『一網打盡/一網打尽』 | 続・功夫電影専科

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香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


一網打盡/一網打尽
英題:The Thunder Kick
製作:1974年

▼功夫映画ドキュメンタリー『死闘伝説TRUBO!!』で最初にスタッフロールと共に流れるアクションシーンがある。染野行雄と濃い顔の李錦坤(ラリー・リー)が一進一退のバトルを繰り広げ、その場面は本編中にも李錦坤の項で再び登場する。実は本作こそがそのシーンがある映画で、監督は大怪作『癲螳螂』の葉榮祖が担当している。

■橋で通行料を搾り取っているチンピラどものところへ李錦坤が通りかかり、あっという間に連中を蹴散らした。しかし李錦坤の母は「ケンカはしないで」と嘆く…その裏にはかつて死んだ李錦坤の父の事があった。
ここまでの流れはいわゆる『ドラゴン危機一発』風だ。ケンカはしないと誓った主人公が拳を振るえず、悪党によって仲間や家族に間の手が伸び、そこでようやく主人公が立ち上がるというものだ。李小龍がブレイクした当時にバッタもん李小龍が横行したが、同様に李小龍の作品スタイルを倣った作品も数多く生まれた。それが『ドラゴン怒りの鉄拳』的な反日映画だったり、『ドラゴン危機一発』的な功夫片だった。本作の場合はここからがちょっと違うのだ。
 さて、その後チンピラどもが李錦坤のお礼参りに現れた。今度は用心棒の楊斯(ヤン・スェ)も一緒だが、ちょうど李錦坤の父を尋ねてきた南宮勲(ナン・ゴンクン)とお供の火星(マース)が立ち上がった。続いて李錦坤も加勢して勝負は決し、李錦坤と南宮勲は改めて墓前で父を弔うのだった。
その後も南宮勲と親交を深める李錦坤とその家族だが、さる事情から南宮勲は彼らの元から去っていった(理由は不明)。そして実家(?)へと帰ってきた南宮勲だが、そこに染野さんら3人組の悪党が現れた。
 染野さんは『龍の忍者』で真田広之に耳を切られた少林僧の役が有名だが、他にも数多くの仕事をこなしている。活動の本拠が台湾だったためか日本ではあまり知られていないが、映画出演以外にも台湾で自身の映画会社を起こし、『ゴーストパワーを持つ少女』などを製作し、現在は『忍者潜龍』のDVDインタビューで語られた豪華キャストによる大作、『大龍七戦』を製作中との事。
そんな染野さん一味に南宮勲が殺され、火星から訃報を聞いた李錦坤はさっそく染野の仕切る賭場へと偵察に向かった。そこでは日常的にイカサマが行われ、染野は不当な利益を貪っている。また、染野の手下である黄培基は阿片を横行させ、別の手下は身売りされた女を使って娼館を経営したりと、非道の限りを尽くしていた。かくして李錦坤は、黄培基・もう1人の手下・そして染野さんを次々と撃破し、南宮勲の仇を討つのだった。

▲生かし切れていない、という感じがする。李錦坤は相当な実力者である事が『死闘伝説TRUBO!!』で語られているが、本作での殺陣は全体的に思い切りが無く、非常にもっさりとしている。悪くはないが良くもなく、たまに目を見張るような連続蹴りが出てくるが、全体的にペースが守られていないのだ(見どころもラストバトルぐらい)。
クライマックスでの絡み役には劉家榮(!)・馮克安・袁信義といった凄いメンバーが確認できる。出演している黄培基もショウブラで武師の経験があり、武術指導も彼らが担当したのではないかと思われるが、私の所持しているバージョンはスタッフ等のクレジットが無いものだったため、よくわからない。その半端さ加減は作品でも生じており、特にこれといった山場も無いまま終幕している。
 総括すると「もうちょっと贅沢を言ってもいいのでは?」と思うところ。この面子ならもっとグレードの高いものが望めたと思うのだが。胃もたれがするほど濃い風体の李錦坤(笑)についてはこれからに期待か?