短歌活動をめざす北海道歌人会

短歌活動をめざす北海道歌人会

北海道在住の歌人や愛好者、もしくは道外転出者も希望によって会員とする北海道歌人会です。短歌における親睦と創作を希望する方はどなたでも加入できます。ぜひ、一緒に短歌を楽しみましょう!

 

 

 

月草 長谷川光子(新墾・旭川歌壇)

 

露草の青に染めたし薬指 よもつひらさかの君を想いて

 

コロナ明け七夕の夜の彦星と織姫の逢瀬三年ぶりの

 

てのひらに収まる小さき花挿しに月草の青一輪の静

 

折り紙を折る君の背にたたまれた翼ひらかぬままに雨ふる

 

少年は折り紙でつくるジオラマの動物たちに息をかけやる

 

目を閉じてアルプホルンの音に遊ぶ羊飼いの夢草の匂いに

 

川沿いの土手走りゆく少年は人の形の模倣をはじむ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暑  中瀬サチ子(星雲)

 

甲子園のサイレン鳴れば指先は夏の水から麺引きあげる

 

朝露の乾かぬうちにその光ついばむ雀日日ルーチンあり

 

北の地の人も胡瓜も汗だくに麹をかぶり眠りたしや、暑

 

玉蜀黍うさぎのように噛むほどに床にほろほろ夏がこぼれる

 

最高のトーストは耳切るべしとわれに捧げるものないけれど

 

夕昏れの湖水のような待合室回転ドアのさざなみを超ゆ

 

河川敷から吹く風とすれちがう服着た犬は秋を匂わす

 

 

 

 

 

 

 

 

オキナワは今 筒井淑子(北土)

 

たぎる血と拳振り上げ祖国への復帰果たせど揺れるオキナワ

 

金網の向こうはアメリカオキナワは日本と呼べど日本にあらず

 

「子は宝」安保法案決定に反戦平和の母の声上ぐ

 

玉砕の島より逃れ語り部の母の反戦世界を駆けよ

 

戦場に朽ちて不明の兵あまた土は語らず黒々と闇

 

オキナワの慟哭何処へ向けようか声なき声は風にさすらう

 

ミサイルの包囲膨らむ美(ちゅ)ら海のジュゴンの記憶は瑠璃色の海

 

不確かで脆い平和だからこそ人間の叡智よ不戦を語れ