※ 掲載は一人５首にさせていただきます
アララギ一千号記念 山縣庸美
アララギは一千号記念世に出だし「新アララギ」今年三百号なり
一夜干しと味醂干しとはどちらが美味か𩸽を買ふに吾は迷へり
真つ白な雪解の上を黒き蜘蛛走るを見たりその速きこと
コンポストの生塵の中に蠅が飛び待ちに待ちたる啓蟄となる
容姿端麗八頭身の赤とんぼ赤きズボンに黒き縞々
睛 眸 山川有吉
じんるいの滅びゆく日のプロセスを朝、午、夜とテレビは映す
納豆をぐりぐりぐりと捏ねるとき仇視の貌をおもいうかべる
気づかれずに泣こうと涙ぬぐうとき洟も流れて嗤つてしまう
ざぶざぶと五臓六腑を洗いたしなんともかぐろき老いの気だるさ
漲りて季節はあおくもえゆくか過去形の色みな美しき
