日本からの留学生(特にMBA)は、日本の会社のMBA嫌いと90年代以降続く経済の停滞により、減少の一途を辿っています。世界的にも、直近は金融危機やそれによる新興国投資バブルの崩壊による世界不況、ギリシャやポルトガルにより沈みゆくEU経済もあり、留学生人口は停滞しています。が、大きな流れとしては、その中でも経済成長を一向に止めない中国やインド、グローバル化を激しく推進する韓国、その他グローバリゼーションの恩恵を受け台頭してきた新興国富裕層を中心に留学生は増加傾向にあります。


そんな中、世界のビジネススクールはそれら留学生の獲得を巡り、様々な成長戦略に打って出ています。


もともとビジネススクールは、アメリカの独占市場でした。MBA神話なるものがアメリカで誕生し、各企業がこぞって最先端の金融工学を身につけたMBAホルダー達を雇いました。企業は彼らを高く評価し、一部の卒業生は信じられないほど高額の収入を得るようになりました。そのMBAホルダー達の高収入に憧れ、多くの人々がアメリカのトップスクールを目指しました。やがて、そのMBAスクールの良し悪しを図るためのランキングが登場し、応募者はそれを元に出願し、より高いランクのスクールにより多くの優秀な学生が集まるようになりました。ランキングは主に、給料の上昇率・卒業後の加重平均給与・卒業生の就職率、といった基準で測られるため、各スクールは、ランクを上げ、より多くの優秀な学生を集めるために、より多くの卒業生を「誰もが憧れ高収入が狙える有名企業」へ入れようと努力しました。卒業生達が重役を占めるようになった企業側も優秀な学生を採ろうと、多くのMBAホルダーを採用しました。世界中から応募者が集まり需要過多になったアメリカ市場では、多額の利益を得るべくビジネススクールは授業料を吊り上げました。スクールによっては全く払えないような授業料が設定されましたが、卒業後の高給でオフセットできると信じ、それでも学生は集まりました。そんなモデルがアメリカでビジネスとして成り立っていき、それによる成功を目指すため、お客さん(学生)もたくさん集まりました。


これが90年代くらいまでのビジネススクールの流れです。


変わりました。


まず欧州(特にイギリス)で多くのビジネススクールが台頭し始めました。LBS、INSEAD、IMD、IE、IESE、etcといったアメリカのトップスクールにもひけを取らない(どんな意味でかは謎ですが)スクールが次々に姿を現しました(いや、昔からありましたが、候補としてって意味で)。その後、アジア・オセアニアでも次々にビジネススクールが創設され、香港・中国・シンガポール・オーストラリア・etcと増えていきました。我が日本でもいろいろとビジネススクールが設立されましたが、残念ながらMBAを毛嫌いする日本社会の体質と、古い大学の体質のせいで、日本のビジネススクールはあまり勢いがありません。1000万歩譲って、1ミリくらい有名なのが、私の出身大学とそのライバル大学、あと私が大学受験で落ちた大学(H大学)、それと最近は私の弟の大学(K大学)にも創設されましたが、なかなか国際的に姿を現しません。


この現象により、様々な変化が起こりました。


まず、アメリカ一極集中だった需要がアメリカには無い1年制のMBAを持つ、要するに低コストを売りにしたヨーロッパのビジネススクールに分散され始めました。さらに最近は、その後のアメリカとヨーロッパへの2極集中の状態にも変化が訪れ、同じく低コストで、さらにはアジアビジネス学習等を売りにするアジア・オセアニアにも分散され始めました。


ビジネススクールは学校といっても、これは一大ビジネスです。ビジネススクールの最終目的は、良い学生を輩出する事でも、国際経済を向上させ社会に貢献する事でもありません(つか悪くしてたりして)。彼らの最終目的は「金を稼ぐ事」「出来るだけ多くの学生から、出来るだけ多くのお金を吸い上げる事」です。


その観点から言って、これら現象により、急速に市場における競争が激しくなりました。1年制のスクールを基本とするヨーロッパのスクールは、授業料や機会費用が低い条件を売りにアメリカ市場から学生(客)を奪いました。さらに、そこにアジアのビジネススクールが加わり、アメリカとヨーロッパどちらからも学生(客)を奪い始めました。もともと非常に多くの人口を持つアジアの国々から学生(客)を集め続けていた欧米のスクールでしたが、アジア自体がビジネススクールを、しかも良質のビジネススクールを持ち始めたため、彼ら(アジア人)が来なくなるばかりか、下手したら自分達(欧米)のエリアにいる学生(客)すらも奪い始めました。世界中で、学生達の取り合い合戦が始まったのです。


もともと世界のトップ大学、トップビジネススクールは欧米の学校で埋め尽くされていました。大学という制度自体、西洋のものですから。しかし、彼らのビジネス戦略にはまり、物凄い量の留学生を送り込み続け、そこからのフィードバックや自国での研究を深めていく中で、送り込んでいたアジア自体の大学の競争力が欧米のそれに肩を並べ始めました。より多くの利益を得ようと戦略を講じていた彼らでしたが、その戦略が裏目に出て(ある意味でですが)、いつの間にかお客さんが競合者になってしまったのです。やればやるほど、戦略が成功すればするほど、相手の力が増大し、自分達の利益や地位を脅かしていくという構造が出来ていったのです。面白いですね。


そんな中、各地域のビジネススクールでは、各者各様の成長戦略を取り始めています。