※ 掲載は一人5首にさせていただきます
一本道 斎藤一郎
送りゆきまた送られて一本道一途な姿を見てゐた夜空
幾光年隔つといへど変はりなく空は氷の矢を放つ
七夕の一夜だけの逢ひゆるされて全身を研ぐ月の氷面
流氷に閉ざされし身も寒からず若さ弾ませ過ぎし幾月
廃線となり最終列車に乗車して思ひ出あつめ拾ひて来たり
日向水 斎藤純子
凍て空を引き裂くやうなヒヨ鳥の声聞かぬまま今年の冬は
会へぬことそして口許みえぬこと人を何処まで臆病にする
日向水などとやさしき名を貰ひペットボトルの水ぬるみゆく
季節にも匂ひあること教へつつ父の忌はふと近付いて来る
不確かな未来のために水色の小さき手帳を購ひてをり