アモン・デュールII - ライヴ・イン・ロンドン (United Artists, 1973)
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アモン・デュールII Amon Düül II - ライヴ・イン・ロンドン Live in London (United Artists, 1973) :
Released by United Artists Records USP 102, 1973
Produced by Olaf Kubler and Amon Düül II
(Side 1)
A1. 天使の雷鳥 Archangels Thunderbird (Weinzierl, Rogner) - 3:14
A2. 目玉のぶるぶる震える王様 Eye Shaking King (Karrer, Rogner) - 6:17
A3. ソープ・ショップ・ロック Soap Shop Rock (Weinzierl, Rogner) - 7:32
A4. 即興演奏 Improvisation (Karrer, Rogner, Weinzierl, Meid, Fichelscher, Leopold) - 3:42
(Side 2)
B1. 紳士の轟く70年代のマーチ Syntelman's March Of The Roaring Seventies (Karrer) - 8:05
a) マスクを取れ Pull Down Your Mask (Karrer, Rogner)
b) 沈黙に祈る者 Prayer To The Silence (Karrer)
c) 電話コンプレックス Telephonecomplex (Karrer)
B2. 落ち着かない天窓・トランジスター・チャイルド Restless Skylight-Transistor Child (Weinzierl) - 8:10
a) 不時着 Landing In A Ditch (Weinzierl)
b) 歯磨き粉 Dehypnotised Toothpaste (Weinzierl)
c) トランシルヴァニアの脳外科手術の短期滞在 A Short Stop At The Transylvanian Brain Surgery (Weinzierl, Rogner, Meid)
B3. 組曲:ここから君の耳までの競争 Race From Here To Your Ears (Weinzierl) - 4:4
a) 小さな竜巻 Little Tornados (Weinzierl, Rogner)
b) 雲に乗って Riding On A Cloud (Weinzierl, Rogner, Meid)
c) 麻痺した極楽 Paralyzed Paradise (Weinzierl)
[ Amon Düül II ]
John Weinzierl - guitar, vocal
Lothar Meid - bass guitar, vocal
Chris Karrer - guitar, violin, soprano saxophone, vocal
Falk-U. Rogner - organ, synthesizer
Renate Knaup-Krötenschwanz - vocals
Daniel Secundus Fichelscher - drums
Peter Leopold - drums
*
(Original United Artists "Live in London" LP Liner Cover & Side 1 Label)
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1972年発表の前々作『バビロンの祭り (Carnival In Babylon)』と同年の前作『狼の街 (Wolf City)』の間にロンドンでライヴ収録された本作はイギリス盤がオリジナルとして制作・発売されたアルバムで、ダイナミックなツイン・ドラムス、かつ専任ヴォーカリストも歌姫レナーテ・クラウプ=クレッテンシュワルツ一人の7人編成と、デビュー・アルバムとセカンド・アルバム時には10人あまりのメンバーがいて混沌を極めた作風だったアモン・デュールIIにしてはずいぶんタイトな演奏とすっきりとしたサウンドに変化したと思わせるライヴ盤です。録音エンジニア二人、ミキシングにさらに別のエンジニア二人と入念な録音とミックスによって作品化されており、スタジオ盤と遜色ないどころか、これまでのデュールIIのどのスタジオ・アルバムよりも高音質で、奥行きのあり分離の良いサウンドです。同時期に収録されたデュールIIの海賊盤に、海賊盤史上古典的なアルバムと目される『Angel Dust』(まんまLSDの俗称です)があり、客席録音の劣悪音質の海賊盤ながら人気が高くCD化までされているロングセラーになっていますが、本来のアモン・デュールIIのライヴは、本作と曲目もほぼ同一の『Angel Dust』で聴けるヨレヨレで混沌としたサウンドに近かったのではないかと思われます。
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Amon Düül II - Angel Dust (Drug, 1972) :
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しかし本作で聴ける素面のアモン・デュールIIのライヴは、やればこんなに出来るじゃないかと改めて実力を見直すほどで、この頃にはマルチ・プレイヤーのダニエル・フィッシャルシャーはフローリアン・フリッケの片腕となって、むしろポポル・ヴーで才能を開花していました。歌姫レナーテも韓国系女性ヴォーカリスト、ディオン・ユン(韓国現代クラシック音楽界の巨匠作曲家イサン・ユン令嬢)の後任に、1975年以降はポポル・ヴーで端正な歌声を披露するようになります。
本作のA1「天使の雷鳥 (Archangels Thunderbird)」はデュールIIのみならずジャーマン・ロック屈指のキラー・チューンで、セカンド・アルバム『地獄!(Yeti)』ではブレイク部でメンバー全員がコケていましたが、さすがに今回はミスのないソリッドな演奏です。A2「目玉のぶるぶる震える王様 (Eye Shaking King)」、A3「ソープ・ショップ・ロック (Soap Shop Rock)」と、アルバムA面はセカンド・アルバム『地獄!』からの曲で占められています。一方B面は、歌姫レナーテほぼ不参加でインプロヴィゼーション曲が中心だったサード・アルバム『ロック共同体~野ネズミの踊り (Tanz der Lemminge)』の、改めてレナーテのヴォーカル・パートもフィーチャーしてアップデートした、改訂圧縮版ライヴ・ヴァージョンと言えるものです。ただしセカンド・アルバム『地獄!』からの曲を演奏しているA面、サード・アルバム『ロック共同体~野ネズミの踊り』のライヴ用アレンジと言えるB面とも、オリジナル初演ヴァージョンの呪術的な禍々しさは消え失せ、サード・アルバムへのゲスト参加ののち第4作『バビロンの祭り (Carnival In Babylon)』以降正式メンバーになった剛腕ベーシスト、ローター・マイトの腕前に、ドラムスのペーター・レオポルドとともに創設時からのリーダーだったマルチ・プレイヤー(ギター、ヴァイオリン、サクソフォン、ヴォーカル)のクリス・カーレル(ケラー)がリーダーシップを譲ってしまったような印象を受けます。実際、今日ではアモン・デュールII名義でCD化されているマイトのソロ作『Utopia』ともども後期アモン・デュールIIはマイト中心、さらにレナーテやカーレルの脱退を受け、新加入メンバーに主導権を取らせるなど、同一バンドとは思えないコンテンポラリー・ポップ・ロックのバンドに変貌してしまいます。15作(うち3作が2枚組、さらに古典的海賊盤『Angel Dust』やマイトのソロ『Utopia』、アルバム未収録シングル集『レミングマニア (Lemmingmania)』、発掘ラジオ音源集『BBC in Concert』を加えれば16作~18作)のアモン・デュールIIのアルバムのうち、前期と後期ははっきりと分かれます。すこぶる出来の良いライヴ盤の本作ですら、次作『恍惚万歳!(Viva La Trance)』と並んでこの先はほぼ凋落一辺倒に入る、ぎりぎり全盛期のアモン・デュールIIをとらえたアルバムと言えるのは皮肉な気がします。