ゴダイゴ絶頂期ライヴ!『マジック・カプセル』(コロムビア, 1979) | 人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

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元職・雑誌フリーライター。バツイチ独身。午前0時か午後3時に定期更新。主な内容は軽音楽(ジャズ、ロック)、文学(現代詩)の紹介・感想文です。ブロガーならぬ一介の閑人にて無内容・無知ご容赦ください。


 全盛期のゴダイゴはタイアップ曲のシングル・ヒットも多ければ頻繁にテレビ出演もこなしていたバンドで、当時の日本の非・演歌/歌謡曲系ポップス、現在ではJポップと呼ばれているジャンルは「ニューミュージック」と呼ばれていましたが、フォーク出身グループやソロ・アーティストが大半の中にあってほとんど唯一洋楽と同じ次元の音楽性を感じさせるバンドでした。しかしアナログLP当時、中学~高校生のおこづかいではベーシックな洋楽ロックのレコードを買い集めるのが精一杯だったので、初めてゴダイゴのアルバムを買ったのは社会人になってから、それもCDのベスト盤1枚だけでした。ゴダイゴのオリジナル・アルバムがいずれも優れた内容とは音楽誌のレビューや日本のポップスのアルバム・ガイド本で見かけていましたが、最近全盛期からゴダイゴのファンだったという友人に薦められ、引っ越しで紛失してしまったベスト盤に代わって'90年代発売の2枚組CD『シングル・コレクション』を中古盤で買い、ヒット曲満載の絶頂期のライヴ盤『マジック・カプセル』をYouTubeで聴いて同作の'90年代の旧規格盤CDをこれまたCDで買い、その素晴らしい内容にほれぼれと聴きいっているところです。ゴダイゴのオリジナル・アルバムは1970年代いっぱいまでに、

『組曲 "新創世記"』(コロムビア, 1976.7.25) オリコン88位
『デッド・エンド』(コロムビア, 1977.11.1) オリコン64位
『CMソング・グラフィティ』(コロムビア, 1978.1.15) オリコン4位
『「キタキツネ物語」オリジナル・サウンドトラック』(コロムビア, 1978.5.25) オリコン34位
『西遊記(マジック・モンキー)』(コロムビア, 1978.10.25) オリコン1位
『アワ・ディケイド』(コロムビア, 1979.6.25) オリコン3位
『サントラ「交響詩銀河鉄道999」』(コロムビア, 1979.7.25) オリコン1位
『マジック・カプセル』(コロムビア, 1979.10.25) オリコン1位

 の8作(オリコン・トップ5入り5作、うち4位1作、3位1作、No.1アルバム3作!)があり、他にもゴダイゴ名義のリリースではありませんがゴダイゴの手がけたサントラ盤(いずれもオリコン圏外)に、

『いろはの"い"オリジナル・サウンドトラック』(コロムビア, 1976.11.25)
『「ハウス」オリジナル・サウンドトラック』(コロムビア, 1977.6.25)
『「男たちの旅路」オリジナル・サウンドトラック』(コロムビア, 1978.7.25)

 があり、2010年に発掘リリースされた、1976年10月23日公開の長谷川和彦監督作品のサウンドトラック・アルバム『「青春の殺人者」オリジナル・サウンドトラック』がありますから、デビュー・アルバム『組曲 "新創世記"』から2枚組ライヴ盤『マジック・カプセル』までの3年間にアルバム12作(年間4作!)、その上ひっきりなしのライヴ活動とテレビ出演をこなしていたわけです。
 また1979年までのオリジナル・シングル(すべてコロンビアからのリリース)は、

「僕のサラダガール」(1976.4.1) オリコン37位
「いろはの"い"」(インストルメンタル、1976.10.1) オリコン圏外
「シンフォニカ」(1977.5.1) オリコン圏外
「ハウスのふたり」(vo.成田賢、1977.6.1) オリコン圏外
「君は恋のチェリー」(1977.9.1) オリコン圏外
「ミラージュのテーマ」(1977.12.10) オリコン圏外
「ガンダーラ」(1978.10.1) オリコン2位(1979年年間6位)
「モンキー・マジック」(1978.12.25) オリコン2位(1979年年間17位)
「ビューティフル・ネーム」(1979.4.1) オリコン2位(1979年年間19位)・レコード大賞金賞
「はるかな旅へ」(1979.6.1) オリコン15位(1979年年間90位)
「銀河鉄道999」(1979.7.1) オリコン2位(1979年年間14位)
「ホーリー&ブライト」(1979.10.1) オリコン17位(1979年年間94位)

