冬を曳きつつ 中沢久子(新墾、トワ・フルール、潮音)
解体を待つアパートのドアすべて開かれ過ぎたるものは荒涼
枯れ果てし朴の落ち葉が軽々と路上を走る小気味よきまで
樹の下のキノコにメルヘンはあらねども思ひの形をあたためてゐる
愛嬌ある目にてクマゲラはドラミング遊びのような生き方もある
5千年前のアイスマンとて殺されし跡歴然と殺人はやまぬ
戦ひの遺伝子が組み込まれゐる男たち支配の歓びに歴史は刻む
人間が最も残酷な生き物なり獣はおのれの分だけを獲る
車の往き来激しき路上砕かれたビスケットを取る巧みなカラス