
「龍の忍者」
龍之忍者
Ninja in the Dragon's Den
1982
▼JAC映画を取り上げていく中で、どうしても無視できない1つの作品がある。それがこの『龍の忍者』だ。
本作は香港映画界と日本のJACが手を組んだ歴史的な作品である。これ以外にも日本と香港の合作で作られた本格功夫映画といえば、未公開作だった高木淳也の『忍者潜龍』の他は皆無だ(『皇家戦士』はJACはノータッチ)。ジャッキー人気のあおりもあったのだろうが、日本の精鋭アクション集団と香港の大物・呉思遠(ウン・シーユエン)の邂逅は重大事件であった。
真田と共に主演を飾るのは李小龍やジャッキーに次ぐスターとしてデビューしながらも、その後パッとすることのなかった李元覇(コナン・リー)だ。この他に黄正利(ウォン・チェン・リー)などといった手練れが参戦。ここに空手映画史上もっとも貴重かつ希有な作品が誕生することとなった。
■李元覇は正義感の強い坊ちゃんで、今日もお祭りに現れた牛魔王と名乗るオヤジを撃退して家路についていた。彼の爺や・田中浩は川沿いの小屋で鏡作りを営んでいる。
ある日、突然黒ずくめの男が現れて田中を襲撃する事件が起きた。李元覇の助けもあってどうにか逃げおおせたが、田中を襲ったのは日本の忍者・真田広之だった。彼は父親の敵とされる田中を追い、恋人の津島と共に中国へやって来ていたのだ。自分はかつて忍者だったと秘密を明かした田中は、李元覇と太保によって守られることとなる。屋敷に飛び出す槍、油を流し込んだ池、上から降ってくる檻などの数多くのトラップで真田に対抗する。
なかなか田中に近づけない真田だったが、そんな彼の元に権永文が手下を引き連れて現れる。権永文は伊賀忍者の首領で、真田とは因縁浅からぬ関係の男だ。奴は仲間の忍者の仕返しとばかりに襲いかかるが、そこで津島が殺されてしまう(実は生きていた)。権永文を撃破した真田は、意を決して田中の元へ向かう。田中も李元覇のもとを去り、真田との対決に身を投じていた。
死闘の末、実は真田の誤解であったことが発覚するが、田中はすでに死ぬ覚悟で毒を飲んでいた。
「かッ…介錯をッ!」
「………ッ御免!!」
その二人の現場を、追って来た李元覇が見ていた。
「なぜ殺したんだ!おい、こういうときなんて言うか知ってるぞ!『なめんなよ』!!」
生前、田中に教わっていたつたない日本語で必死に真田に詰め寄る李元覇の姿が泣かせる。そして遂に始まった真田と李元覇の激突!セットにしてはかなり大掛かりな五重塔で拳を交える両雄!…そして、いつしか戦いの末に誤解は解け、二人の間に国境を越えた友情が育まれた。
だが、今度は冒頭に李元覇にボコられた神打教の男のボスである教祖、黄正利が手下の染野行雄らを連れて登場!
日中コンビはこれをどう撃破するのか!?
▲製作が呉思遠の思遠影業、監督および武術指導が元奎(ユン・ケイ)、同じく武術指導に孟海(マン・ホイ)の裏布陣なので、噂に違わぬ傑作だった。擬斗を斉藤一之が担当しているがアクションのスタイルは限りなく香港チックである(ちなみに元奎は本作が監督デビュー作)。
真田の香港(あるいは中国)映画の出演といえば、『皇家戦士』『PROMISE』があるが、顔合わせ的にバラエティに富んでいるのは本作が一番だろう。Vs権永文、Vs黄正利なんてかなりのレア対決だ(Vs染野行雄も貴重か)。
しかし、一応アクションもできるはずの田中さんにスタントダブルが目立ったのは、香港式のハードなスタイルが無理だったのか…『吼えろ鉄拳』の彼を見ているだけに、もうちょっと頑張れたと思うのは自分だけ?
ところどころ日本媚びしたシーン(真田の「ばいちゃ!」発言、なめ猫が登場、津島が入浴時に歌っている鼻歌が「セーラー服と機関銃」の主題歌「夢の途中」だったり…)とか、禁欲的な黄正利の弱点が「金瓶梅」だったりオフザケな場面もあったが、それも塔内での真田と李元覇の激闘を見ていたら気にならなかった。アクションも話も主題歌(「レジェンド・オブ・ザ・ニンジャ」)も非常に良く、ここまで来れば文句なしの傑作と断言したいところなのだが、本作についてある事に気付いた…この作品には倒されるべき敵が登場していないのだ。
権永文は真田の誤解さえなければ襲ってくることもなかったし、彼自身も最後は自分を殺そうとする真田に「忍者は非情であれ」とメッセージを遺している。黄正利ら神打の連中も、李元覇がちょっかいを出さなければここまでの大事には発展しなかっただろう。それに黄正利が大して悪い事もしていないようなのに、あんな無残な死に様を晒してしまうのにはギョッとした。という事は、もしこの物語で根源となる悪がいるとすれば…結果的に伊賀忍者を皆殺しにした(冒頭の権永文登場シーンを参照のこと)真田と、インチキだと口出ししなければこうはならなかったであろう李元覇こそ悪ではないか!?
う~ん…こうして考えると、自分の中で評価がガクッと落ちてしまったような(爆