
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地激震」
黄飛鴻系列之一代師/黄飛鴻系列之一代宗師
Martial Arts Master Wong Fei Hung
Great Hero From China
1992
●『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地黎明』のヒットによって多くの亜流作品が作り出された。本作もそのひとつで…というのは前にもやったが、こちらは模倣に徹した『天地発狂』とは違い、それなりにストーリーを作っている…が、やはりこれも良い出来ではない。
放蕩息子の黄飛鴻は暴れまわる日々を送り、体の弱い父・黄麒英は心配ばかり。だが、黄麒英にはもうひとつ気がかりな事があった。それは以前破門した日本人・柳生十兵衛(京都十兵衛)が復讐に来るかもしれないという事だった。結局父は死に、黄飛鴻は寶芝林を背負って立つ事になる。その事に不満を持っていた兄弟子は黄飛鴻の実力を測るため夜襲を決行。その結果、黄飛鴻の腕前を認めた兄弟子は寶芝林を出て行くのだった。
しかし一方で、巷では政府公認のアヘン館が建ち、中毒者が激増する。そして時を同じくして、あの柳生十兵衛が寶芝林に現れ、黄麒英の慰問に一時訪れた兄弟子を殺害し去っていった。そして黄飛鴻と知り合った柳生十兵衛の妹…交錯する2つの物語が本作の肝である。
さて、本作で黄飛鴻に扮したのは錢嘉樂(チン・カーロッ)。そして強敵・柳生十兵衛を演じるのは林正英(ラム・チェンイン)と、洪家班寄りの面子が顔を連ねている。功夫アクションのほうは鐵傘功やアヘンと西洋人など、どことなく『ワンチャイ』作品に倣ったものもあるが、基本は激しいワイヤーアクションが主体となっている。この2人ならばちゃんと地に足をつけたアクションが見たかった気がするが、まぁそれなりに水準は保っているので悪くはない。
しかし、日本人の武士と黄飛鴻による『破れ!唐人剣』的な闘い、報われぬ林正英の妹と錢嘉樂の恋の行方、西洋人と結託してアヘンを蔓延させようとする政府高官のバカ息子と、よからぬ企みを抱くその父…このように面白くなる要素は満載だったのに、本作ではこれらのおいしい素材が生かしきれていないのだ(特にアヘン絡みの問題は、諸悪の根源である西洋人が健在だったりと、解決しないまま終わっている)。個人的には林正英の妹がツボだったのだが、それだけに残念である。
そして本作については問題がもう1つある。正確にはこの作品に対してではなく、発売元のJVDに対しての事だ。日本で発売されたJVD版を見た人は、全編に渡って奇妙なアングルで撮影されている事にお気づきだと思う。人物がアップになると口元が隠れたり、アクションシーンでも全体が見えていないなど、おかしなところが多々ある。
今までにも各所で取り沙汰された問題であるが、これは二段字幕が見えないようにトリミングされたのではないかと言われている。二段字幕とは海外の作品を見慣れた人ならお馴染みだが、漢文と英文による二段の字幕のこと。口元が見えなかったりしたのは、その字幕を隠すためで、一見普通のシネスコサイズに見えるが、実はかなりトリミングされた状態で発売されているのではないか…という事である。
こんな乱暴なカットが事実だとしても、海外の粗悪なメーカーならいざしらず、日本のちゃんとした会社でこんな事をするなんてちょっと信じられません。JVDの真偽はともかく、最後まで設定を生かしきれなかった優柔不断な作品。やっぱり便乗作品は便乗作品…ですねぇ。