黒揚羽 生出隆亮
黒揚羽過疎集落を一巡すここに残るか街へ出やうか
風と来て風と去り行く初蝶の白き飛翔を傍らに見る
手毬花ついてみたしと思いけり風の抜けゆく公園通り
斜に被る少年の日の夏帽子思春期の風写真に残る
登高の背に縫ひ来し黒揚羽誘ふがごと励ますごと
翳と湿度 生沼義朗
広い通路をカート曳きつつ歩くととき心の翳をしばし忘れる
革靴は泥濘んだ道に滑りたり札幌最古のライラックの真横に
お土産を一万円ほど買いこめば道新記者に礼を言われる
七月の雲はふかぶかとその翳を札幌の街に示して暮れる
蒸し暑い東京に戻り来し途端、翳はすなわち湿度なりけり



