『ラバー・ソウル』のベース&ドラムス・リミックス | 人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

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元職・雑誌フリーライター。バツイチ独身。午前0時か午後3時に定期更新。主な内容は軽音楽(ジャズ、ロック)、文学(現代詩)の紹介・感想文です。ブロガーならぬ一介の閑人にて無内容・無知ご容赦ください。

ザ・ビートルズ - ラバー・ソウル (Parlophone, 1965.12)
Side-A
1. Drive My Car - 2:25
2. Norwegian Wood (This Bird Has Flown) - 2:05
3. You Won't See Me - 3:18
4. Nowhere Man - 2:40
5. Think for Yourself - 2:16
6. The Word - 2:41
7. Michelle - 2:40
Side-B
1. What Goes On - 2:47
2. Girl - 2:30
3. I'm Looking Through You - 2:23
4. In My Life - 2:24
5. Wait - 2:12
6. If I Needed Someone - 2:20
7. Run for Your Life - 2:18
The Beatles - Rubber Soul (Parlophone, 1965.12, Original Mix) 

 YouTubeをつらつら観ていたら、お薦め動画にこれが出てきて、聴いてみて驚きました。何と最新機材によってビートルズのアルバム第6作『ラバー・ソウル』からベースとドラムス、パーカッションだけを取り出してリミックスしたという代物です。『ラバー・ソウル』は前作『ヘルプ!四人はアイドル』(Parlophone, 1965.8)とともにビートルズの分岐点になった大傑作ですが、「ラバー・ソウル・セッション」でアルバム収録曲とともに録音され、『ラバー・ソウル』には未収録になった両A面シングル「Day Tripper c/w We Can Work It Out」もついでに同様のリミックスをしてほしかったとしても、ベースとドラムス、パーカッションだけでいかに画期的なサウンドの試みがなされていたかをまざまざと示すリミックスです。ついでにヴォーカルとコーラス・パートも残してほしかったような気もしますが、ベースとドラムスだけだとポールの曲「Michelle」とジョンの曲「Girl」(こちらの方がスロー・テンポですが)がいかに骨格が似ている曲かもわかります。アコースティックな「Norwegian Wood (This Bird Has Flown)」ではドラムスが手持ち無沙汰ですが、「Drive My Car」や「Nowhere Man」を始めとするほとんどの曲ではベースとドラムスだけでほとんど楽曲が成立しています。リンゴ・スターのドラムスとポール・マッカートニーのベースがいかに凄かったかを示すリミックスですが、特にジョンのバロック調の名曲「In My Life」では、静謐な曲想と仕上がりにもかかわらずいかにドラムスとベース躍動しているかがわかります。ポールは「In My Life」ではベースで反則ぎりぎりのコード弾きすらしています。ジョージの曲「If I Needed Someone」は即座にパーロフォン・レコーズの後輩バンド、ザ・ホリーズがシングルA面曲としてカヴァーしましたが、ジョージから「ソウルがない」と酷評されたそうで、ホリーズもメンバーの力量が高くイギリスの一流バンドでしたが、こうしてベースとドラムスだけのリミックスで聴くとビートルズのオリジナル・ヴァージョンには到底かないません。

 大傑作『ラバー・ソウル』を聴いていない方はいないと思われますが、ビートルズはヴォーカル/コーラス・グループとしても途轍もない存在でした。ジョン、ポール、ジョージ三人のヴォーカルで平気で半音をぶつける、全音でユニゾンするといったコーラス技法が確立されたのが『ヘルプ!四人はアイドル』から『ラバー・ソウル』の時期のビートルズであり、ジョンとジョージの2ギターのアンサンブルもジョージ・マーティンのプロデュースとピアノ参加によって飛躍的に向上し、それにポールとリンゴ最強のベース&ドラムスのコンビネーションが土台になっているとなれば、これに敵うものは想像もつきません。次作『リボルバー』で尖鋭性を高めたビートルズは、さらに『サージェント・ペパーズ』でコンセプト・アルバムに移行しますが、それも『ヘルプ!』~『ラバー・ソウル』の達成あってのことでした。オリジナル・ミックスの『ラバー・ソウル』、ベース&ドラムス・ミックスの『ラバー・ソウル』を聴き較べても、このアルバムでビートルズは決定的な達成に到達した観を深くします。何度聴いてもビートルズが飽きないのは、軽く聴き流すこともできれば、聴き返すたびに新たな発見があるからです。それはどなたもご承知のことでしょう。