火曜日の歌~ルビー・チューズデイ(床上浸水日記) | 人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

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元職・雑誌フリーライター。バツイチ独身。午前0時か午後3時に定期更新。主な内容は軽音楽(ジャズ、ロック)、文学(現代詩)の紹介・感想文です。ブロガーならぬ一介の閑人にて無内容・無知ご容赦ください。


 今日は曇りの火曜日。カーテンなしの空き部屋で避難生活を送っているので晴天の朝は夜明けから目が覚めてしまいますが、曇りとなると一応目覚めてもすぐに二度寝に入れます。さらに午後からは小雨交じりの天候となりました。先週前半時点の予定では今日、10月12日(火)に元いた部屋に保管先の部屋から家財搬入が行われる予定でしたが、15日(金)にくり下がってしまったので、あと三泊避難先の部屋に寝泊まりして家財道具搬入の日を待っている具合です。もう床上浸水被災に遭ってから三週間以上、今日で25日ずっと避難先の空き部屋に寝泊まりしているので、たかだか三日延びた程度なら大したことないや、それより元の部屋に戻ったら自炊生活の再開、段ボール箱の開梱と家財道具の整理、壊れてしまったオーディオ機器類(テレビ、CDプレーヤー、Blu-rayプレーヤーなど)を始めとする水害に遭って駄目になった家財道具や日用品の買い換えなど一斉に忙しくなるので、今はのんびり休んでそのための気力を養うつもりです。

 日記ブログはここまで。さて火曜日か、昨日は月曜日の歌を載せたから(カーペンターズの「雨の日と月曜日は (Rainy Days and Mondays)」A&M, 1971/US♯2でも良かったな)、今日は火曜日の歌にしようと記憶をめぐらせましたが、日曜日や月曜日、金曜日や土曜日の歌はすぐ浮かんでも火曜日の歌はすぐ出てきません。Discogs.comやAllmusc.com、英語版ウィキペディアで「Tuesday (song)」と検索をかければ、と「Tuesday (song)」を打ちこんでみたところ、トップに上がったのは「ルビー・チューズデイ (Ruby Tuesday)」でした。これは盲点もいいところで、膝カックンでもくらったような気分でした。言わずもがなのローリング・ストーンズの大ヒット曲、本来イギリスでは「夜をぶっとばせ (Let's Spend the Night Together) b/w ルビー・チューズデイ」(Decca, 1967.1.13)とB面曲扱い(当時の邦題では「ルビー・テューズデイ」)でアルバム『ビトゥイーン・ザ・バトンズ (Between the Buttons)』(UK Decca/US London, 1967.1.20, UK♯3, US♯3)セッションからの先行販促シングル(当時イギリスではシングル曲はアルバムに収めなかったので、イギリス盤『~バトンズ』には未収録、アメリカ盤『~バトンズ』からはアルバム曲2曲を割愛して収録)としてリリースされるも、アメリカのLondon Recordsでは同日発売ながら歌詞が卑猥な「夜をぶっとばせ」の放送禁止を懸念して「ルビー・チューズデイ b/w 夜をぶっとばせ」の両A面シングルとして実質的に「ルビー・チューズデイ」をA面扱いで発売され、「ルビー・チューズデイ」はアメリカ1位・イギリス3位、「夜をぶっとばせ」はアメリカ55位・イギリス3位となったというストーンズ史上最強のカップリングを誇るシングルです。日本でもザ・タイガースがデビュー・アルバムのライヴ盤『タイガース・オン・ステージ』(ポリドール, 1967.11.15)でカヴァーしており(このライヴ盤でタイガースはストーンズの曲を7曲もカヴァーしていますが)、つまり日本でも「ルビー・チューズデイ」の方が人気が高かったということでしょう。アメリカにいたっては「ルビー・チューズデイ」「夜をぶっとばせ」をこれまでのヒット曲「レディー・ジェーン (Lady Jane)」や「アウト・オブ・タイム (Out of Time)」、さらにこれまでアメリカ盤LPにシングル曲を組みこんできたため割愛されていたイギリス盤のアルバム曲や未発表曲3曲までを無理矢理まとめて『フラワーズ (Flowers)』(London, 1967.6.26)を半年後に発売し、同作も全米3位の大ヒット・アルバムになっています。ストーンズのアルバムがイギリス盤とアメリカ盤で同内容になったのは次作『サタニック・マジェスティーズ・リクエスト (Their Satanic Majesties Request)』(UK Decca/US London, 1967.12.8, UK♯3, US♯2)からで、さらにその次作『ベガーズ・バンケット (Beggars Banquet)』(US London, 1968.11/UK Decca, 1968.12.8, US♯5, UK♯3)セッションからの先行シングル「ジャンピン・ジャック・フラッシュ (Jumpin' Jack Flash)」(UK Decca, 1968.5.24/US London, 1968.6.1, UK♯1, US Billboard♯3, Cash Box♯1)は超強力なシングル、かつ『ベガーズ・バンケット』が収録曲・曲順変更の余地のない抜群の完成度を誇るアルバムだったため、無理矢理アルバムに先行・販促シングルを編入されることはなくなりました。

