経済学の表層をなめる程度の本が巷に溢れている中で、簡単すぎず、かといって難しすぎない、読み応えがあって、たくさんのことを吸収できる良書です。
半分は、ざっと目を通せば理解できますが、半分は、メモをとりながら、あるいは論点をノートに整理したりする必要があります。でも読んだあとの満足感は充分です。定価の700円は、安すぎる価格だと思います。
今回この本を読んで得た知識としては、
1.内国為替決済制度
2.貨幣創造機関としての銀行
3.債券の価格と利回りの決定
4.資産価格と金利
5.バブル経済とマネーサプライの変動
でした。ここでは、2.について備忘録として引用しておきます。
貨幣創造機関としての銀行
銀行の貸し出しと預金創造
銀行は預金を受け入れることによって、決済手段を提供している。しかし、銀行は預金を受け入れるだけではなく、積極的に預金を作り出すという機能も担っている。このケースでは、銀行が個人や企業に貸し出したり、個入や企業が保有している国債や社債あるいは株式などを買い取ったりすることによって、預金が創造される。銀行が預金を単に受け入れるだけでなく、積極的に創造することができるのは、次の理由に基づく。
預金は一方で、現金で引き出されるが、他方で、現金で預け入れられる。あるいは一方で、預金を引き落として他入の銀行口座に振り込む者もいるが、他の銀行から当該の銀行の預金口座へ振り込む者もいる。こうしたことが大量に起こる場合には、預金の一定割合はいつでも当該の銀行にとどまる、という大数の法則が働く。そこで、銀行はこの大数の法則を利用して積極的に預金証書を発行して決済手段を個人や企業に供給するようになる。
これを具体的にいうと次のようになる。いま、ある銀行は毎日10万円ずつ現金による預金を受げ入れているとしよう。話を分かりやすくするために、この現金は引き出されることがないとしておこう。この場合には、この銀行には毎日毎日10万円ずつ、預金が積み上がっていく。この状態で、銀行が企業Aに10O万円貸し出すとしてみよう。銀行はこの貸し出しを、企業Aに預金口座を開設させ、その預金口座に10O万円だけ入金することによって実行する。
この企業Aの預金口座への入金は、単に、企業Aの預金口座に10O万円と印字するだけであ
り、銀行は1円の現金も必要としない。企業Aは従業員への支払いや原材料などの支払いのたびに、預金を現金で引き出すとしよう。仮に、企業Aが毎日10万円ずつ現金で引き出すとすると、銀行には他方で、毎日、1O万円の現金が預金されると前提しているので、この銀行はこの毎日預金される10万円を、企業Aの現金による引き出しにあてればよい。
右のメカニズムを、最初の日についてみると、銀行は10万円の預金を受け入れて、企業A
にその10倍の10O万円を貸し出すことによって、10O万円、つまり、受け入れた預金の
10倍の預金を新たに作りだしたことになる。
このように、銀行は預金を受動的に受け入れるだけでなく、貸し出しによって積極的に預金を作り出している。この貸し出しを銀行信用といい、貸し出しを通じて作り出された預金を、貸し出しに伴って派生したという意味で派生預金という。そして、派生預金を作る行動を預金創造という。それに対して、右の例で、銀行が毎日受動的に受け入れている10万円の預金は、貸し出しと無関係な預金であるので、本源的預金と呼ばれる。
現金引き出しがないケース
右の例では、企業Aは預金を現金で引き出したが、ここでは、すべての預金者が現金で預金を引き出さず、あらゆる決済を預金の振替によって行うケースを考えてみよう。先の例で、銀行から借り入れた企業Aの支払先を企業Bとし、企業Aは借り入れた1OO万円で企業Bに毎日10万円ずつ支払うとしよう。そして、企業Bも企業Aと同じ銀行に預金口座を持っでいるとしよう。この場合には、企業Aは企業Bへの支払いに際して、現金で引き出さずに、企業Bの預金口座に毎日10万円ずつ振り込めばよい。この決済は、結局、銀行による企業Aから企業Bへの預金の振替によって実施される。つまり、同じ銀行の中で、預金が企業Aから企業Bへ振り替わるだけであるから、銀行は毎日10万円ずつ現金で預金されることをあてにしなくても、企業Aに10O万円を貸し出すことができるようになる。
さらに、この銀行は企業Bにも貸し出すことができる。この貸し出しは企業Bの預金残高を貸出額だけ印字することによって実施される。企業Bの支払先を企業Cとし、企業Cも同じ銀行に預金口座を持つているとすると、企業Bから企業Cへの支払いも、同一の銀行内での企業Bから企業Cへの預金の振替によって実施される。この場合、銀行は企業Bの預金残高を振替額だけ減らして、企業Cの預金残高を同額増やすだけでよく、一円の現金も必要としない。
このように、支払いを受けた企業も同じ銀行の預金者であり、すべての預金者がその相互の決済を預金の振替によって実施し、現金を引き出さないとすれば、銀行は次から次へと無限に貸し出すことによって、無限に預金を作り出すことが可能になる。
しかし現実には一預金者は一部を現金で引き出して、それを決済手段として使おうとする。したがって、銀行は現金をある程度保有していなければならない。この場合には、銀行は預金が増えるにつれて、手元現金も増やす必要があるので、預金を無限に創造することはできず、銀行の預金創造もある程度抑制される。
さらに、個別の銀行にとっては、右の例のように、企業A、企業B、企業Cが同じ銀行のの預金者であるとは限らない。その場合には、図1・2⊃二頁)と同じように、企業A(図1・2
の個入Aに相当)から企業B(図1・2の個人Bに相当)への支払いに際して、銀行間で日銀当
座預金の振替が実施される。したがって、個別の銀行はある程度の日銀当座預金を持っていない限り、貸し出しによって、預金をどんどん創造することはできない。実は、日本銀行は金融政策を通じてこの日銀当座預金の総額をコントロールすることができ、それを通じて銀行の貸し出しなどを通ずる預金創造に影響を与えることができるのである。これが第9章で説明する金融政策に他ならない。
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