■ 道が隆起し、水道管が破裂する日本で何が起きているのか
2025年、東京都品川区で道路が突然隆起するという異常事態が起きました。
その少し前には、埼玉県でも水道管の破損と道路陥没が発生していた。
一見、これらは単なるインフラ老朽化や工事ミスのように思えます。
しかし背景には、もっと根深い問題──「現場の職人がいなくなった社会構造」があるのではないでしょうか?
■ 職人が消えた理由は「属人化を嫌う社会」
かつて日本は“職人国家”ではなかったか?
現場には「経験で感じる」人たちがいて、図面にない異変を察知し、トラブルを未然に防いできました。
ところが、企業や行政の中では「属人化はリスク」「マニュアル化すべき」という価値観が強まり、
現場の勘や経験よりも、デスク上の手順書やシステムが優先される時代になりました。
結果として──
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現場を知らない人が計画を立てる
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現場の声が上層に届かない
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「とりあえず進めろ」という圧力だけが残る
こうして、現場と机上の乖離が広がっていったのです。
■ 日本社会に広がる「現場軽視」の構造
働き方改革の影響で、現場職は「長時間労働」「危険」「ブラック」と見なされ、
若者の多くがデスクワークやIT業に流れました。
同時に、職人の高齢化と後継者不足が急速に進行。
「技術伝承」が止まり、結果的に“目で見て、手で感じる”力が薄れてしまいました。
この流れが、インフラ整備や建設・保守分野でのトラブル増加に繋がっていると考えられます。
■ 現場を離れた社会に起きていること
机上の判断だけで現場を動かすと、次のような問題が起こります:
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想定外のリスクを見落とす
図面上の“安全”が、実際の地盤や配管の状態と違うことはよくあります。 -
責任の所在があいまい
チーム制や分業が進みすぎると、「誰が現場を見たのか」が不明になります。 -
緊急時に動けない
トラブルが起きても、現場で判断できる人材がいない。報告→承認→指示の遅れで被害が拡大します。
つまり、「現場力」を失った組織は、危機に弱いのです。
■ 職人文化が支えてきた“安全と信頼”
日本が世界に誇る“ものづくり”の根幹には、職人の存在がありました。
目に見えない部分を妥協せず仕上げる。
小さな違和感に気づき、事故を防ぐ。
それはAIにもマニュアルにも置き換えられない、人間の勘と誇りによる技術です。
現場を支える人たちの経験知こそが、社会インフラの「最後の砦」でした。
