静岡県沼津市にある旧戸田村は、下田での仕事帰りに経由する
だけの知っているけど、知らない漁村だった。
昨年秋、「崩壊する時間」のブログにご訪問いただいております
ブロガさんから、とある雑貨屋さんのお店を紹介されて、ご挨拶
に行った折に、この旧戸田村で観光イベントがあるという話をう
かがい、今回そのイベントの様子を紹介するに至りました。
イベントとはいっても、戸田ふるさと研究会が企画し、10人ほ
どが参加する、こじんまりとした形態で、その趣旨は戸田の
景観、歴史、文化、建造物を案内するものでした。
1回目の今日は、戸田といえば、地元の人が誰でも思い浮かべ
るタカアシガニですが、その保護と増殖をしている「の一食堂」
のタカアシガニ畜養場のご紹介です。
タカアシガニは、クモガニ科の仲間で、雄は両方のはさみ脚を
ひろげると、3mをこえる、エビカニ類の甲殻類では最大のカニ
として知られています。
タカアシガニそのものは、岩手県以南から九州までの太平洋
側水深150m~300mくらいの深さに生息していますが、旧
戸田村がある駿河湾がその主な産地となっています。
さて、そんなタカアシガニですが、水族館での飼育なら話は
分かるのですが、食堂の一角で、どのようにして保護、増殖
をやっているのか、興味がありました。
そのからくりは、お店が海に面しており、生きたままのプラン
クトンが豊富な海水をポンプを使わずに自然の海水槽(地下
8m、水深3m)へ流れこませて、逆に水槽の中で生まれた
卵はそのまま海(駿河湾)へ流れていくという仕組みでした。
今回ご紹介したタカアシガニの保護と増殖をされている
「の一食堂」のご主人です。
優しく、情熱的な表情をしておりました。
さて、ここで旧戸田村の駿河湾から、一気に富士山の樹海へ飛んでいきます。
旧戸田村付近には、水深2000mという駿河湾海溝があります。
一方富士山は標高3776mで、その高低差は5000m~
6000mですが、富士山に降る雪や雨が湧水となって、
ミネラルを含んだ豊潤な浸透水が30年~60年という
滞留時間をかけて、タカアシガニが生息する駿河湾へ
流れ込みます。
このような環境が、タカアシガニを生かしていると考えれば、
普段私が樹海で撮影をしているあの世界も、この戸田村も
一つの大きな存在として、つながっているのだと諭され、
何十キロと離れている駿河湾と樹海の世界も、全く関係
ないと思われる各々の世界に存在する被造物が放つ事象
が、意味のある喩えを語りかけてくるのです。