くなり、あくまでノーマルな子供向けキョンシー作品として仕上がっている。
物語は、京劇劇団の子供たちがベビーキョンシーと交流するエピソードと、ドジな道士が七転八倒するエピソードの2つによって構築されており、子供向け作品として見るなら結構面白い。どちらのエピソードもほのぼのとしているし、ラストもしんみりと感動させてくれる。全体的な雰囲気こそ「普通のキョンシー映画」でしかないが、少なくともツギハギ映画の『幽霊道士』や、子供キョンシーが人殺しをする『リトル・キョンシー 幽霊王子』よりは数倍マシなはずだ。
ただ、袁和平と袁家班が制作する作品なら、やっぱり功夫アクションの1つや2つは欲しかったなぁ…と思ってしまうのが功夫映画ファンの哀しい性(苦笑)。京劇劇団の座長に袁祥仁、ドジな道士に梁家仁と袁信義、イヤミな坊ちゃん役で袁日初が出演しているだけに、ちょっと惜しい気がします(ちなみに京劇劇団の子供たちをまとめていた女の子は、甄子丹の妹である甄子菁(クリス・イェン)その人)。
『ミラクル・ファイター』から続いてきた袁家班のオカルト功夫片。その最後を飾る上で本作は地味な印象を残すが、キョンシー映画のあるべき姿へ先祖返りしたとも見て取れるし、これはこれで興味深い作品なのではないだろうか。