J・J・ジョンソン - ラメント (Savoy, 1954) | 人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

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元職・雑誌フリーライター。バツイチ独身。午前0時か午後3時に定期更新。主な内容は軽音楽(ジャズ、ロック)、文学(現代詩)の紹介・感想文です。ブロガーならぬ一介の閑人にて無内容・無知ご容赦ください。

J・J・ジョンソン - ラメント (Savoy, 1954)
J・J・ジョンソン&カイ・ワイディング・クインテット J.J. Johnson & Kai Winding Quintet - Lament (J. J. Johnson) (from the album "Jay & Kai", Savoy, 1954) - 4:16:  

Originally Released by Savoy Records MG-15038 (10inch LP) "Jay & Kai", 1954
Re-Released by Savoy Records MG-12010 (12inch LP) "Jay & Kai", 1955
[ J. J. Johnson & Kai Winding Quintet ]
J. J. Johnson - trombone
Kai Winding - trombone
Billy Bauar - guitar
Charles Mingus - bass
Kenny Clarke - drums
 ファッツ・ナヴァロの「ノスタルジア (Nostalgia)」とサヴォイ・レコーズつながりで浮かんでくるのが、サヴォイにしては珍しくセンスの良いジャケットの『ノスタルジア』と違っていかにもサヴォイらしい雑で適当なジャケットのアルバムに収められた、この名曲です。この曲は1954年8月の2セッションから選ばれた6曲入り10インチLP『Jay & Kai』に初録音され、未発表曲と'47年と'53年の既発表曲を足した同名の12曲入り12インチLPで再発売されているJ・J・ジョンソン(1924-2001)のオリジナル曲で、発表即ジャズマン・スタンダード化した名曲です。特にマイルス・デイヴィスの『Miles Ahead』(Columbia, 1957)のヴァージョンがスタンダード化に貢献しました。「Lament」(挽歌)という同名曲はアーマッド・ジャマル、ドナルド・バード、キング・クリムゾンにもありますが、「ラメント」といったらJ・Jのこの曲で決まりでしょう。ビ・バップ時代から活動を始めたトロンボーンのトップ奏者、J・Jは、白人奏者のカイ・ワインディング(1922-1983)との2トロンボーン・コンビで人気を博し、'60年代にはJ・J、カイ両者とも映画音楽家として活躍し、カイも1963年の映画『世界残酷物語』主題曲の「More」を全米8位に送りだしました。J・J自身は熱烈な黒人至上主義者で黒人ジャズマンの尊敬を集め、頑固一徹のジャズマンでしたが、晩年は癌を患い、闘病の苦痛に耐えかねて壮絶な頸動脈切断自殺を遂げてジャズ界にショックを与えました。

 この曲はビ・バップ時代の掉尾を飾る屈指の名バラードで、ピアノレス・クインテットの編成も当時は珍しく、レニー・トリスターノ門下生ビリー・バウワーものちのジム・ホールに受け継がれる、単音・複音と経過コードを組み合わせた自在な素晴らしいギターを弾き、またベースもJ・Jやトリスターノと親しかったチャールズ・ミンガス、ドラマーはビ・バップの創始者ケニー・クラークという豪華メンバーです。マイルス、チェット・ベイカーなどカヴァーはほとんどオリジナルに忠実なバラード演奏ですが、新人ピアニストのアンドリュー・ヒルを迎えたカルテットでマルチ管楽器同時演奏奏者ローランド・カーク(1935-1977)がスウィンギーなアレンジで吹いたヴァージョン(サビではテナーサックス、改造アルトサックス、改造ソプラノサックスの同時三重吹奏が聴けます)も素晴らしい出来で、ここではカークはテーマはメイン楽器のテナーサックス、サビは同時三重奏、ソロは改造アルトサックス(ストリッチ)を吹いていますが、テナーはデトロイトの巨匠ユーゼフ・ラティーフ、アルトはチャーリー・パーカーの奏法の見事な咀嚼が見られるのがカークの実力のほどを知らしめます。またヒルのピアノはすでにセロニアス・モンクとバド・パウエルを摂取してビル・エヴァンスでもセシル・テイラーでもない、あえて言えばポール・ブレイに近い異色のポスト・バップ・スタイルを確立しており、カークとの共演がこの1作にとどまったのを惜しまれるほど相性の良さを見せてくれます。このカークの意表を突いたスウィンギーなアレンジはあまりに突出しているため、カーク・ヴァージョンを踏襲したカヴァーはちょっと思いつきません。
Roland Kirk - Lament (from the album "Donino" Mercury, 1962) - 3:44 :  

Released by Mercury Records SR 60748, 1962
[ Roland Kirk Quartet ]
Roland Kirk - flute, tenor sax, vocals, stritch, manzello, nose flute, siren
Andrew Hill - piano, celeste
Vernon Martin - bass
Henry Duncan - drums