 シングル、アルバムのリリース事情で話が長くなってしまいましたが、火曜日の曲としてすぐに「ルビー・チューズデイ」が浮かばなかったのは、このチューズデイは火曜日というより曲に歌われた「ルビー・チューズデイ」というヒロインの名前(ニックネーム)だからです。ストーンズはデビュー以来ビートルズに追いつき追い越せの路線のシングル曲を連発してきましたが、1965年の「ラスト・タイム (Last Time)」、「サティスファクション (Satisfaction)」「一人ぼっちの世界 (Get Off My Cloud)」から1966年の「19回目の神経衰弱 (19th Nervous Breakdown)」、さらに「黒くぬれ!(Paint It, Black)」「マザーズ・リトル・ヘルパー (Mother's Little Helper)」と、アルバム『アフターマス (Aftermath)』(UK Decca, 1966.4,15/US London, 1966.6, UK♯1, US♯2)までにロサンゼルスのRCAレコーズのエンジニア(実質的音楽プロデューサー)、デイヴィッド・ハッシンガーによってストーンズならではのダークなサウンドを確立し、ひさびさのイギリス録音でセルフ・プロデュース体制(名義上はマネージャーでパトロンのアンドリュー・オールダム)に戻ってハッシンガーのもとで学んだ成果が「夜をぶっとばせ b/w ルビー・チューズデイ」でした。「ルビー・チューズデイ」もコントラバスの使用(ビル・ワイマンが運指し、キース・リチャードが弓を弾いたそうです)、リコーダーのフィーチャー(ブライアン・ジョーンズが吹いています)と、ストリングを導入した「涙あふれて (As Tears Goes By)」やハープシコードを使った「プレイ・ウィズ・ファイア (Play with Fire)」、ブライアンがダルシマーを弾いた「レディー・ジェーン」の系譜にあるバラードですが、ビートルズの「イエスタデイ (Yesterday)」や「イン・マイ・ライフ (In My Life)」を意識していた1965年~1966年のバラード曲から一新したのがチャーリー・ワッツの歯切れの良いドラムスからも感じられ、バラード曲であってもドラムスが大活躍するこの路線はのちの「悲しみのアンジー (Angie)」などにも受け継がれます。また気ままなヒロインを「ルビー・チューズデイ」と名づけて「Still I gonna miss you」とぴたりと止めるミック・ジャガーの作詞・作曲(クレジット上ジャガー/リチャード共作ですが、この曲はミック主導の曲でしょう)の冴え(Goodbye Ruby Tuesday, who could hang a name on you?/When you change with every new day./Still I gonna miss you.)も光っており、ビートルズを意識してはいたでしょうがすでにストーンズならではの作風の確立が確かめられる名曲です。筆者も初めてストーンズを聴いたのは「夜をぶっとばせ b/w ルビー・チューズデイ」のヒット中で、ストーンズの曲と知ったのは中学生になってからでしたが、母親に手をひかれてスーパーの買い物中に有線放送かラジオから流れていたこの2曲は幼稚園児の幼心にもむずむずとした感覚がわいてくるものでした。どちらかといえば尿意をこらえているようなスリリングな「夜をぶっとばせ」の方が印象が強いのですが、今日は火曜日ですから「ルビー・チューズデイ」のご紹介にとどめます。
The Rolling Stones - Ruby Tuesday (Decca, 1967/Official lyric Video) - 3:16 :