「あなたの町から医者が消える! ~崩壊する地域医療~」(http://www.tv-tokyo.co.jp/cambria/bn/080818.html )を見て。
ゲストである谷 尚(たに・ひさし)氏(公立八鹿(ようか)病院 名誉院長)の病院は、22年連続黒字経営との事。
全国の公立病院の8割が赤字経営と言うにもかかわらず。
その谷氏の基本理念は、”病院とはサービス業である。”と言う。
そのサービスは、移動検診車による診断。
しかも、エコー検診を通常5300円を1100円で行っている。
この検診で儲けるのではなく、病院を早期に発見し、病院に来てもらうのが目的であり、早期治療であれば、医師の負担も軽くて済む。
住民にとっては、格安でなおかつ、近場まで来てもらえる。
これほど、嬉しい事はないはず。
特にお年寄りや移動手段がない人にとっては嬉だろう。
これも、お客様の視点に立って考えるサービス業としては、当り前のアイデア。
それに、病気を早期発見すれば、治療の負担も少なくて済む。
医師不足で、困っている病院側としては負担が軽くなるのと同時に、患者さんも治療期間や治療費が安くなる以上に重病になる可能性を予防する事が出来る。
谷氏は、以前、総合案内係を行っていた。
その理由は、
「総合案内と言うのは、症状を言って、どの科に行ったらいいか、適切にそこで出来ますので、患者さんは非常に喜ばれますね。
つい、自分で選択していったら、こな違う。あっち行けと言われる。
院長と言うのは、院長室にずっと座ってね、見とるでは、これは駄目なので。
以前から、院長と言うのは、300床以上ぐらいになったら、院長は、マネジメントだけでいいんだと、言うんですけど。
それは、ちょっと間違いでないかなと思うんですよね。
やはり、こう言う高齢社会になりまして、どう言う患者さんが増えてきたか、お年寄りばかりでも、どう言う患者さんが、実際、入院しているのか、現場を見ると。
現状は、やっぱり、見ると言う事。
それは、やっぱり、病院を運営していくには、非常に大事じゃないかなと言う気がしますね。」
と語っている。
今の時代だからこそ、現場を直に見て、現状を把握する必要に迫られているのだと思う。
現場を見て、状況を知る事で、適切な打開策を考えたり、患者さんの視点や病院で働く人達の視点を持つ事が出来るのだと思う。
そして、22年間黒字経営に対して、
「公的病院は、黒字出す必要がないと言う院長さんが非常に多かったですけど、そう言う病院はやはり、都会の大きな神戸市とかは、そう言う所は少々赤字出しても自治体が大きいですから、大丈夫ですけど。
普通、10万以下の都市では、赤字を出したらおそらく自治体の方も音を上げてきましてね。
だから、やはり、最低限トントンでいかないと、欲しい医療機械も買えない。
だんだんと医療の質が低下していきます。」
「ドクターに言う事は、やはり、患者さんと言うのは、弱者ですのでね、そう言う人に対して、怒鳴りつけたり怒ったりするなと。
ついでるんですよね、夜中に熱が出た子供を連れてきたら、”昼ごろからでとるなら、何で夜中に連れてくるんだ!”とか、すぐそう言う事を言いますので、だから、そう言うような事が、やはり、ドクターは言うべきではないと。」
「だから、連れてくるのが遅れたのは、それなりの理由があるんだから、そう言うような事だけは、しないようにしてくれてとドクターには言いますね。」
「僕は、仕事の事で”利益を上げてくれ”とか“患者さんを多く診てくれ”と言うような事は、いままで一回もないんです。
だから、良い医療をすれば、必ず患者さんが増えてきますのでね。
増えるという事は、必ず利益に繋がってくるんですね。
結果として。」
と語っている。
公立病院の経営が、赤字を出してもいいと思っていたなど驚き。
公立と言うからには、住民のお金が使われている。
お役所仕事と言うべきか、官僚の事をとやかく言えないのではないかと思ってしまう。
経営をすると言う事は、黒字経営が大前提であって、それにより、設備投資、人材確保が出来るのはないかと思う。
それを少々の赤字ならよいと言う認識が、今の病院の経営危機を招いたのではないかと思う。
患者さんも、馬鹿じゃないから、病院や医師の事はよく見ている。
対応が悪ければ来なくなる。
そこに、病院とサービス業のつながりがあるのだと思う。
反対に良い対応、良い治療をしていれば、自然と人は集まる。
阪南市立病院の現状が、番組内で紹介されていた。
常勤の内科医がが辞めた事で、内科が休診。
7人の医師が、去った事で入院患者も、ほとんどが出ていった。
そして、9診療科は外来診療を続けているが、常勤医師は4人。
07年度は、11億円の赤字。
診療を受けに来ている人のインタビューの中で、”あって当たり前の病院が、なくなるなんて考えた事もない。”と言っている。
病院があって当たり前など、誰が決めた事なのだろうか?
