
「少林虎鶴拳」
原題:洪熙官
英題:Executioners From Shaolin
製作:1976年
▼まず今回は、タイトルにもなっている洪熙官について少々触れてみましょう。洪熙官とは、少林八傑(または少林十虎)の一人として数えられる武術家で、黄飛鴻も学んだ洪家拳の祖と言われています。香港映画の題材になることも多く、李連杰や甄子丹が扮したこともありました。
そして『嵐を呼ぶドラゴン』で洪熙官を演じた陳觀泰(チェン・カンタイ)と、功夫映画の名匠・劉家良(ラウ・カーリョン)がコンビを組み、改めて洪熙官について描いたのが本作なのです。例によっていつもの少林寺焼き討ちものですが、その内容は想像以上のものとなっています。
■少林寺を焼き討ちされ、満身創痍で逃げてきた陳觀泰たち。師匠の李海生(リー・ハイサン)は朝廷と結託した武當派の長・白眉道人こと羅烈(ロー・リェ)に殺され、道中で仲間の劉家輝(リュウ・チャーフィ)も犠牲となってしまう。
京劇一座に身をやつした陳觀泰たちは、身分を隠しながら各地を転々としていた。そんな逃避行の中、彼は大道芸人の李麗麗(リリー・リー)と運命的な出会いを果たす。当初は反発しあっていたが、次第に深い絆が芽生えていく2人…だが朝廷の追及は確実に迫ってきていた。
やがて2人の間に息子が生まれるが、陳觀泰は倒れていった仲間たちのために決して拳を捨てず、とうとう十年後に羅烈の本拠地へと討ち入った。しかし相手はあらゆる攻撃が通用しない秘術・鐵布杉を身に着けている。窮地に陥る陳觀泰だが、そんな彼を仲間の一人が命を投げうって救い出した。
尊い犠牲を胸に秘め、彼はその後も特訓を重ねていく。いつしか息子は汪禹(ワン・ユー)に成長し、楽しくも過酷でもあった修行と生活の果てに、再び陳觀泰は打倒羅烈のために家を出ていった。だが李麗麗は薄々感づいていた、陳觀泰の虎拳だけでは羅烈に勝てないだろう、と…。
それでも宿命に決着をつけるべく、彼は止めに来た汪禹を振り切って勝負に挑んだ。三節棍の劉家良や雑兵を蹴散らすも、やはり羅烈の持つ強大な力の前には敵わない。今わの際に朝廷の江島を道連れにし、陳觀泰は壮絶な生涯の幕を閉じるのだった。
父の死を悟った汪禹は、仇討ちのために父の残した指南書を使って特訓を開始する。時間によって変動したり移動する羅烈の弱点を突くために、彼が講じた策とは…?
▲本作はよくある清朝との戦いを描いた作品…と思いきや、主人公が仲間を失いつつもささやかな幸せを手に入れ、その幸せを手放してまでも戦いに向かうという壮大なストーリーに発展。主人公が志半ばで命を落とし、その意思を息子が受け継ぐという熱いドラマが展開されます。
年月とともに討つべき相手は清朝から羅烈へと変わり、もはや仇討ちではなく武術家としての矜持を胸に闘う陳觀泰の姿は、儚くも力強い魅力に溢れていました。いつも質の高い劉家良作品ですが、本作の重厚な物語からは監督がどれだけ力を入れていたかが伺えます。
そのため今回はアクションシーンがいつもより少なく感じるものの、そこはクオリティの高さで十二分にカバー。二度にわたる陳觀泰VS羅烈はどちらも見事なものだし、自分なりのアレンジを加えた新技で立ち向かう汪禹のラストバトルも、手に汗握る激闘となっていました。
ドラマもアクションも一切の妥協がない傑作中の傑作。個人的には有名な『少林寺三十六房』よりこっちのほうが好きですね(劉家良のベスト作品かも?)。