コンクリートの壁に、でかでかとロゴが刻まれている。
無骨で、無駄がない。
この建物は、余計なことを一切言わない。
ただ、そこに在る。
…このカフェは、本物の匂いがする。
窓の向こうを、電車が駆け抜けていく。
目の前には、今日のおすすめのホットコーヒー。
真夏にホットを頼む自分を、少し褒めてやりたい。
一口飲んだ瞬間、程よい酸味がじんわりと広がった。
そしてしっかりとしたコーヒーの香りが、鼻腔を満たす。
電車の音と、コーヒーの香り。
この組み合わせが、こんなに合うとは思わなかった。
動くものを眺めながら、静かに飲む一杯。
…これは、贅沢である。
このマグカップのデザインが、また憎い。
自転車のギアをモチーフにしたロゴが、
所狭しと並んでいる。
よく見ると、猫まで混じっている。
…遊び心とは、こういうことだ。
☕️espresso orange🍊
二層になっている。
上はエスプレッソの深い褐色。
下はオレンジの鮮やかな黄金色。
この美しい境界線を、しばらく眺めた。
混ぜるべきか、混ぜざるべきか。
それが問題だ。
まずはストローを下の層へ。
オレンジの甘くフルーティーな酸味が、静かに広がる。
次に上の層へ。
エスプレッソのコクと苦味が、どっしりと押し寄せる。
そして、全体をゆっくりと混ぜ合わせた瞬間…
二つの個性が融合し、まるでカクテルのような爽快感が生まれた。
これはコーヒーではない。
タイ発祥の、夏の哲学である。
【最後に一言】
暑い季節に、
あえてホットを飲む男
と、
二層の美学を楽しむ男。
どちらも、正解だ。
コーヒーとは、飲み方の数だけ、答えがある。



