加賀捧茶 新保弥代枝
聞き慣れし「能登はやさしや土までも」優しき人らへの大地の暴力
せり上がり歪みて裂けし大地には爛れし皮膚のごときアスファルト
懐かしきものが被害者を重くせり美しき瓦また木舞壁
五十年使ひし汁椀輪島塗つや落ちつきて我が家の色に
おでんにはだんぜん茶飯ふるさとの加賀捧茶濃く淹れて炊きたり
人間爆弾 杉本靖子
「そうなんだ」神風特攻隊の若人は命を賭けた人間爆弾
ノモハンでマラリア発病し父帰還二歳のわれは顔見て泣きぬ
マラリアの父は渋しぶ入院す六カ月後には瞬く星に
終戦の貧しき時代に五人の子母はひたすら愛情そそぐ
生きるとは環境にめげず同調し明日に向けての活力資源
穏やかに今の世とは雲泥の差終戦さへも今は幻
うつつ世に生きゐる人は老いてゆき戦争体験の語り部いづこ



