アンリ・ルソー | fidealのブログ

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「蛇使い」




アンリ・ルソー(1844-1910)という名前を知らなくても、恐らく


この「蛇使い」の絵を、どこかでご覧になられた方は多いのでは


ないでしょうか。






当初、ルソーが無審査で作品を展示することができた、アンデ


パンダン展に、作品を応募し始めた頃、彼の絵は、辛辣な酷評、


すなわち、遠近法や構図、色彩もない、子供が描く絵のようだと


言われ続けており、彼の絵を見て、笑わないものはいなかった


と揶揄されながら、皮肉をこめて、物好きな方はアンデパンダン


展に展示してある彼の作品を見てみるべきだとまで言われた


批評にさらされていました。





このアンデパンダン展は、その後、世に知られた画家、セザンヌ


ゴッホ、ロートレック、シャガールなどが参加しており、ルソーも


その一人でした。




しかしながら、ルソーの絵は印象派でもなければ、シュールリ


アリズムでもなく、何処にも属さない、当時としては浮いた画家


でありました。




でも、その時代から彼の絵を理解する画家(ピカソ)や詩人(アポ


リネール)も多く、ピカソが偶然通りかかった画商の店で、山積み


になったルソーの絵を、5フランで買ったという、有名なエピソード


は、今も語り継がれています。




遠近法ということについては、岡谷公二さんが執筆された、


「アンリ・ルソー楽園の謎」という本の中で、興味深いことが書かれ


ていましたので、ご紹介します。






”遠近法は、人間の肉眼の働きを原理として考案された方法である。


 視覚によって、一切は整然と秩序づけられる。ここでは、眼は支配


 者で、自然は眼に従属する。このように人間の眼を主体とすること

 

 で、遠近法は、人間と自然を対立させ、しかも人間を優位におく、人


 間主義的方法である。”


(新潮選書 アンリ・ルソー楽園の謎 岡谷公二 より抜粋)






では、ルソーは全く古典的な技法を無視していたのかというと、そうで


はなくて、三角形の古典構図を使うこともあり、独自の表現でその世界


を確立していたのです。




ルソーの絵の特徴として、樹木や人物を大変に緻密に描くというもの


があります。





これは到底子供では真似できない技法で、人物の各部をメートル尺


で計って絵を描くという徹底さがありました。





岡谷さんは、ルソーは近代絵画の流れとは無縁の場所に居て、絵と


は、彼にとって、構図とか、ヴァルールとか、マティエールである以前


に、彼がその中で生きることのできる、或いは所有しうる一つの世界


だったとおっしゃっています。






それこそが、人物や樹を緻密に描く所以だったのかもしれなくて、


そのリアルな追求が、現在進行形で、彼自身も、その絵とともに、


生きつづけていたのかも知れません。






それを裏付けるかどうかは分かりませんが、ルソーは自分の肖像画


を何度も描き直していたそうで、それ自体は不思議なことではないの


ですが、過去に描いた自分の肖像画の姿を、現在の自分と合わせて


髪の分量を変えたり、顎鬚を取り去ったりと、今の自分の姿に似せる


ように描き変えていたそうです。





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「風景の中の自画像」


この自画像も、ルソーが持つパレットに、亡き妻のクレマンスと


恋人マリーの名前があり、マリーに失恋後は、再婚したジョセ


フィーヌの名前がその上に上書きされていました。


また、技芸振興協会の教授の仕事を得たときには、上着の


ボタン穴に教育功労勲章を付け加えて描いております。







このように、自画像を今の自分に合わせて修正していくと


いう画家は、恐らくルソー以外は居なかったのではないで


しょうか。






前述したとおり、ルソーはどの派にも属さなかったとはいえ


古典的な要素は踏襲しつつ、その中で独自の世界を構築


して、その名声を、晩年近くになって確立しました。




もちろん、ルソーの絵は写実主義ではありませんが、後期


の作品は、ルソーが実際に行ったこともない、ジャングルを


描写した作品から多くの傑作が生まれています。


つまり、彼は、内面的にもう一つのリアルな現実を持って


おり、そのような意味では、内面的写実主義者であったと


もいえるかもしれません。






ルソーは、まさに今を覚醒しながら生きていた人間だった


ということではないでしょうか。





これは凡人には到底、到達できないような、非凡な才能を


(絵については)持っていたことは、否定することは出来ない


ようです。






どーでもいい記事でしたので、コメントは辞退させていただ


きます。






次回は、(いつになるか分かりませんが)、出展が無審査


のアンデパンダン展により、ルソーの絵が広く知られるよ


うになったのですが、現在の日本における、ギャラリーの


ご紹介を、問題点も含めていたしたく存じます。