ガン幹細胞、「サイエンスゼロ」と「クローズアップ現代」 | 元広島ではたらく社長のblog

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六本木ヒルズや、ITベンチャーのカッコイイ社長とはいきませんが、人生半ばにして、広島で起業し、がんばっている社長の日記。日々の仕事、プライベート、本、映画、世の中の出来事についての思いをつづります。そろそろ自分の人生とは何かを考え始めた人間の等身大の毎日。



15日深夜のNHK教育の「サイエンスゼロ」

197:30NHKの「クローズアップ現代」

いずれも、テーマは「ガン幹細胞」


ただ、番組内容は微妙に違う。


「サイエンスゼロ」は、

放射線も抗がん剤も効かない、驚異の生存能力を持った「ガン幹細胞」が、ここ10年次々に見つかった。しかし日本の研究者が次々に新しい治療法を生み出している。

「ガン幹細胞」には種類によって、様々なたんぱく質が細胞に付着している。そのタンパク質のうちCD44という種類のたんぱく質には次のような働きがあることが分かった。

 通常、細胞内の、ミトコンドリアは、栄養と酸素を反応させエネルギーを生む際、活性酸素を生み出す。活性酸素は細胞のたんぱく質やDNAを傷つける。細胞の老化の原因にもなる。「ガン細胞」にとっても活性酸素は敵。このCD44を周りにまとった「ガン幹細胞」には活性酸素が付着しない。このメカニズムが解き明かされた。CD44にはくぼみがあり、ここにxCTという物質がぴったりおさまる。xCTはシスチンという物質を細胞内に取り込み働きがある。シスチンは細胞内に入るとグルタチオンになり活性酸素を破壊する。xCTは、CD44がなければ安定せずシスチンを取り込めない。さらに、CD44は長短の個体があり、長いものがxCTを固定することがわかった。

 また、同じ「ガン幹細胞」でも、この長いCD44を持つ「ガン幹細胞」のみ転移することが分かった。長いCD44を持つ「ガン幹細胞」は、細胞内にグルタチオンをため込み活性酸素の影響を受けない。このため半冬眠状態で長生きし再び活性化する時が来る。

 このメカニズムのうちxCTを塞ぐ薬が見つかった。慶応大学の佐谷教授が過去の膨大な論文より既存のリウマチ治療薬スルファサラジンを見つけた。しかも、すでに認可の下りた薬なので臨床試験も始まっている。

 次に別の画期的な方法で脳腫瘍の「ガン幹細胞」を治療する方法を考えた東京大学の藤堂教授。それはヘルペスウイルスでがん細胞を破壊するというもの。ただし正常の細胞がヘルペスに感染すると意味がないので次の3つの遺伝子を改変させた。

 ガンマ34.5という遺伝子が作るたんぱく質を除去:ヘルペスのこのたんぱく質は正常な細胞が外敵とともに自滅する機能をオフにし、感染を拡大させる。これを除くことで正常な細胞に入ると自滅する。ガン細胞に対してはがん細胞に自滅スイッチがもともと機能しないことからこの「改変ヘルペス」は増殖できる。

 ICP6というたんぱく質を除去:ヘルペスウイルスにとっては増殖に必要な栄養のようなもの、それを除去した「改変ヘルペス」は普通の細胞では増殖できない。しかし、たんぱく質を無限に複製するがん細胞ではどんどん増殖する。

 アルファ47という遺伝子が作るたんぱく質を除去:通常細胞にウイルスが入るとウイルス特有のたんぱく質が細胞の表面に出て、免疫細胞の攻撃を受ける。「ヘルペスウイルス」には免疫細胞に見つからないような働きをするアルファ47があるが、これを除いた「改変ヘルペス」ががん細胞に入ると、たんぱく質の目印をだし、免疫細胞の攻撃の的となる。

この「改変ヘルペス」はG47デルタと名付けられ、脳腫瘍の「ガン幹細胞」をどんどん攻撃し効果が証明されている。現在臨床実験中だそうだ。



一方「クローズアップ現代」は

ここ10年、様々な部位のがんで、特有のガン幹細胞が見つかっている。

「ガン幹細胞」が、「ガン細胞」を生み出し、またこの「ガン幹細胞」が転移することで、さらに増殖が増える。単なる「ガン細胞」はある程度増殖するとそれ以上は増えないが「ガン幹細胞」はしぶとく生きて再度活動する。

まとめると以下の特徴

 がん細胞を作る

 分裂が遅い。

 抗がん剤が効きにくい

 いつ活動を始めるかわからない。

 ガン組織中1%以下が「ガン幹細胞」

治療法として、①がん細胞は分裂する瞬間、DNAの二重らせんがほどけ不安定になる。そこをとらえて抗がん剤を効かせるが、「ガン幹細胞」はなかなか分裂しない。これは細胞の分裂を抑制させるFbx7という遺伝子が活性化していることがわかった。この遺伝子を弱めたマウスの実験では再発が5分の一まで減らせた。②胃がん治療者にリウマチの治療薬を投与、ガン幹細胞の周りにある栄養の吸い取り口であるポンプの入り口を塞ぐことができる。臨床実験ではここでも慶応大学の佐谷教授が出た。


同じ30分番組で同じテーマだけど、「クローズアップ現代」は少し雑な感じがする。「サイエンスゼロ」は、シリーズ化しているし、科学に興味のある層が視聴者なので結構詳しい内容。「クローズアップ現代」は、ニュースの後の番組ということで、普段あまり科学に詳しくない、興味もない人が視るかのうせいがあるので、難しい専門用語はあまり使わない、内容も浅いのだろう。スタッフも制作部門も違うのだろう。

ただ、「クローズアップ現代」では、脳腫瘍の患者が登場する。視聴者の中には、同じ脳腫瘍の人もいるはず、家族を含め何らかの期待をしてみた人もいただろう。「サイエンスゼロ」で紹介された脳腫瘍の「ガン幹細胞」に効果があったG47デルタは紹介されなかった。


私の身内にもガンで亡くなったものがいる。ガンをテレビで扱うときは「希望」とともに扱ってほしいと、思う。