 やはり3年間で12枚をリリースしており、ゴダイゴの大ブレイクと絶頂期が1979年だったのがわかります。またこの時期までのゴダイゴは長調の曲がほとんどで、短調の曲は稀にしかない(バッハ以来の欧米の音楽は、クラシックからポップスにいたるまで、長調9割・短調1割です)のもゴダイゴの洋楽性だったことに気づきます。これにゴダイゴが全面参加しながら、タケカワユキヒデのソロ名義で発表されたシングル、

「走り去るロマン」(1975.1.1)
「いつもふたり」(1975.4.1)
「アンクル・ジョン」(1975.11.10)
「ハピネス」(1979.5.1)

 を加えてもいいいでしょう。それらタケカワさんソロ名義のシングルはビートルズ(ポール)~ギルバート・オサリヴァンに近い資質を感じさせます。もともとゴダイゴはシンガーソングライター、タケカワユキヒデさんのデビュー・ソロ・アルバム『走り去るロマン』(コロムビア, 1975.1.25)の全面的バックを勤めたミッキー吉野グループが、タケカワさんをリード・ヴォーカリストに迎えて発足したバンドでした。まだ高校生だった頃に加入したゴールデン・カップス時代から10年、日本屈指のキーボード奏者だったミッキーさんのグループは実力派メンバー揃いでしたが、フロントマン兼ヴォーカリストで抜群のソングライティング能力を備えたタケカワさんの加入がミッキー吉野グループをゴダイゴに転換させたのです。2CD『シングル・コレクション』はこれらタケカワユキヒデ名義の曲も含み、年代順にシングルA面曲が収められ、「ホーリー&ブライト」までがディスク1に収録されているのですが、ゴダイゴ名義のシングル7枚目「ガンダーラ」からいきなり風景が変わります。それまでのシングルは良い意味でビートルズ直系の、ややプログレッシヴ・ロックがかった'70年代的ポップ・ロック路線のものでしたが、「ガンダーラ」、そして続く「モンキー・マジック」で空気が一変するのです。そして「ガンダーラ」から「ホーリー&ブライト」のシングル6枚でオリコン2位の特大ヒットが4曲、6枚ともが1979年の年間チャートにチャート・インし、国際児童年のテーマ曲(こんな雄大な規模の企画をこなせるバンドが現在存在するでしょうか!)「ビューティフル・ネーム」はレコード大賞金賞を受賞します。絶頂期の1979年に収録・発売された2枚組ライヴ・アルバム『マジック・カプセル』はこの初期3年間のゴダイゴの集大成といえるアルバムになっています。
 そこで『マジック・カプセル』を聴いていると、『シングル・コレクション』でも感じましたが、ゴダイゴは'70年代録音でも音質・ミックス・マスタリングが抜群に良いのに気づきます。リマスターが施されていない'90年代盤CDでも十分に音質の良さが伝わってきます。ゴダイゴと同時代に人気を誇った日本のニューミュージック系アーティストは録音・ミックス・マスタリングが貧弱で、洋楽の水準にまるでかなわないものでした。ゴダイゴは音楽も洋楽レベルですが、音質・ミックスの良さも際立っていたのが痛感されます。レコーディング・スタッフは他の日本人アーティストと変わらないとしても、ミッキーさんとタケカワさん始めメンバー全員の耳が良く、しっかりバンド自身でサウンド・プロデュースしていたのでしょう。アナログ盤用マスターのままのCD化で'90年代の廉価盤シリーズ「CD文庫」レベルの音質なら、リマスターの必要がないほどです。これにはちょっと驚きました。

 またゴダイゴはサウンドの感触は違いますが、エレクトリック・ライト・オーケストラ(ELO)と近い立ち位置を感じさせます。これは元ムーヴのジェフ・リンとべヴ・ベヴァンのプログレッシヴ・ロック風味のビートルズ直系指向が、ゴダイゴのミッキーさんとタケカワさんの指向性と同じ方向を目指していたということでしょう。ELOはバンドの中核メンバーに加えてストリングス・セクションを導入していましたが、ゴダイゴもメンバー5人以外にホーン・セクション「ゴダイゴ・ホーンズ」を帯同していました。またムーヴの'70年代型を目指した‘70年代バンド、チープ・トリックはビートルズのポップな部分を巧みに、かつ純度を高く換骨奪胎したモンキーズの'70年代型とも言ってよく、モンキーズ、ムーヴ、ELO、ゴダイゴ、チープ・トリックに共通するのは、ゴダイゴでは特にタケカワさんの暖かみのあるヴォーカルに顕著な、非(反)マッチョ的なロック・バンドだったということです。上半身裸で汗まみれ、胸毛を出してシャウトするようなマッチョ的ロックがレッド・ツェッペリン以降のロックの主流だったとすれば、上半身裸で絶叫するタケカワさんなど想像もつきません。また英語詞と日本語詞を同じニュアンスで歌えるヴォーカリストとしてもタケカワさんの存在は画期的で、タケカワさんのヴォーカルは英語詞で歌っていても日本語詞と変わらず歌詞の内容がわかり、情感が伝わってくるのです。

