『危うし!タイガー』 | 続・功夫電影専科

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香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


「危うし!タイガー」
原題:硬漢
英題:Tough Guy/Revenge of the Dragon
製作:1972年

▼1972年、この年の香港映画界は陳星(チン・セイ)による怒涛の快進撃が続いていた。呉思遠(ン・シーユエン)と組んで撮った『蕩寇灘』『餓虎狂龍』は大ヒットを記録し、『黒名單』も年間トップ10に食い込んだりと、その活躍は実に目覚しかった。
そんな陳星の作品が日本で巻き起こったドラゴンブームの流れに乗って公開されたのも、至極当然の成り行きだったのだろう。ちなみにこの映画の武術指導は袁和平で、実は日本に初お目見えした袁和平作品でもある。

■ストーリーは実にシンプルで、『餓虎狂龍』から陳星の部分だけを抜き出して一本仕上げたような作りだ。
捜査官の陳星は上司から「山怪に近付き悪を討て」との命令を受け、山怪の脱獄の手引きを行った。その後、何故か港で于洋や火星らと荷物運びの仕事に就いていた陳星は、元締めの馮克安とトラブルを起こしたことから孫嵐らに狙われることに。そこで彼を倒さんと立ち上がったのが山怪で…要するに陳星、この孫嵐らを倒すために潜入しようと山怪に近付いたわけである。山怪の勧めで孫嵐の元に身を寄せる陳星だが、仲良くなっていた于洋たちからは「裏切り者め!」と吐き捨てられた。
そんな中、新たに孫嵐らの仲間である方野と王清が到着し、連中が火星たちを襲っていたところに何も知らない陳星が居合わせ、激しい戦闘となる。これにより組織の空気が険悪なものとなり、火星たちは「陳星はどっちの味方なんだ?」と首をかしげる始末。悪い事は重なるもので、陳星と連絡員の張力(リャン・リー)が接触している現場を馮克安が目撃したため、組織内では陳星に対する不信感が強まっていった。
義侠心の強い山怪は最後まで無実だと信じていたが、陳星が孫嵐の倉庫へ潜入した際に待ち伏せを受けてしまい全てが発覚、陳星は窮地に立たされてしまう。一方、陳星と共に潜入して何とか脱出した張力は于洋たちと出会い、事の真相を話して彼らの助力を仰ぐ…が、追ってきた方野と王清によって火星と于洋の妹が殺された。そのころ陳星は馮克安を倒して敵陣から脱出し、逃走を図る孫嵐と山怪を追いかけて果てしない激突を繰り広げていく…。

▲明らかに呉思遠作品を意識している作品だが、『蕩寇灘』『餓虎狂龍』のように深みのあるものではなく、ストーリー面に少々パンチが欠けている。
とはいえ、当時の作品としては平均以上の出来を保っており、何よりも袁和平が指導した功夫アクションは流石に面白い。ラストは延々20分以上に渡るマラソンバトルで、陳星VS山怪・于洋VS方野・張力VS王清が手を変え品を変えてひたすら戦い続けるという凄まじいものだ。絡み役も当時の袁家班総出動で、ところどころに袁信義や袁日初らが顔を出しているのがミソ。珍しく山怪がラスボスというのも特筆で、本作での石頭キャラ(正確には仕込みだが)は後の『酔拳』における彼を髣髴とさせている。
なお、本作を製作した富國影業は于洋と袁和平をそのまま起用して『石破天響』『狼狽爲奸/狼狽為奸』を作り、監督の江洪(ジェームズ・ナム)は張力と組んで『小覇王』を製作した。前者は中々の佳作として名高いが、後者は何故か後年は呂小龍(ブルース・リ)と共に道を歩み、陳星ともども晩年まで呂小龍と付き合う羽目になってしまうが、これはまた別の話である。