発展途上国へ行けば、病院が近くにないのが当たり前だと思う。
日本とそう言った国と比較するのは、生活レベルを考えるとおかしいかもしれないが、そこに病院は絶対に潰れないと言う思い込みが入り込んでいるのだと思う。
銀行も証券会社も潰れる時代。
病院だけが潰れないなど、誰が保障してくれるのだろうか?
今まで、行政が補助をしてきたから、どうにか潰れないできたが、行政にお金がなくなれば、補助は出来なくなる。
経営不振に陥った病院も、銀行のように合併や統合を行い生き残る道を選べば、どうにか生き残れるのかもしれないが、そうすると病院が無い地域が出てきたり、診療所レベルにまで落ちる可能性が出てくる。
そこに、他の業界とは違う病院の生き残りの難しさがあるのではないかと思う。
医療レベルが低下すれば、住民から反発を受ける。
病院の実情を知らないからこその反発ではないかと思う。
もし、医師や看護師の勤務状態・職場環境を知っても、同等の反発は生まれるだろうか?
一般の企業は、社内の勤務状態や職場環境を公表しないが、病院は、別なのではないかと思う。
ニュースや特番などで、たまに放送されているが、それだけでは、見る人もいれば見ない人もいる。
自分達の生活に直接関わる事なのだから、もっと興味・関心を持つ必要があり、病院側も、経営が苦しいと嘆いているのではなく、病院が無くなって一番困る住民を巻き込んだ対策を行ってもいいのではないかと思う。
阪南市の市長が自ら、医師を探して奔走している。
市長は現状をみて、
「根本的に医師が不足していると。
地域医療が崩壊したら、地元で高齢者の方が住めないんです。
経営だけ考えたら、病院が悪くなれば潰せばいいだけの話ですが、病院がありながら、その市民の命を守れない場所には、市民が住んでくれないですよね。」
と言っている。
健康の安定が得られない地域は、やはり、住む人もいなくなる。
それは、負の連鎖に繋がる。
医師が不足しているが、そこには偏りが見える。
病院の勤務医は、不足しているが、開業医は増えている。
しかも、東京の病院には、研修医が殺到していると言う勤務医の中にも偏りが見える。
このような現象の原因は、2004年4月施行の新医師臨床研修制度。
これにより、研修医は、自分の行きたい病院に行く事ができ、医大には、研修医が残らない現象が起こり、地方に派遣していた医師を呼び戻し始めた。
大学病院の意向が利かなくなった結果であって、誰も予想していなかったのだろうか?
今まで、大学の意向があったからこそ、地方や島などにも医師が居た。
その意向がなくなれば、誰も寂しい場所には行きたいとは思わないだろう。
地方や島の診療所や病院にも良い所はあると思うが、やはり、最新医療に常に触れ、自らを成長させたいと言う欲求は負けてしまうのではないかと思う。
兵庫県・豊岡市にある出石医療センターは、医師不足のため、5つの公立病院を再編し、集約するす事で、出石医療センターを診療所に格下げすると提案をしたが、住民からの猛烈な反対により、提案を撤回。
しかし、病院として、存続する為に常勤医を4人から3人に減ってしまった。
その結果、大きな負担を医師が追う事に。
17時を過ぎれば、薬の調合から、レントゲン撮影など、すべて当直の医師が行う。
当直も、泊まり勤務を月・水・金やって、また、日曜日も泊まる事もあり。
二日連続の当直もあると言う。
この現状に対して、谷氏は、
「やっぱり、現状を理解されていないんじゃないですかね。
病院のドクターが、非常に大変であるというが、十分に伝わってないと思いますね。」
普通の会社で、このような勤務体制をとったら、どうなるだろうか?
ついて来れる人は、どれぐらいいるだろうか?