 ゴダイゴについてはさらに聴きこみ、他のオリジナル・アルバムも聴いた上で書きたいことが多いのですが(タケカワさんの作曲力、ミッキーさんのリーダーシップとアレンジ力、メンバー全員の傑出した演奏力以外にも、奈良橋陽子さんの素晴らしい作詞は見逃せません)、今回はゴダイゴ絶頂期の集大成ライヴ『マジック・カプセル』に話をとどめておきましょう。それまでのスタジオ盤7作からの代表曲を満遍なく収め、サイド3にシングル・ヒット曲をまとめた構成も絶妙なら、どの曲もライヴ・アレンジならではの勢いがある傑作2枚組ライヴです。16分におよぶ大作「組曲:新創世記」などムーディー・ブルースや初期ELO、クラトゥー、アラン・パーソンズ・プロジェクトそこのけの、ビートルズ~ソフト・ロック~ポップ・ロックを融合したゴダイゴ独自のプログレッシヴ・ロックそのものですが強引さは微塵もなく、タケカワさんの中性的なヴォーカルと相まって女性ヴォーカル・プログレッシヴ・バンドのデンマークのサヴェージ・ローズやオランダのアース&ファイヤーのような、「歌」を中心とした無理のない組曲構成の楽曲になっています。ゴダイゴはオリジナル・アルバムでは英語詞、シングルでは日本語詞(「モンキー・マジック」はシングルも英語詞ですが、日本のアーティストの英語詞曲がオリコン2位、年間チャートでも17位など空前絶後の記録です)という方針を取っていましたが、このライヴ盤でもライヴならではの英語詞・日本語詞折衷ヴァージョンが聴けるのも本作ならではの魅力となっています。曲目と試聴リンクを上げておきましょう。
ゴダイゴ - マジック・カプセル (コロムビア, 1979.10.25) :  

A1. Magic Capsule (マジック・カプセル) - 4:37
A2. Joy (ジョイ) - 1:02
A3. Where'll We Go From Now (はるかな旅へ) - 3:41
A4. Imitation (イミテーション) - 2:00
A5. Cherries Were Made For Eating (君は僕のチェリー) - 2:52
A6. Steppin' Into Your World (ステッピン・イントゥ・ユア・ワールド) - 5:03
A7. Lighting Man (ライティング・マン) - 4:22
(Side 2)
B1. Suite Genesis (組曲:新創世記) - 15:44
 B1a. Celebration (誕生)
 B1b. Queen's Song (女王の唄)
 B1c. Lover's Lament (Sacrificial Blues) (恋する男の嘆き)
 B1d. Mother And Son (母と子)
 B1e. The Huddle (男たちの凱歌)
 B1f. Buddha's Song (釈迦の歌)
B2. Dead End ~ Love Flowers  Prophecy (デット・エンド~ラブ・フラワーズ・プロフェシー~) - 4:20
(Side 3)
C1. Monkey Magic (モンキー・マジック) - 4:35
C2. Galaxy Express 999 (銀河鉄道999) - 3:10
C3. Happiness (ハピネス) - 2:58
C4. Beautiful Name (ビューティフル・ネーム) - 6:50
C5. Gandhara (ガンダーラ) - 4:06
(Side 4)
D1. Progress And Harmony (プログレス・アンド・ハーモニー) - 3:22
D2. The Dragon's Come Alive (ザ・ドラゴンズ・カム・アライヴ) - 3:52
D3. Mickie's Piano Solo (ミッキーズ・ピアノ・ソロ) - 3:14
D4. Purple Poison (パープル・ポイズン) - 0:39
D5. Celebration (セレブレイション) - 5:33
D6. Try To Wake Up To A Morning (トライ・トゥ・ウェイク・アップ・トゥ・ア・モーニング) - 3:45
[ ゴダイゴ Godiego]
ミッキー吉野 - キーボード
タケカワユキヒデ - ボーカル
スティーヴ・フォックス - ベース
浅野孝已 - ギター
トミー・スナイダー - ドラムス
with
ゴダイゴ・ホーンズ