『12 TWELVE』 | 続・功夫電影専科

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香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


「12 TWELVE」
原題:UNDERGROUND
製作:2007年

●その日、選ばれた12人の猛者たちによる格闘トーナメントが行われようとしていた。資産家や富豪といった観戦者たち6人は、それぞれ2人の選手を手駒に決めて大金を賭ける。もし自分の手駒の選手が優勝すれば、選手と自分にそれぞれ賞金が転がり込む…というシステムだ(ただし、負けたら全てがパー)。ある者は家族の為、ある者は大金を手にする為、選手たちはこの死闘に身を投じていく。最後に立っていた選手は果たして…?
『メダリオン』『ツインズ・エフェクト』で香港映画にも出演した事のあるマーク・ストレンジの主演作(一応)であるが、これが面白い!最近のマーシャルアーツ映画といえば『ダークブレイド』で痛い目を見たが、今回は大当たりでした。
本作の一番の特徴は、物語に余計な枝葉が一切無い事だ。賭けの元締めが悪党で主人公と対決したり、因縁のある相手とスポ根路線でぶつかりあうとか、そんな展開は何ひとつ存在しない。ただそこにあるのは拳と拳を交える選手たちの闘いだけで、ある程度のバックホーンだけが語られるのみなのだ。
マーク・ストレンジを主演だと先述したが、確かに最後まで彼は勝ち上がるものの、実際に見てみると主役とは言えない。それどころか前半部では台詞が無いし(他の選手たちも場合によっては一言も台詞の無いキャラがいる)、各々の役名もホームレスや秘密結社といった感じで、意図的に"選手たちへの"感情移入を削ぐようにしてある。これは、我々視聴者の視点を観戦者たちに近い状態にすることで、観戦者たちと同様に"トーナメント(格闘アクション)に"感情移入するように仕向けた演出なのだろう。
貴方は、マーシャルアーツ映画を見ていて、「ラブシーンはいいから格闘アクションをもっと見せて欲しい」とか、「ドラマに凝るより格闘シーンに凝ってくれ」とか思った事はないだろうか?
私もマーシャルアーツ映画のみならず、時として功夫映画にもそう思った事がある。本作はそんな不満の声を解消し、ドラマで格闘アクションを見せるのではなく、格闘アクションそのものでドラマを生み出すことに成功した、ある種の理想形と言っても良い作品だ。この作りは人によって好みが分かれるかも知れないが、ここまでスッパリと格闘アクションだけに集中したその潔さは、高く評価してもいいはずだ。
ロケーションなどは異様にショボく、格闘アクションも決して素晴らしい訳ではない。動作自体はかなりハイレベルなのだが、息継ぎが多いことと選手によって格闘スタイルに変化があまり見られない(戦い方の差別化が図れていない)ことなど、目に付くところは多々ある。マークに関しても同様で、彼についてはこれからに期待といったところだろう。
だが、凡百のマーシャルアーツ映画にはない特異性に満ちている事だけは確か。予想を裏切る選手の勝敗や意外なラストにも驚かされるし(これについては特典の予告編を見ないようにして欲しい。予告編を見ると、ある程度の勝敗が予想できてしまう)、『グラップラー刃牙』の最大トーナメント編や『餓狼伝』なんかが好きな人は確実に楽しめるはず。私としては、是非とも全てのマーシャルアーツ映画ファンに見て欲しい…というか必見すべき作品なので、かなりオススメです。