住民の猛反対で、このような勤務体制になったのであれば、住民もなにがしら対策を考えるべきなのではないかと思う。
反対するだけ、反対して、あとは知らん顔など、身勝手すぎるのではないかと思う。
市側も、住民の言いなりになるのではなく、住民の中に入り込んで、現状の厳しさを徐々に伝えるべきではないかと思う。
厳しい言い方をすれば、医師の生活を犠牲の上に、住民の医療が成り立っているのではないかと思う。
400床規模の病院であれば、ベッド10床当たりの医師数は、全国平均1.5人なの対して、八鹿病院(内科)は、0.6人。
この状態にも関わらず、多くの患者を見る事が出来るのは、総合診療科に通され、診察を受けたうえで、必要とあれば専門医の診療を受けると言うシステムを取ってるからである。
その総合診療科を受け持っている医師は、
「病院に来る患者さんの。
専門医でないと診れない患者さんは二割しかない。
専門医が診る分を少し減らせば、医者が少なくっても、効率よく地域医療を維持出来る仕組みが出来るはず。」
そして、谷氏は、
「日本は、専門医ばかり養成する。
これはなにも、悪い事ではないんですけど、総合診療医と言うモノの考え方のドクターが、日本全国、どこも増えないといけないと思いますね。」
と語る。
専門医も、総合診療医を経験する事は必要ではないかと思う。
自分の専門分野ばかり見ていると、他の分野も事が分からなくなる。
症例によっては、病気の原因を見付け出す事が出来ない事もあると思う。
人間の身体は、それぞれが単独で機能しているのではなく、お互いが助け合って機能している。
だから、一つの分野に偏ってしまうと、見落としをしてしまい正しい診療を行えない事も出てくるのではないかと思う。
そして、専門医の上にジェネラリストである全身科医がいるのではないかと思う。
八鹿病院の患者自宅復帰率は、81.5%。
それに対して、全国平均は65.8%。
全国平均を大きく上回る裏には、退院が近づくと専門のスタッフが自宅へ行き、患者が自立できるように、家族の負担が少しでも減らせるように色々とアドバイスをする。
必要とあればリフォームのアドバイスをする。
ただ単に自宅療養に切り替えるのではなく、きっちりとしたフォローを行う事で、家族の不安や負担を少なくする努力。
普通なら日常の業務に忙殺さてれ、やろうと思っても、なかなか出来ないのではないかと思う。
だが、絶対にやると決め、第一歩を踏み出したら、案外出来るのではないかと思う。
その為の勤務形態やシステムの構築は求められるだろうが、入院患者が減れば、24時間診なければならない人数が減って、看護師や医師の負担も多少なりとも少なくなる。
そして、患者さんも、病院より自宅の方がリラックスできると言う人は多いのではないだろうか?
医師不足もそうだが、看護師不足も確実に起こっている。
100床当たりの看護師人数は、全国平均が36.7人なのに対して、八鹿病院では、76.2人と倍以上いる。
その理由は、谷氏は、自前の看護学校を作った事にある。
看護師を確保するのではなく、育成する。
もしかしたら、他の公立病院でも行っているかもしれないが、この点においても、今までとは視点が違うのではないかと思う。
谷氏は院長の役目について、
「一番大きいのは、やはり、医師をいかにやりがいを持ってですね。
気持ちよく働いてくれるかどうかと言う事ですね。
やっぱり、田舎に行くほど、優秀な医者がどんどん来てくれるわけではありませんけど、長所を見てですね「あなたの長所は、そう言うところだから、それを頑張りなさい」と。
そしたら、医療機械が欲しいと言うのであれば、出来るだけの事はすると。
やはり、いいドクターが大学から、「帰って来い」と言われから、「はいはい」と帰るのではなくて、やっぱり、「八鹿病院に残ってやろう」と残ってくれたドクターもいるわけですよね。
だから、そうすると病院が働きやすい病院をいかに作っていくかと言うのがですね、院長の大きな役割じゃないかなと思いますね。」
と語っている。
院長は、企業で言えば、社長。
トップがいかに考え動くか。
それにより、働きやすく、魅力的な職場が生まれるのではないかと思う。
だから、大学病院からの言葉に対しても、八鹿病院から気持ちが動かなかったのではないかと思う。
言い換えると愛社精神なのではないかと思う。