またまた昔の思い出話で恐縮です。以前にも書きました「かまくらシンフォニエッタ」という管弦楽団が5月23日に演奏会を開き、曲目の一つにモーツアルトのヴァイオリン協奏曲5番が予定されていました。
この曲には強い思い出があります。中学生の時にこの曲のレコードを買い、モーツアルト
が大好きになりました。SP盤というレコードで、1曲で4枚のアルバムです。これが中学2年生になってヴァイオリンを始めるきっかけになりました。その後高校の受験や大学の受験勉強でヴァイオリンどころじゃなくなっていました。大学ではオーケストラに入部してやっと落ち着いてヴァイオリンを再開することが出来ました。
大学のオーケストラにエキストラで来ていたMさんという女性がいました。いつもニコニコしていましたが無口で、抜けるように肌が白く、メガネをかけ、素敵な女性でした。私より6歳くらい歳上で、音楽大学の出身でした。
普段は内気で女性に声をかけられない男でしたが、大学3年の頃でしょうか、ある時、オーケストラのゲネプロが終わった時に、思いきって彼女にお願いをしてみました。
「演奏会が終わってからでよいのですが、一度レッスンをお願いしたいのですが?」
「えっ、レッスンですか?」
「えぇ、今は誰のレッスンにもついていなのですが、自分でモーツアルトの5番のコンチェルトを練習してきて、テンポは若干ゆっくりですが、最後まで弾けるようになりました。この曲だけでも・・・」
「いいわよ、で、場所は?」
「井の頭線の久我山に家があり、親戚が一緒に住んでます。私の部屋がありますから、よければそちらでお願い出来たら」
彼女は意外とあっさりOKしてくれました。それまで余り会話も交わしたことのない彼女が久我山に週一回2時間ほど、全部で5回か6回くらい来て、全曲みてくれました。
当時使っていた楽譜
楽譜の整理をしていたら、古く黄ばんでボロボロになった楽譜が出てきました。ヴァイオリンのパート譜だけですが、ところどころ彼女の書き込みが消えずに残っていました。当時は輸入楽譜が手に入らない時代で、国内の好樂社の楽譜です。
書き込みがあるので、カデンツァもみてくれたようです。
その後はオーケストラの演奏会の度にお会いしていました。このレッスンのことは誰にも話していません。楽譜を眺めていたら、懐かしさが沸いてきました。今でも彼女は元気でいるかな?まだヴァイオリンを弾いているだろうかなって。
私は卒業後仕事が忙しくて、ヴァイオリンどころでなくなり、その後35年間ほどヴァイオリンから遠ざかっていました。その後病気をして無理とは判ってましたが、定年後を有効に過ごすためにヴァイオリンを再開しました。しかし、学生時代に弾けたものが、今ではちゃんと弾けなくなったのは情けないです。
中学時代から始めたとはいえ、実質大学時代から本格的に弾きだしたようなものだし、その後35年間もヴァイオリンを弾いていなかったのだから、モーツアルトが最終目標だったのも致し方ないです。
「かまくらシンフォニエッタ」の演奏会はエグモント序曲とハイドンの交響曲103番などで相変わらす素晴らしく、モーツアルトを弾いた松野美智子さんはご高齢ですが力強い素敵な演奏でした。特に1楽章のカデンツァの表情豊かな演奏は感激的でした。
Viosan の「ミネソタの遠い日々」
1970年に私たち夫婦・子供連れでミネソタ大学(University of Minnesota)へ留学した記録のホームページにもどうぞ