日本語ロックの最高峰、サンハウス! | 人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

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元職・雑誌フリーライター。バツイチ独身。午前0時か午後3時に定期更新。主な内容は軽音楽(ジャズ、ロック)、文学(現代詩)の紹介・感想文です。ブロガーならぬ一介の閑人にて無内容・無知ご容赦ください。



 70年代の博多ロック・シーンが誇る偉大なバンド、サンハウスは拠点とした博多のローカルな活動に重点を置いていたため、全国的な認知度を得たのはリード・ギタリストの鮎川誠(1948~2023)がシーナ&ロケッツで再デビューして脚光を浴びたのち、解散後の1980年代以降の度重なる一時的再結成まで待たねばなりませんでしたが、本来ならスパイダースやブルー・コメッツに次いでグループ・サウンズ時代にデビューすべきだった、英米ロックの本質を理想的な独自の日本語ロックに消化して活動していたバンドでした。北九州~福岡・博多でGS時代から活動していたメンバーがサンハウスを結成したのは1970年ですが、同年に東京で結成された頭脳警察、京都で結成された村八分、やや遅く横浜で結成されたキャロルとともに、もしすぐにレコード・デビューがかなっていたら日本のロックははっぴいえんどではなく、GS~フォーク・クルセダーズ、ジャックス、岡林信康、五つの赤い風船を経てサンハウスや頭脳警察、村八分、キャロルこそ出発点とされてしかるべきロック・バンドだったでしょう。また、まだメンバーが別々のバンドで活動していたGS時代に早くも結成してデビューしていたら、日本のロックは10年早くキャロルのデビューに匹敵するほど進歩していたと思われます。レコード・デビューは1975年と遅れましたが、サンハウスこそブルース・ロックをベースにした英米ロックを完全に自家薬籠にして、ロックの本質を射ていたバンドでした。もっともそれゆえに、ヤードバーズの曲の日本語歌詞による改作の代表曲「レモンティー」を筆頭に、主にブリティッシュ・ビートの楽曲に日本語歌詞を乗せただけ、とサンハウスを過小評価する難は免れません。しかしそれは日本のロックが必ず通過してしかるべきことであり、なのに誰もやっていなかったその盲点を徹底的に追究したのがサンハウスの功績で、サンハウスのヴァージョンは勢いある演奏、菊さんこと芝山俊之氏のドスの効いたワルなヴォーカルと絶妙な日本語歌詞によって、しばしば英米ロックのオリジナル・ヴァージョンを越えています。「レモンティー」「おいら今まで」「アイ・ラブ・ユー」「夜は恋人」などはオリジナルのヤードバーズ、キンクス、アニマルズ、レッド・ツェッペリンのヴァージョンを越えてサンハウスならではの日本語ロックになっています。ことにヒット曲でもなんでもないアニマルズ1966年の名盤『Animaliisms』収録の目立たない佳曲「Squeeze Her - Tease Her」を日本語ロックの名曲「アイ・ラブ・ユー」に仕立てたヴォーカルの芝山俊之こと菊さんの作詞、鮎川誠の作・編曲(サンハウスのレパートリーはこのフロントマン二人によるものです)は素晴らしい原曲を必殺の名曲に高めています。サンハウスのオリジナル・アルバムは『有頂天』『仁輪加』、ライヴ盤『ドライヴ』、解散後リリースの後期未発表曲集『ストリート・ノイズ』の4作で、以降一時的再結成アルバムや発掘ライヴがありますが、サンハウスのヴァージョンはいずれも英米ロックの日本語カヴァーにとどまらない魅力を備えています。いかにもワルな菊さんのヴォーカルで歌われる歌詞は明快で説得力に富み、ロックの歌詞は詩ではなくロックンロールの歌詞であり、菊さんこそ最高のロックンロールの作詞家だったのを雄弁に示します。筆者が気づいた限りで原曲との対照表を作りましたが、原曲を特定できる全曲のリンクを引くのは煩雑なために代表的な楽曲のみを引きました。前述の通り、ことにアニマルズの曲を改作した「アイ・ラブ・ユー」は絶品です。ぜひお聴き較べていただればと思います。(なお当初全曲の試聴リンクを貼りましたが、記事量超過のため主要な楽曲に絞らざるを得ず残念です。)
『有頂天』(テイチク/バイディス, 1975.6)
○キングスネークブルース←「I Can't Explain」(ザ・フー)+「Stray Cat Blues」(ザ・ローリング・ストーンズ)
○借家のブルース←「Shapes of Things」(ザ・ヤードバーズ)
○風よ吹け←「Ginnie Shelter」(ザ・ローリング・ストーンズ)
○もうがまんできない←「Rip This Joint」(ストーンズ)
○レモンティー←「Train Kept a Rollin'」(エアロスミス)←「Lemon Song」「Train kept A Rollin'」(レッド・ツェッペリン)←「Stroll On」(ザ・ヤードバーズ)←「Train Kept A Rollin'」(ジョニー・バーネット・トリオ)

○夢みるボロ人形←「Marie's Her Name」(エルヴィス・プレスリー)
○なまずの歌←「Catfish Blues」(B・B・キング)
『仁輪加』(テイチク/バイディス, 1976.6)
○だんだん←「Gimme Danger」(イギー・ポップ&ストゥージス)
○おいら今まで←「Where Have All The Good Times Gone ?」(ザ・キンクス) :  

○あの娘は18才←「At The Hop」(プレスリー)
○やらないか←「 If I Needed Someone」(ザ・ビートルズ)
・『仁輪加』アルバム全体が『Mott』(モット・ザ・フープル)、『Raw Power』(イギー・ポップ&ストゥージス)のアレンジからの影響大
『ドライヴ』(テイチク/バイディス, 1978.3、解散記念ライヴ)
○もしも←「Heatwave」(マーサ&ザ・ヴァンデラス)
『ストリート・ノイズ』(コロムビア, 1980.10、解散後発表・未発表デモテープ集)
○夜は恋人←「The Rover」(レッド・ツェッペリン) :  

○アイ・ラブ・ユー←「Squeeze Her - Tease Her」(ジ・アニマルズ) :  


『ハウス・レコーデッド』(デモテイク集)
○ねえママ←「She Wear You Are and Get Out」(ティム・ハーディン)
○落ち目の唄←「Nobody Knows When You Down and Out」(ブルース・スタンダード→デレク&ザ・ドミノス『Layla』より)

(旧記事を手直しし、再掲載しました。)