※ 掲載は一人5首にさせていただきます
永遠の時間 釣 尚子
朱漆の注口土器に縄文の乾いた命の詰められたまま
両腕をもがれた土偶上向きの顔の細い目虚空を見つめる
赤銅の淡い月浮くつかの間の原始の闇に高なる鼓動
降る雪に意識は天に昇りゆく永遠の時間の待つところまで
眠れずに朝を待つ闇浮遊する意識はいつか消えるのだろう
パープルの街 寺山寿美子
文化的感情と言ひ新古今読みをり公孫樹凋落の秋
水槽の金魚の華麗なる泳ぎ幼は瞠れる対抗心に
鎌の手を振り「してまたね」と昆布刈り別れる女人ら浜風のなか
金網を斜に大根おろしをり長寿年金、国家冬扇
闇の圧押しくる日暮れ寒堪へずパープル電飾の街耀ふ