仮面と陰謀、または「れ」の世界・「み」の世界、ほか二つ | 人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

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元職・雑誌フリーライター。バツイチ独身。午前0時か午後3時に定期更新。主な内容は軽音楽(ジャズ、ロック)、文学(現代詩)の紹介・感想文です。ブロガーならぬ一介の閑人にて無内容・無知ご容赦ください。

James Ensor, "De intrige (The Intrigue)", 1890

「れ」の世界・「み」の世界
陰謀について・または仮面と嘲笑

もつれ ほつれ やつれ それ ねじれ くびれ
おくれ そびれ くずれ ずれ はずれ はぐれ
ちぎれ こぼれ あふれ ぶれ みだれ ただれ
めくれ まがれ ほぐれ ぬれ しおれ うなだれ たおれる
れ の世界 の 海

ゆがみ たわみ ちぢみ みぐるみ からみ あわれみ
きしみ うるみ いたみ たるみ とろみ ゆるみ まどろむ
み の世界 の  海

れ のおとが なる
み のおとが なる
み のおとは い の世界の 海 につづく

いたい あつい さむい いい かたい おいしい うれしい
みにくい つらい かなしい とぼしい きたない うつくしい
い の世界 の 海

い のおとが きこえる
い のおとが さいなむ

なりひびく おとの 残響
暗示と呪縛 それ自体はなんの意味もない おとの
仮面を つけた
陰謀。

(鷲田清一の詩論「〈れ〉の列」より引用)


〈かわ〉をくだるボート
陰謀について・または仮面と嘲笑

川 は橋か渡し舟でまたげる水流 それは海へそそぐ 尿道
河 は彼岸も見えない大河 それは海につづく 産道
そして 周期的赤潮が 面白いように襲う

フェリーボートが河を下る またはさかのぼる 貨物や
小麦粉のようにつぶつぶな 人びとを乗せて

〈かわ〉頼りだったわれらの祖先
古代日本人はたま川上流で村落を営んだ また
旧約聖書の図解には 国土のないユダヤ民族が 大河に沿って
パレスチナや ローマ帝国にたどり着いた足どりが 記してある

相模川と多摩川しか知らないぼくには 川の概念は かろうじてあっても
河とは何か とはジョン・フォードの映画でしか 知らない

そして河ほど ふさわしい舞台はない
生きのこることと
生きのこるための 仮面に そして
生き恥じる 陰謀に。


すべての非人道的残虐は理想
陰謀について・または仮面と嘲笑

何より怖ろしいのは 歴史上の残虐行為はすべて
合法的に行われてきたことだ そしてそれが国会や 文化圏を揚げての
理想のために正当化されてきたことだ

とは よく言われること おそらく正鵠を得て いかなる残虐をも
政治的理想と正しさの名において 粛々と行われてきたことだ

おそらくそれに抗するには われわれすべての仮面を正視する
または引きはがす ことしかない すべからずわれわれは
残虐と理想に直面しまいとして いつでも取り外せる仮面を
無責任なアリバイのために 得々としてかぶっている

その嘲笑をひきずり下ろせ 裁く者が裁かれる者になる
陰謀を真に 暴露するためには。

(未定稿の旧作を整理してまとめました)