ビリー・ホリデイ - ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド (Okeh, 1941) | 人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

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元職・雑誌フリーライター。バツイチ独身。午前0時か午後3時に定期更新。主な内容は軽音楽(ジャズ、ロック)、文学(現代詩)の紹介・感想文です。ブロガーならぬ一介の閑人にて無内容・無知ご容赦ください。

ビリー・ホリデイ - ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド (Columbia/Okeh, 1941)ビリー・ホリデイ Billie Holiday - ゴッド・ブレス・ブレス・ザ・チャイルド God Bless The Child (Arthur Herzog Jr, Billie Holiday) (Columbia/Okeh, 1941) - 2:57 

Originally Released by Columbia Records Okeh  6270, Shellac, 10", 78 RPM, 1941
[ Billie Holiday with Eddie Heywood and his Orchestra ]
Billie Holiday - vocal, Eddie Heywood - piano, Roy Eldridge - trumpet, Jimmy Powell & Lester Boone - alto saxophones, Ernie Powell - tenor saxophone, Paul Chapman - guitar, Grachan Moncur - b, Herbert Cowans - drums

[ God Bless The Child ]

Them that's got shall get
Them that's not shall lose
So the Bible said and it still is news

Mama may have, Papa may have
But God bless the child that's got his own
That's got his own

Yes, the strong gets more
While the weak ones fade
Empty pockets don't ever make the grade

Mama may have, Papa may have
But God bless the child that's got his own

Money, you've got lots of friends
Crowding around the door
When you're gone and spending ends
They don't come no more

Rich relations give crust of bread ans such
You can help yourself but don't take too much

Mama may have, Papa may have
But God bless the child that's got his own
That's got his own

Mama may have, Papa may have
But God bless the child that's got his own
That's got his own

He just don't worry about nothing
'Cause he's got his own

裕福な者はさらに多くを得て
持たない者はさらに失う
聖書の教えは今でも新しい

ママもパパもお金持ちだとしても
神さまは自分で身を立てる子どもを祝福する
自分で身を立てる者を

そう、強者はさらに強くなり
弱者は消えていくしかない
空っぽのポケットの中は決して増えない

ママもパパもお金持ちだとしても
神さまは自分で身を立てる子どもを祝福する

お金よ、あなたはたくさんの友だちを呼ぶ
ドアに群がる人々を
だけどお金が底をつきてしまえば
もう誰もやって来はしない

裕福な親戚はパンのかけらくらいはくれる
それもいいけれど多くは期待できない

ママもパパもお金持ちだとしても
神さまは自分で身を立てる子どもを祝福する

ママもパパもお金持ちだとしても
神さまは自分で身を立てる子どもを祝福する

そうすればもう何も心配はいらない
自分で稼いだ物があるのだから


 ビリー・ホリデイ(1915-1959)には、生涯の公式スタジオ録音曲(別テイク、没テイク除く)が323曲ありますが(ユニヴァーサル・フランス'2011年リリース『Billie Holiday The Complete Masters 1933-1959』15CDより)、ビリー自身による自作オリジナル曲は10曲弱、ビリーのために書き下ろされた曲を合わせても10数曲に過ぎません。しかしそれら全曲はジャズのヴォーカル&インストルメンタル・クラシックになっており、ビリーは基本的にはトーチソング(失恋歌)の系譜を継ぐバラッド系スタンダード曲のジャズ・シンガーでしたが(イメージと違ってビリーのレパートリーにはブルース曲の比率は低く、バラッド曲をブルース・フィールで歌う歌手という方が正確です)、歌手としての創造性は非常に高かったので多くのレパートリーを自家籠中の決定的ヴァージョンに変え、ごく少数のオリジナル曲、ビリーのための書き下ろし曲はとりわけエッセンスの凝縮されたものでした。ですからビリーのための書き下ろし曲を含んだ10数曲のスタンダード化率はほぼ10割になったのですが、ビリーのオリジナル曲でもとりわけ高い人気を誇り、ヴォーカル&器楽カヴァーともに数百のヴァージョンが今なお増え続けているのが、コロンビア(傘下の黒人音楽レーベルのブランズウィック、オーケー)時代末期、ビリー芳紀26歳の年に発表されたこのオリジナル曲で、ビリーのブレインだったソングライター、アーサー・ハーツォグとの共作で書き上げられた名曲です。シングル発売時のB面曲はデューク・エリントン作曲の美しいバラード「Solitude」でした。この2曲はコロンビア時代(現ソニー・ミュージック・エンタテインメント)のビリーのベスト・アルバムには必ず収録されていますので、最新マスタリングのベスト盤をお薦めします。

 ビリーは生涯この自作曲を代表作とし、必ずライヴのセット・リストに入れて45歳の晩年まで歌い続けましたが、ライヴ収録以外での公式スタジオ録音では、コロンビアの後で移籍したデッカ・レコーズ、またデッカから移籍した後のマーキュリー・レコーズ傘下のジャズ・レーベル、クレフ・レーベル(のちノーグランを経てヴァーヴと改称)にそれぞれセルフ・カヴァーを残しており、ヴォーカル・コーラスとオーケストラをバックにしたデッカ版、ぐっとモダン・ジャズ寄りのクレフ版も名唱名演に値する素晴らしいものですが、初演のオーケー=コロンビア版は曲想が斬新だけにコロンビア時代にあってもバンドのサウンドが古さを感じさせず、何よりビリーの声のみずみずしさと張りが、のちのビリー自身のセルフ・カヴァーとも一線を画しているのは認めざるを得ません。またこの曲はビリーの古巣、カウント・ベイシー楽団(ここでは選抜メンバーによる7人編成)との、短編音楽映画のためのスタジオ・ライヴ映像が残されており、1950年8月の撮影収録でビリー35歳と、まだ声の衰え(ビリーは40代から急激に好不調の波が現れました)が訪れるよりずっと若い時期で、ビリーの歌唱映像はテレビ出演の増えた40代の晩年に集中しているため、この早い時期のビリーの映像は貴重です。この曲の数ある器楽ヴァージョンの名演はまた次の機会にいたします。
Billie Holiday with Gordon Jenkins Orchestra - God Bless The Child (Decca, 1950) - 3:07 

LP Released by Decca Records as the album "Lady Sings", DL 8215, 1956
[ Billie Holiday with Gordon Jenkins Orchestra ]
Billie Holiday - vocal, Dent Eckles - flute & saxophone, Charlie LaVere - piano, Robert Bain - guitar, Lou Butterman - bass,  Nick Fatool -drums and Gorden Jenkins Orchestra with vocals
Billie Holiday - God Bless The Child (Clef, 1956) - 3:46 

Released by Clef Records ‎as the album "Lady Sings The Blues", Clef MG C-721, 1956
[ Personnel ]
Billie Holiday - vocals, Anthony Sciacca (aka Tony Scott) - arrenger, clarinet, Charlie Shavers - trumpet, Paul Quinichette - tenor saxophone, Wynton Kelly - piano, Kenny Burrell - guitar, Aaron Bell - bass, Lenny McBrowne - drums

Billie Holiday with Count Basie Septet - God Bless The Child into Now Or Never (Filmed in Hollywood on August 25, 1950) - 4:58 

Sound Only 

[ Billie Holiday will Count Basie and his Septet ]
Billie Holiday - vocal, Count Basie - piano, Clark Terry - trumpet, Buddy DeFranco - clarinet, Wardell Gray - tenor saxophone, Freddie Green - guitar, Jimmy Lewis - bass, Gus Johnson - drums

(旧記事を手直しし、再掲載しました)