『拳鬼』 | 続・功夫電影専科

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香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


「拳鬼」
製作:1995年

●かつてライバルの塩谷庄吾を死闘の末に殺してしまった空手使いの阿部寛。彼は空手を捨てて整体士として生きる道を選び、刑事の長谷川初範やヒロインと平和に暮らしていた。だが、謎の老人石橋雅史がヤクザの桜井章一を一撃で撲殺したことを発端に、ヤクザが阿部を利用しようと画策する…。
 『ドラゴン桜』『トリック』の個性派俳優・阿部寛が若い頃に挑んだVシネ作品です。かつて彼は『孔雀王/アシュラ伝説』でも体を張ったアクションを演じていましたが、本作でも体当たりの格闘アクションを熱演!序盤における塩谷庄吾とのハードな対決、そしてラストの太極拳の使い手・石橋雅史(!)との戦いは、当時のVシネとしては十分良質なクオリティに達していたと思います。
当時を振り返った阿部は某紙のインタビューで「自分の体格が大きく、吹替えのスタントが一切使えなかったので大変だった」と述懐しています。その苦労の甲斐もあって、劇中では長身から繰り出される拳打にかなりの迫力があり、見事なファイトシーンを演じ切っていました。
 しかし、本作で一番気になるのは石橋雅史の存在です。彼は『激突!殺人拳』などの空手映画で何度も千葉真一と対決し、『女必殺拳』シリーズで志穂美悦子と倉田保昭に立ちはだかり、『吼えろ鉄拳』で真田広之とも共演しました。まさしく石橋こそが70年代の東映空手映画ブーム最大の功労者であり、また同時に生き字引ともいえる存在だったのです。
そんな彼が空手ブームから20年近く経ち、久々に空手アクションを見せるというのだから、興味を持たぬファンがいるはずがありません!さすがに高齢のため、本作では各所で吹き替えスタントが挿入されていますが、往時と変わらぬ力強い動作を披露していました。香港映画では年を食っても動ける人が沢山いますが、日本でもこういう人がいるとは実に驚きです。
 必然的にノースタントで挑んだ阿部と、老いてもなお衰えを知らない石橋。ラストで両者が見せる一騎打ちは、さながら世代を超えた夢の対決といえるのかもしれません。本作はVシネなので尺も内容も薄味ですが、今となっては古武道を得意とする阿部の肉弾戦が見られる貴重な作品でもあるので、阿部ファンも見て損はないはずです。