講演を聞きにいきました。
講演者は、㈱ソフトブレーンの会長、宋文州さん。
宋さんは、85年、中国の国費留学で北海道大学大学院に来て、鉱山学を学ぶ。天安門事件で、帰国を断念。日本で就職したが、その会社が倒産。自分で学生時代に作った土木解析ソフトを売る会社を設立。そのソフトがヒットしたのだが、人を雇い、会社を大きくする途中でいろいろ、苦労する。何の営業の経験もない、片言の日本語で、売る自分に比べ、ヘッドハンティングした有名企業の営業マンがぜんぜん結果を残さない。そのことから”日本の営業”に興味を持ち、営業活動の標準化ソフト、「e プロセスマネージャー」等の販売を通して、企業の営業のコンサルティングをすることになる。㈱ソフトブレーンは2004年東証1部上場を果たし、主著『やっぱり変だよ日本の営業』はベストセラーになっている。
まだどこか、たどたどしい日本語(口車を回す、と言う変な日本語もあった)で行った講演は、講義半分と質疑半分。配布された資料は新聞の切抜きのみで、実際的な人、余計な虚飾はしない人と感じた。
宋さんが初めて日本に来たころには、既に品質世界一、工業製品や、工業製品を生み出す仕組みも世界一であった。しかし、それに比べて、営業と言う仕事がかなり属人的であることに疑問を持ち、営業と言う仕事を標準化できないかということを考えた。
営業は、「お前何をやらせてもダメだな。1つ営業でもやってみるか」と言う具合に、優秀な人材は、エンジニア、企画になり、そうでない人の集まりであった。また、実際に営業に携わっている人間のうち本当に数字を挙げているのはわずか、と言う結論に行きたどりついたようだ。そして、結局は、お前自身を売るのだ!という抽象論か、営業は足で稼げ、的な精神論で、終始してしまっている。あの技術大国の日本が、こと営業に関しては、非科学的な解釈しかしていない、ここに何か変化を生み出せないかを考えたそうです。
一人の営業が10~100社、部下が5人いるとして、その上司は50社~500社、今日誰がどこに行って、どんな話をして、どういう交渉が進んで、どこで行き詰っているなんて、わかりっこない。日報を出させても把握できるわけがない。営業の管理職なんて、出来ているようでできていない。そこで、携帯電話を使った営業日報管理が、宋さんが開発した「e プロセスマネージャー」になる。
自動車のトヨタの「あんどん方式」は、向上の製造ラインを細かい、プロセス(工程)にわけ、そのプロセスごとに、警報ランプを着けた。機械が止まったり以上があった場合には、ラインが止まり、エンジニアが、イレギュラーのあった場所に飛んで行き、修理して、ラインを再開する。この仕組みは、ラインをプロセスごとに区切るところ、プロセスを定義するところに意味がある。
宋さんのソフトも、営業と言う一見、不定形な活動を、プロセスごとに分解し、1つの基本形を作る。そのプロセスごとに、進捗を管理することで、誰が、どの見込み客に対して、どういったプロセスで行き詰っているか、を知ることが出来る。ヒアリング、情報収集が甘いタイプ、プレゼンが下手なタイプ、クロージングが弱いタイプ(値切られる)と各自の弱点も分かる。わかれば対処もできるし、上手な人間を当ててもいい。朝、会社から営業に出ると、何をやっているかわからないというブラックボックス的な営業でなく、各自のやっていることをプロセスごとに明確にしようと言うだけのことだ。生命保険やコンサル会社の営業をしていた私にとって見ると、特に奇異に感じない。既にその手法で営業を管理していた。しかし、世の中には、まだ、そういったブラックボックス的な営業をしているところはたくさんあるようで、だからこそ宋さんの会社は儲かっているのだ。
しかし、宋さんが、営業をプロセスに分解し標準化しようと営業すると、かなり抵抗があったようだ。そして、必ず、「うちは大企業と違うから」とか、「うちの営業はよそとはちがうから」とか、「うちは農耕型だから」とか、「島国だから」と、ことさら自分たちの特殊性を持ち出して、”営業の標準化”に賛意は示してくれなかったようだ。そして、宋さんの声のトーンが大きくなった、「うちは特殊だ、と言う言葉たくさん聴いた。これを裏返すと、もうほっといてくれ、ということだ」と。
実は、私も、自分たちの特殊性を持ち出すことで、思考停止、聞く耳持たない、と言う柔軟性のない人をたくさん見てきた。宗教VS宗教、国家VS国家、特殊性をもとに血を流すことさえある。宋さん、自身では言わないが、もしかしたら、中国人と日本人の違いがあることで、受け入れることを拒否されたこともたくさんあったのだろう。人は一人ひとり違うし、違う価値観を持っている。それを否定したり、拒否するのでなく、乗り越えたり、理解しあうことで、世界は廻っているはず、ビジネスの世界のみならず、人同士が分かり合うためにしなくてはいけないこと。それを宋さんの言葉から感じることが出来た。
トヨタの改善手法は、現在郵政公社、銀行のりそなグループでもトヨタのOBが指導し、実績を上げている。営業は人相手、モノ相手とは違うと、言われたが、ここでも実績を上げている。営業も「見える化」できるのだ。
ヤンキースの松井が練習する姿を見て、トーレ監督が、基本練習がしっかり出来ているから、実力を出せると言った。また、柔道も、空手も、まずは基本の型から入る。基本が出来ているから応用も、実践も出来ていく。標準化とは、この基本型のこと。仕事の中にも、まずは、基本型というものが必要であり、そこが出来てこそ、応用も出来るのだと思う。基本が出来ている人間はすごい。
「ゆとり教育」で、自由な発想で勉強してください!と言っても何から勉強していいかわからない。陰山先生の、ストップウォッチを持って、百マス計算や、声を出して詩を朗読したりと言う基本的な勉強をするほうが、目の輝きのある子供を生んでいる気がする。
「分からないことがあったら聞けよ!」と先輩に言われ、「わからないことがわからないんだよ」と思った人も多いはず、これも基本型がないことが原因。基本がないから、その都度教えることになり、部下は「分からなかったり」や、「失敗」の予測がつかなかったりするからだ。
宋さんの話から、いろんなことが思いかえされ、宋さんの話すことに気づけば、多くの日本の仕事の現場が助かるはず。
そして、宋さんの考え方は、ビジネスの世界を超えて世界中に広まるといいな。