
「となりの凡人組」
製作:1993年
▼ビデオバブル期に全盛を極めたVシネ業界では、実に多くのヤクザ映画(俗に言う「ネオヤクザ」もの)が作られた。一般的にヤクザVシネのイメージといえば、暴力的・残虐性・竹内力・跡目争い・白竜・エログロ・GPミュージアム・哀川翔といったアウトローな印象が強く、とっつきにくさを感じる人も多い事だろう。そのあたりのイメージを逆手に取り、シチュエーション・ギャップを見せることで物語を綴っているヤクザVシネも少なくない。
例えば『極道ステーキ』は大卒の武術家青年がヤクザになるという話で、コミカルな部分もあって中々悪くない。他にも『FM89.3MHz』『特攻会社員』『ゾク議員』のような作品もあり(ヤクザじゃないのも混ざってるけど)、古くは『やくざ坊主』という時代劇にそのルーツが垣間見える。本作もその流れを汲んだ作品で、主人公が平凡なサラリーマン…にしか見えない伝説のヤクザという設定の作品だ。
■主人公・倉田保昭は、かつて金色の唐獅子牡丹を背負って関西を席巻した伝説のヤクザだったが、今は繁華街の片隅で小さな組の親分として暮らしている。ただし自分の身分は娘の中山忍には内緒で、娘に真実を告げるか否かで倉田は悩んでいた。そんな折、倉田らのシマに山王会氷室組という大型組織が参入し、荒貝組の菊池健一郎と共に余談を許さぬ状況となっている…が、それよりも倉田が心配なのは、中山と菊池が交際しているという事実であった。
菊池も中山には自身の身の上を言い出せずにおり、倉田は菊池に「うちの娘から手を引け!」と言う。そんな時、ふとした事から倉田と菊池の正体を知ってしまった中山は、突然現れた氷室組によって誘拐されてしまった。倉田と菊池はたった2人で敵地に向かうが…。
▲本作はのちに第3作まで作られたシリーズの第1作にあたり、かなりコメディ色の強い作品になっている。主演を飾った倉田保昭もギャップの大きい役柄を好演しており、物語にも破綻は無かった。ただ問題なのは、本作の主演が「倉田保昭である」という点だ。
李小龍(ブルース・リー)登場以前の香港に乗り込み、鋭い蹴りで現地の観客に賞賛の嵐を受け、ジャッキー・サモハン・ユンピョウらと互角の勝負を繰り広げ、本作の翌年には李連杰(ジェット・リー)を相手に死闘を展開し、今もなおバリバリ活躍中というのが倉田保昭という男である。そんな彼が伝説のヤクザなんて大層な役を演じるのだから、当然アクションに期待しない方がおかしい筈だ。
ところが本作での倉田は全く何もしない!敵の三下とバトルになりかけても、途中で邪魔が入ってやっぱり闘わない!コメディ部分は悪くないけど、とにかく全然闘わないのだ!倉田がようやく動き出すのはラストバトルを迎えてからだが、ここも随分とアッサリ目であまり面白くない。しかも最後まで大物ぶっていた敵ボスは倉田に瞬殺される始末…第2作以降がどうなっている知らないが、もし本作を倉田保昭のアクション目当てで見ようとする人がいるなら、私は敬遠したほうがいいと思います。
ところで本作で倉田と共演した中山忍、その後『レジェンド・オブ・フィスト/怒りの鉄拳』でも倉田と共演していたが、もしかして本作の縁故で出演したのだろうか?