作品展望 №9(下口順子) | 短歌活動をめざす北海道歌人会

短歌活動をめざす北海道歌人会

北海道在住の歌人や愛好者、もしくは道外転出者も希望によって会員とする北海道歌人会です。短歌における親睦と創作を希望する方はどなたでも加入できます。ぜひ、一緒に短歌を楽しみましょう!

 

 

令和5年度短歌年鑑より(※ 解釈文省き、各結社短歌を10首前後紹介)

 

【花林】昭和62年創刊の隔月誌、代表・編集人は樋口忠夫氏。

 

炎熱に病葉こぼす白樺と共に在りつつ慈雨を待ちをり   菅原琢子(遺稿)

 

秋気とて玲瓏ならざる文が来て健康保険の負担倍増す   樋口忠夫

 

風が呼びし雪が渦巻く野を行かばわれも裸木と同化してゆく   入舟嘉子

 

行く風と引き返す風に麦の穂は濃く淡く旗ひるがへるがに   佐藤ひとみ

 

風呂場よりあがるよと声吾子のごと湯上りの犬夫より受く   丸山玲子

 

ヘルパーの菜きざむ音かろやかに寒の凍(しば)れのゆるむけはいす   泉 玄冬

 

ドアが開く電車の中へ夕闇を連れて来しひと隣に座る   吉田千寿子

 

いつ見ても下向きに咲くカタクリよ澄む青空を見上げてごらん   石山キエ

 

存分に夏陽をしよつて訪ね来ぬ元少年のの笑窪かはらず   伊藤典子

 

来る人と逝きたる人とすれ違ふ発寒河畔の風わたる橋   明石雅子

 

営々と従属のふちあゆみきて拾いしは貝の嗤う声かも   石井ユキ

 

産土の森近く住みあけくれに老いし桜の芽吹く日を待つ   三井廸子