今日の1曲~アイム・オン・マイ・ウェイ | 人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

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元職・雑誌フリーライター。バツイチ独身。午前0時か午後3時に定期更新。主な内容は軽音楽(ジャズ、ロック)、文学(現代詩)の紹介・感想文です。ブロガーならぬ一介の閑人にて無内容・無知ご容赦ください。

ルーファス・ザファール - アイム・オン・マイ・ウェイ (1971)
Rufus Zuphall - I'm On My Way (Günter Krause, Klaus Gülden, Udo Dahmen) (Pilz, 1971) : - 5:20


Rufus Zuphall - Phallobst (Pilz, 1971) Full Album


 1969年に西ドイツで結成されたバンド、ルーファス・ザファールはジェスロ・タルに影響されフルートをフィーチャーしたジャズ・ロック・グループで、1970年にバンド自身が自主制作したアルバム『Weiß der Teufel... (悪魔は知っている...)』では片面17分のアルバム・タイトル曲を含んでインストルメンタル中心のジャズ・ロック色を強く打ち出していましたが、翌1971年にメジャーのメトロノーム傘下の新興レーベル、ピルツから発表された第2作『Phallobst (男根の果実)』ではヴォーカル・パートの比重が増え、より洗練されたジャズ・ロックと、ピルツ・レーベルの掲げるドイツ的フォークロア性が融合された佳作になりました。バンドはジャーマン・ロック最重要エンジニアのディーター・ダークスのプロデュースでピルツからの第2作のレコーディングに着手しますが、制作途中の1973年に解散、アルバムは未完成に終わります。収録曲の半数まで完成していた未完成アルバム『Avalon and On』が1970年・1971年のライヴ・トラックを併載してリリースされたのは、20年後の1993年になりました。

 1999年には'70年代バンドの再評価・再結成ブームに乗ってルーファス・ザファールもオリジナル・メンバーで活動を再開し、2000年にはデビュー30周年を記念したライヴ・アルバム『Colder Than Hell』(Little Wing, 2000)、2007年にはさらにライヴ盤『Outside the Gates of Eden』(LongHair, 2007)がリリースされ、バンドは今も健在です。プログレッシヴ・ロックとしてはオーソドックスなジャズ・ロックすぎて地味、日本盤発売もなく往年の名レーベル、ピルツのコレクターくらいにしか聴かれていない不人気バンドのザファールですが、このバンドはピルツにしては珍しく英語詞、しかもインストルメンタル中心ながらヴォーカルにクールな魅力があり、キャラバン(~ハットフィールド&ザ・ノース、キャメル)のリチャード・シンクレアに声質が近く、モノクローム・セットのビド、ザ・スミスのモリッシーなどポスト・パンクのクールな抒情的ヴォーカル・スタイルを先取りしているようなところがあります。


 冒頭に上げた「アイム・オン・マイ・ウェイ」はアルバム『Phallobst』のクロージング・トラックで、メンバー6人中3人(ヴォーカル&キーボード奏者、フルート奏者、ドラマー)の共作曲ですが、アルバム全体のジャズ・ロック的作風からは異色のバラード・ナンバー(フルート奏者はメロトロンに回っています)ながら、アコースティック・ギター、クラヴィネット、メロトロンが効果的に使われ、ヴォーカリストのギュンター・クラウゼのクールな声質と暖かみのある唱法がアルバム中もっとも味わい深く迫ってくる佳曲です。さらにザファールのメイン・ソロイストであるフルートがフィーチャーされても良かったと思われますし、ピルツのレーベル・カラーに合わせて作られた例外的な楽曲かもしれませんが、いっそこの「アイム・オン・マイ・ウェイ」のゲルマン的フォークロア風の作風で統一してルーファス・ザファールがアルバム1枚を作っていたらそちらの方が人気作となってバンドの運命も変わっていたかもしれない、と思わされます。この曲を最初に聴いたのはピルツ・レーベルのサンプラー・アルバム『Rapunzel (Neue Deutsche Volksmusik)』(Pilz, 1972)で、ヘルダーリン、ヴァレンシュタイン、エムテディ、ブレーゼルマシーン、ウィットヘイザー&ウェストラップ、ジェリー・バーカーズ(「Es Wird Morgen Vorbei Sein」!)らの佳曲に混じってやはりクロージング曲に「アイム・オン・マイ・ウェイ」が収録されており、おおアルバムもきっといいぞ、と輸入盤の中古LPを探しだして買ってみると、アルバム全体はジャズ・ロックだったので悪くはないものの拍子抜けだったのを思い出します。続けて再発盤LPを見つけて買った『Weiß der Teufel...』もジャズ・ロック作だったのでもともとそういうバンドかと納得しましたが、今でもルーファス・ザファールを愛聴しているのは「アイム・オン・マイ・ウェイ」があるから、というのが正直な感想で、サンプラー・アルバム『Rapunzel』はいまだに未CD化(おそらく収録曲の版権がバラバラなため)の現在この曲を聴くだけでもアルバム『Phallobst』は手放せない1作になっています。秋の夜長にぴったりの1曲です。ぜひお聴きください。