サン・ラ - セントルイス・ブルース (Improving Artists, 1978) | 人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

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元職・雑誌フリーライター。バツイチ独身。午前0時か午後3時に定期更新。主な内容は軽音楽(ジャズ、ロック)、文学(現代詩)の紹介・感想文です。ブロガーならぬ一介の閑人にて無内容・無知ご容赦ください。

サン・ラ - セントルイス・ブルース (Improvising Artists Inc., 1978)
サン・ラ Sun Ra - セントルイス・ブルース St. Louis Blues (Solo Piano Volume 2) (Improvising Artists Inc., 1978) 

Originally Released by Improvising Artists Inc. 37.38.58, 1978
(Side A)
A1. Ohosnisixaeht (Sun Ra) - 5:50
A2. St. Louis Blues (Handy) - 5:00
A3. Three Little Words (Kalmar-Ruby) - 5:40
A4. Honeysuckle Rose (Waller-Razaf) - 3:20
(Side B)
B1. Sky and Sun (Sun Ra) - 6:05
B2. I am We are I (Sun Ra) - 6:15
B3. Thoughts on Thoth (Sun Ra) - 6:27
[ Personnel ]
Sun Ra - unaccompanied solo piano 

(Original Improvising Artists "St. Louis Blues" LP Liner Cover)

 1977年のサン・ラはアーケストラを率いて活動する一方、この年のレコーディングは初の完全ソロ・ピアノ作品『Solo Piano Volume 1』(5月録音)と『St. Louis Blues (Solo Piano Volume 2)』(7月録音)から始めています。1976年のヨーロッパ・ツアーで国際的な大成功を収めたアーケストラに帰国後待ち受けていたのは本国での人気の低下であり、そこから1980年にようやく安定した人気を取り戻すまでの、1977年~1979年の年間アルバム制作数8作というかつてないほどの猛進撃が始まるのですが、ライヴこそこれまで通りアーケストラを率いたバンド形態が主ながら、サン・ラはソロ・ピアノでもコンサートを行っており、今回ご紹介する『St. Louis Blues (Solo Piano Volume 2)』のほんの5日後にも『July 8th. WKCR Studio Recordings』と呼ばれるソロ・ピアノによるラジオ出演のスタジオ・ライヴを行っています。本作『St. Louis Blues (Solo Piano Volume 2)』の次作(15日後)の『Somewhere Over the Rainbow』は再びバンド形態に戻って活動再開したライヴで、この3か月後に録音されるスタジオ録音のバンド作『Some Blues but not the Kind That's Blue』は10人編成の中規模アーケストラになりますが、『Somewhere Over the Rainbow』は15人編成のライヴと、『Some Blues~』の次作のバンド作『Unity』の20人編成とはちょうど中間の編成をとっています。本作2週間後に収録されたライヴ盤『Somewhere Over the Rainbow』はYouTube試聴リンクとデータだけご紹介しますと、バンド作『Somewhere Over the Rainbow』は1978年以降の作風の先駆けとなる8ビートのエレクトリック・ジャズ色が濃い作品ながら、この時期らしくソロ・ピアノ同様サン・ラのオリジナル曲とスタンダード曲を半々・交互に演奏しているのがわかります。
Sun Ra - Somewhere Over the Rainbow (El Saturn, 1977) 

Released by El Saturn Records Saturn 7877, 1977
A1. We Live To Be (Sun Ra)
A2. Gone With The Wind (Wruble)
A3. Make Another Mistake (Sun Ra)
A4. (Take The) "A" Train (Billy Strahorn)
B1. Amen Amen (Sun Ra)
B2. Over The Rainbow (Harburg, Alen)
B3. I'll Wait For You (Sun Ra)
 
 今回ご紹介した『St. Louis Blues (Solo Piano Volume 2)』はごく少数の観客を招いたアルバム制作のためのライヴ・レコーディングですが、バンドのフル・ラインナップによるライヴ・アルバムの快作『Unity』と照らし合わせるとアーケストラとソロ・ピアノの演奏活動は並行して行われていたことがわかり、この精力的な活動が変則カルテット編成による1978年1月のスタジオ・アルバム姉妹作『New Steps』『Other Voices, Other Blues』を経て、同じ変則カルテット編成ながらライヴでは再び実験的な『Media Dreams』『Disco 3000』『Sound Mirror』三部作に変化していったのは、当時すでに60代半ばに近かったサン・ラの年齢を考えると驚異的です。ソロ・ピアノも4ビート回帰も1976年~1977年のサン・ラの一時的な通過点にすぎなかったとも言えますし、アーケストラなりの完成型にたどり着いたらすぐにサウンドの実験に立ち戻る自己革新性の旺盛さには目を見張ります。サン・ラは1978年には64歳でしたが、現役年齢の更新どころかサン・ラと同世代のジャズマンの平均寿命すら超えていたのです。また前作の完全ソロ・ピアノ作品『Solo Piano Volume 1』と本作は、現在廃盤ながら2004年にリリースされた日本盤CDの中古でも入手しやすく、ジャズ・ピアノを愛好するリスナー、主流ジャズのリスナーにもピアニストとしてのサン・ラの実力を知らしめる、ソロ・ピアノ名盤姉妹作となっています。これもサン・ラの原点回帰指向とアーケストラの人気の頭打ちの打開を目指した事情が制作背景にあり、転んでも不屈のサン・ラがついにソロ・ピアノで切り札を切った観があります。この姉妹作はセロニアス・モンクやレニー・トリスターノ、ビル・エヴァンスのソロ・ピアノ作品に優に肩を並べる名作です。しかもサン・ラは現役屈指のビッグバンド・リーダーでもありました。サン・ラのメインストリーム・ジャズ作品として、このソロ・ピアノ・アルバムは格別な説得力を誇るものです。

(旧記事を手直しし、再掲載しました。)